【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

厚労省・制度部会 製造管理者の薬剤師要件緩和で議論 製薬企業の薬剤師確保・育成問う声あがる

公開日時 2024/10/04 05:30
厚生労働省医薬局は10月3日の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会に、次期薬機法改正に向けて、製薬業界の要望を踏まえ、製造所の製造管理者の薬剤師要件の例外規定を設けることを提案した。業界代表の中濱明子委員(エーザイ執行役)は「正直申し上げると、工場への薬剤師資格を持っている方の応募というのは非常に厳しい状況」と発言するなど、薬剤師確保の難しさに理解を求めた。これに対し、茂松茂人委員(日本医師会副会長)は、「期待のある職場にしていくことや、興味を持ってもらうための取組みをしっかりやっていかないと、いつまでたってもそういうことになってしまう」と苦言を呈すなど、製薬企業としての薬剤師確保や企業内での育成を問う声があがった。厚労省は実態把握の調査を行う考えで、引き続き検討を進める。

◎総責の例外規定を踏まえて提案


製造所の製造管理者は薬剤師が要件とされているが、製薬業界がヒアリングで要件緩和を要望していた。厚労省医薬局は、製造管理者の要件について、総括製造販売責任者(総責)には例外規定に倣い、「薬剤師を置くことが著しく困難であると認められる場合については、薬剤師以外の技術者をもって代えることができる」とすることを提案した。具体的な要件については、「製薬業界の現状を把握することを含め、引き続き検討を進める」とした。

◎川上委員 総責の例外規定後の実態把握の必要性指摘 要件の見直し「判断しにくい」

川上純一委員(浜松医科大医学部附属病院薬剤部教授・薬剤部長)は、総責に例外規定が設けられた経緯について2021年3月に発出された通知を紹介した。制度部会の議論で「法令違反を防ぐため、許可等業者について、法令遵守、法令遵守のための体制整備等の必要な措置、必要な能力及び 経験を有する責任者・管理者等の選任等の義務を明確化すべき」とされたと説明。結果的に、総責の責務を果たすことが可能な薬剤師が確保できない場合に限り、例外規定を設けるに至ったと振り返った。

薬剤師以外の技術者を置く場合には、「薬剤師以外の技術者である総括製造販売責任者を補佐する薬剤師を置くこと」、「薬剤師以外の技術者を置いてから5年経過後、薬剤師を置くことができるよう必要な措置(例えば、候補者の育成計画の作成・実施)」を行うことが求められている。川上委員は、「前回の法改正で、総責の規定行うように変えた後、実際に医薬品の製造販売業者が品質や製造を含め、医薬品の提供体制をきちんと取ってきたのか。やむを得ず薬剤師以外の技術者を置いた場合の体制は、実際どうだったのかということを十分に検証されているか、あるいはその実態はどうか厚労省として把握しているのか」と質した。そのうえで、「問題がないというのであれば、今回の提案の方向性のスタート点に立てると思うが、前回の振り返りがないことには、要件の見直しが提示されても判断もしにくい」と指摘。事務局側の提案が“今後、現状を把握”とされていたことに対しても、「今後把握するのではダメで、すでに把握していなければならない」と強調した。

これに対し、厚労省医薬局の野村由美子医薬安全対策課長は、「手元に実態の結果は持っていない。産業界にも協力をいただきながら、早急に実態を把握したうえで、適宜ご報告させていただく」と応じた。川上委員は、「データがないと議論が集約しないと思う。ぜひ実態を拝見したい」と述べた。森昌平委員(日本薬剤師会副会長)も「通知発出後の実態を把握してから次の議論に進めたい」と述べた。

◎茂松委員「問題がわかっているなかで、製薬企業はリクルートや養成にどう取り組んだのか」

茂松茂人委員(日本医師会副会長)は、「この問題は数年前からずっと出てきている問題ではないか。問題がわかっている中で、製薬業界は薬剤師のリクルートや十分に職責を果たせるような薬剤師の養成にしっかりどのように取り組んでこられたのか。社内で薬剤師の異動などを考えなかったのか」と質した。

◎中濱委員 製造管理者は「実務経験がない薬剤師の方が製造管理者に任命されているという現状」

これに対し、中濱明子委員(エーザイ執行役)は、「製薬会社としても業界としても、薬剤師が必須なポジションを把握し、育てるということに取り組んできた。しかし、実態としては会社によっては薬剤師がきちんと配置できていないというのが現状」と述べた。

総責については、「例外規定後も、基本的には薬剤師であることが最善ということで例外規定を利用している企業は多くはないと把握している。一方で、予期しない退職等があった場合にはこの例外規定を利用している会社がいくつか発生しており、後継育成にも取り組んでいると認識している」と説明した。

一方、製造管理者については、「正直申し上げると、工場への薬剤師資格を持っている方の応募というのは非常に厳しい状況だ。私どもでも大学等で説明を行ってリクルートも努力はしているが、なかなか実態に追いつかない。薬剤師資格を持っている方はより臨床に近い現場で働きたいという方が多い傾向があり、工場での勤務を希望される方が少ない状況だ」と説明。さらに製造管理者は製造工程の管理や製造所の従業員教育、法令順守など「幅広い責任があり、そういった教育には10年、15年という期間がかかるのが現状」と述べた。「薬剤師が求められている中で育てていかなければならないのは、製薬会社の義務と思っている。追いついてない状況は大変申し訳ないとは思っているが、品質問題、安定供給の問題が起きている中で、薬剤師というだけで、実務経験がない薬剤師の方が製造管理者に任命されているという現状も踏まえると、“どうしても”の時は例外規定を作っていただけると、ガバナンスを緩めるというのではなくむしろ、製薬会社としてきちんと適切な者を任命してしっかりと責任を果たしていきたいという意思でもある。そういった意味でも検討いただければ」と理解を求めた。

これに対し、茂松委員は、「期待のある職場にしていくことや、興味を持ってもらうための取組みをしっかりやっていかないと、いつまでたってもそういうことになってしまい、薬剤師は必要ない、なんてことになると思う。しっかりと業界としても取り組んでいただきたい」と苦言を呈した。

◎三澤委員 製薬企業の薬剤師採用は少ない「人がいないのは採用していないのでは」

三澤日出巳委員(慶應義塾大薬学部教授)は、自身の大学の就職状況を引き合いに、「最近の傾向として、製薬企業が薬剤師をあまりとっていただけない実態がある。中濱委員がおっしゃるようなことがあるのならば、薬学部、薬剤師をもっと採用するよう会社としても方針を改めていただきたい。卵が先か、鶏が先か、みたいな議論になるが、人がいない、いないとおっしゃっているのは採用している人が少ないのではないか」

中濱明子委員は、「今日いただいた意見を踏まえ、議論に資するような資料を当局に協力して産業界も準備させていただければと思っている」と述べた。
プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
関連ファイル

関連するファイルはありません。

【MixOnline】キーワードバナー
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(4)

1 2 3 4 5
悪い 良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事

一緒に読みたい関連トピックス

記事はありません。
ボタン追加
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー