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愛知県がんセンター オンライン治験活用で希少がん患者の登録スピード40%アップ 注射剤の実施に意欲

公開日時 2024/10/08 04:53
愛知県がんセンターは10月7日、希少がんを対象にした医師主導治験にオンライン治験(DCT)を活用することで、予定を上回るスピードで登録目標を達成したと報告した。同日開いたオンライン報告会で、薬物療法部の谷口浩也医長は、オンライン治験の枠組みでの登録が4割含まれていたとことに触れ、「オンライン治験を導入することで、登録スピードが40%ほどアップしたといえる」と有用性を強調した。今後はさらなる活用を進める考えで、唾液腺がんを対象とした経口キナーゼ阻害薬の臨床第2相試験を24年度にもオンライン治験でスタートする計画も明らかにした。さらに経口薬だけでなく、注射剤を対象にした臨床試験の実施を視野に入れるほか、企業からの依頼も「色々来ている」と話し、企業主導治験への拡大にも意欲をみせた。

愛知県がんセンターは全国で初めて、患者が同院に一度も来院することなく治験に参加できる、“完全オンライン治験”に踏み切った。完全オンライン治験の実現を支えるのが、患者のかかりつけ医であるパートナー医療機関との緊密な連携だ。愛知県がんセンターの医師が、かかりつけ医と同席する患者にオンライン診療のアプリを通じて診察を行ういわゆる“D to P withD”モデルを実践する。治験に必要なビジットごとの血液検査や画像検査などは、かかりつけ病院で実施してもらい、FAXやCD-Rを介してデータを愛知県がんセンターに届けてもらっている。日本の医療機関で従来行っている、”紹介・逆紹介“のような形で、「実は、日本の強みである医療者同士のつながりを活かしたアナログな取組み」と谷口医師は話す。

◎0.2%と極めて稀な希少がん 22か月で14例を組み入れ オンライン治験は6例

オンライン治験の第一号として進められているのが、西日本がん研究機構(WJOG)の支援する医師主導治験「WJOG15221M(ALLBREAK)」試験だ。非小細胞肺がん(NSCLC)を除くALK融合遺伝子陽性の進行・再発固形腫瘍を対象に、ブリグチニブの適応拡大を目的に有効性・安全性を検証する第2相臨床試験で医師主導臨床試験として進められている。肺がん患者を除くと、ALK融合遺伝子陽性割合は0.2%と極めて稀な疾患だ。

ALLBREAK試験は、愛知県がんセンターなど国内10施設で試験を実施。試験開始当初は、30か月で14例を組み入れる計画だった。疾患頻度が同程度の希少がんでは、企業主導の国際共同治験でも日本人症例が1例、3例などしか組み入れられていない例もあり、「目標自体も非常に無謀だったと思う」(谷口医師)という高いハードルだ。しかし、実際には試験実施後22か月で、オンライン治験で参加する6例を含む14例を組み入れることに成功。予定を上回るスピードでの目標症例登録を達成した。現在は目標数を28人に増やして登録を継続しており、オンライン治験8人を含む21人が登録されているという。

◎オンライン治験実施の富山大・梶浦副部長「職場復帰などもあり、通院だけではないメリットも」

谷口医師は、「オンライン治験で進めなければ、6人の患者さんはなかなか参加するのが難しかったかもしれない。オンライン治験を導入することで、登録スピードが40%ほどアップしたということも言えると思っている」と述べた。

実際、パートナー医療機関で患者登録がなされた富山大附属病院は、治験実施施設として最も近い愛知県がんセンターから車で4時間ほど離れている。富山大附属病院腫瘍内科・緩和ケア内科の梶浦新也副部長・講師は、「新幹線が通ったものの、治験のために大都市まで行ける方は1割弱ではないか。オンライン治験のメリットが得られる地域だと思っている」とコメント。治験に参加した症例は著効したといい、「50歳代だが、患者さんは職場復帰などもあり、通院だけではないメリットがあったと思っている」と話した。

◎パートナー医療機関との契約は2週間から4週間で 「日本の強み」

オンライン治験の実施に際しては、パートナー医療機関と愛知県がんセンターで契約を結ぶ必要がある。谷口医師は「結構時間がかかるものと思っていたが、目の前に患者さんがいると、医療者に限らず、各病院の事務の方々に協力いただき、2週間から4週間くらいで契約を進め、治験を実際に始めることができている」と説明。「こういったところは本当に日本の強み」と強調した。

◎オンライン治験参画の患者は全員が「とても満足」

治験に参画した患者に満足度を尋ねたところ、「遠くの施設に通う手間がない、あるいは従来の主治医の先生と一緒に参加できることで、全員が“とても満足”と答えた」と説明。「最初はパートナー医療機関の医師に必ずしも同席してもらう必要はないと考えていたが、一緒にいることが患者さんにとって安心感につながっている。情報共有もその場で行えるので、時間を合わせるという手間はあるが、このやり方の方がトータルでかかる時間は少なくて済むのではないか」と話した。

パートナー医療機関の医師からは、「治療効果としては残念な結果だったが、自分(医師)、患者、家族も希望をもって過ごすことができた。是非、この取り組みを続けてください」などの声が寄せられているという。

◎通信環境や情報共有、データの精度管理、治験薬の搬送などの課題も

一方で、課題もある。実際にハプニングとして起きた例として、通信環境の悪さなどに加え、パートナー医療機関からの情報共有にタイムラグがあったケースや、搬送中の治験薬をめぐる温度管理の逸脱なども報告された。情報共有については今後のシステム化の必要性を指摘する声があった。また、治験の実施に際し、パートナー医療機関で施設間格差があることも指摘され、こうした課題を克服し、オンライン治験の活用が進むことを期待する声もあがった。

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