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厚労省・佐藤審議官 次期薬機法改正に込めたメッセージ「製薬産業・薬局は国民から信頼される産業に」

公開日時 2025/01/08 05:30
厚生労働省の佐藤大作大臣官房審議官(医薬担当)は本誌取材に応じ、薬機法改正法に向けて込めたメッセージについて、「製薬産業も薬局・販売業も国民が安定して医薬品にアクセスできるような、信頼される産業になることだ」と熱く語った。厚労省は、薬機法改正法案を次期通常国会への提出を見込む。2019年以降の薬機法改正以降も、後発品を中心とした薬機法違反が相次ぐ中で、法改正に向けた議論では医薬品製造をめぐる課題にフォーカスが当たった。「製薬産業も薬局・販売業も、その責務を果たすという意味では途上にあるのではないかと考えている」と話す佐藤審議官に話を聞いた。(望月英梨)

佐藤審議官へのインタビュー一問一答は、Monthlyミクス1月号に掲載しています。(記事はこちらから)

◎薬機法改正通じ「3つのステージ」の医薬品アクセスをめぐる課題に対応

厚労省の医薬品医療機器制度部会は薬機法改正に向け、議論を深め、昨年12月に取りまとめを行った。佐藤審議官は、法改正を通じて「様々なアクセス面での課題を分解し、制度的な対応を行いたい」と話す。具体的には、「最上流のドラッグ・ラグ/ロス問題、後発品の供給不安が象徴する医薬品製造をめぐる課題、最後に患者さんから見た際のラストワンマイルである薬局・販売業の3つのステージがある」と指摘。今回の法改正もこうした課題への対応に主眼が置かれている。

◎相次ぐ薬機法違反に対応 責任役員の変更命令、製販業者の製造業者の監督体制強化へ

ジェネリックメーカーを中心とした薬機法違反が相次ぐ中で、薬機法上の対応が柱となった。2019年の薬機法改正では、法令遵守の義務化が21年度施行で盛り込まれた。しかし、施行直前の20年12月に小林化工の睡眠薬混入による問題が起き、その後もジェネリックメーカーを中心に薬機法違反が相次いだ。佐藤審議官は、「コンプラインアンスの制度改正はまだ続く状況になっており、現在起きている問題にファインチューニングする改正を今回行う」と説明する。

今回の法改正では、製造販売業者と製造業者に対して、責任役員の変更命令を盛り込む方針だ。厚労省は昨年12月に初となる総括製造販売責任者(総責)の変更命令を沢井製薬に対して行ったことにも触れながら、「これまでの処分事例においては役員が不正を知りながら容認しているような事例が見られている」と指摘する。さらに、製造販売業者が製造業者を監督する体制も強化する。「製造販売業者が製造業者に対し、法令遵守を含め、品質管理に対する責務を薬機法上でも明確化する。製造所における製造管理や品質管理が適切かつ円滑に行われていることの定期的な確認や製造管理、品質管理についての情報収集を薬機法上に規定する」方針だ。これまで省令で規定されていた品質保証責任者(品責)や安全管理責任者(安責)も薬機法上位置づけ、遵守事項が規定される。

◎「製造業者に直接的な義務を課す」 製販の責務も「より重くした形に」 

一方で、課徴金制度の対象範囲拡大については法制上の観点から、導入が見送られた。ただ、抑止の観点から、医薬品製造業者にGMP省令に規定されている基準について、より直接的な製造管理・品質管理上の遵守事項として医薬品製造業者に薬機法上義務付ける。佐藤審議官は、「実際の違法行為についていえば、これまで違法な製造・品質管理に対して製造業者に対して直接の取締り規定がなかったことも、法令遵守の観点から抑止効果がなかった部分ではないか、という反省に立ち、製造業者に対しても直接的な義務を課していくことにした」と話す。

製造販売業者の責務が不透明になるとの指摘もあるが、「製造販売業者の責任や義務も明記し、責任をより重くした形になっている。製造販売業者に問いたいのは、“承認書は誰が持っているのか”、ということだ。法改正を通じ、バランスが取れた形になるのではないかと思っている」と強調した。

◎条件付き承認制度の見直し「米国と同じ仕組みが使えないことは改善すべき」

今回の法改正の象徴的な存在が条件付き承認制度の見直しだ。2019年の薬機法改正で導入された条件付き承認制度だが、探索的臨床試験等の結果に基づき、臨床的有用性が合理的に予測可能である場合に承認する制度に見直す。一方で、有効性が確認されなかった場合には、承認の取り消しができるようにする。佐藤審議官は、米国の迅速承認制度(AA)を引き合いに、「日本市場に新規参入する外国企業が、米国と同じ仕組みが使えないということは改善すべきだ」と強調。「今回の改正により、米国と同様の制度となり、特にベンチャーやスタートアップなどにとって、制度を活用するメリットがあるのではないか」と話す。活用が進むことで、「日本市場へのアクセスが改善し、ドラッグ・ラグ/ロス解消に制度面から寄与できると考えている。法律に位置付けることで、製薬企業やベンチャーが柔軟性高く制度を活用できるというメッセージを内外に示すことになると思っている」と力を込めた。

◎市販後安全対策の強化を色濃く打ち出す RMPの届出を薬機法上義務化

開発される医薬品が希少疾患などにシフトし、条件付き承認制度をはじめとした制度も変わる中で、より重視されるのが市販後安全対策だ。佐藤審議官は、「今回の薬機法改正では、市販後安全対策の強化について、色濃く打ち出した」と強調。「グローバル試験が増加し、日本人症例数が少ない段階で承認するケースが増えることが想定される。いかに効率的に市販後の症例収集を行うことができるかは一つの課題だ」と話す。具体的には、医薬品リスク管理計画(RMP)の届出、リスク管理の実施を薬機法上義務付け、安全上の懸念発生時に迅速、かつ医薬品のリスクの特性に応じた対応を可能にする。

◎「よりサイエンティフィックな意味で価値ある疫学的調査研究を」 RWDの利活用も明確に

一方で、「医薬品の使用成績を“収集する、作成する”」という文言は薬機法上からなくなる見通し。佐藤審議官は、「これまでの使用成績調査の呪縛からようやく解き放たれる。サイエンティフィックな意味で価値ある市販後のリスクモニタリングと言える、疫学的調査研究ができる時代へと移行していく必要がある」と強調。「大規模な調査や、既存薬などの他剤群、非治療群などを対照群として設定した調査の実施が容易な製造販売後データベース調査を推進する必要もある」と述べ、リアルワールドデータ(RWD)の活用も明確に打ち出す姿勢も強調。「国が医療DXを推進する中で、市販後安全対策も医療DXと連動して行う時期に来たことを法律上のメッセージとして盛り込みたい」と述べた。


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