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薬機法改正へ 条件付き承認は「臨床的有用性が合理的に予測可能な場合」が対象  承認取消しも

公開日時 2024/10/04 05:29
厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会は10月3日、次期薬機法改正に向け、条件付き承認制度の見直しの方向性を了承した。探索的臨床試験などの結果に基づき、臨床的有用性が合理的に予測可能である場合を対象とすることでより早期から適用が可能になる一方で、追加データにより有効性・安全性が確認できない場合は承認を取り消す。このほか、医薬品の供給不足に際して海外で流通している医薬品について外国語表記の包装のまま国内で流通できる「特例」を規定することや、自家細胞を用いた再生医療等製品の規格外品について一定の要件を満たす場合は授与を認めることなども了承された。

◎「早期に使用するベネフィットが、有効性が確認されていないリスクを上回るもの」

条件付き承認制度については、米国のAccelerated Approval、欧州のConditional Marketing Authorizationと並び、医療上の必要性の高い希少・重篤な疾患に対する医薬品について検証的試験の結果を待たずに探索的な試験、いわゆる第2相臨床試験までの結果に基づき、薬事承認を行う制度。ただ、日本の条件付き承認制度は、明らかな効果が確認された探索的試験(第2相臨床試験)の結果に基づく場合や、検証的試験の実施途中である場合の適用を想定しており、制度創設後の承認件数が少なかった。

今回の見直しにより、制度趣旨を「医薬品等を早期に使用するベネフィットが、有効性が確認されていないリスクを上回るものに承認を与えるもの。また、追加データの内容によっては承認を取り消すことができるもの」とする考え。現行制度の「有効性・安全性を検証するための十分な人数を対象とする臨床試験の実施が困難であるものに承認を与えるもの」から見直す。

緊急承認のように有効性が推定の段階で承認するのではなく、有効性・安全性ともに確認して承認するというスタンスに変更はない。ただ、有効性の判断を「臨床的有用性が合理的に予測可能な場合」とすることで現行制度より早期の適用が可能になる。疾病の重篤性や治療体系等を踏まえて、医薬品を早期に使用するベネフィットが、検証的試験により有効性を確認されていないリスクを上回るか、“バランス”の観点から評価をすることになる。承認が早期に行える一方で、承認後に有効性・安全性が確認できない場合は、欧米と同様に取消し規定を設ける。

◎海外で流通する代替品 優先審査・調査の規定新設、海外流通品の包装の特例も

医薬品の供給不足が指摘される中で、既承認医薬品の供給がひっ迫し、医療上著しい影響が生じる場合に、海外で流通している代替品について、承認審査及び調査を優先かつ迅速に行うことができる規定を新設。該当する品目は、ウエブサイトなどで公示。海外で流通している医薬品の包装のまま国内で流通できるよう、一定期間の外国語表示を認める特例を規定することを提案した。

厚労省医薬局の中井清人医薬品審査管理課長は、海外で流通する代替品を国内で流通させる場合、添付文書が間に合わないケースなどがあると説明。外箱にシールを貼るなど様々な対応を組み合わせて対応するなどの考えを示した。

森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「国民が必要な医薬品アクセスをできることは重要で、この仕組みの導入に関して異論はない。あくまでも代替不可と医療上著しい影響が生じる場合とすべきで、本来であればこのような制度に頼るような事態になっちゃいけないと思いますのでそれが基本だ」と述べた。また、「海外流通品は包装もそうだが、例えば剤形や錠剤の大きさも異なってくる。現場としても患者さんには説明したいと思うが、その時には国からも安全、安心だということは周知をしていただきたい」と述べた。

◎小児用医薬品 承認申請時の開発策定計画を「努力義務」に 

医療用医薬品の承認申請時に、小児用医薬品の開発計画を策定することを努力義務化する。小児用医薬品をめぐっては症例数が集積しづらく治験の実施が難しいことや、市場規模が小さいことから開発が進みにくいことが指摘されていた。この対策として欧米では、成人の医薬品開発時に小児用医薬品の開発計画策定が義務化されているが、日本では“努力義務”として導入する。なお、成人用の医薬品の開発時に、任意で小児用の開発計画を策定し、PMDAの確認を受けられる仕組も導入されている。

あわせて、希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)として指定されている小児用医薬品の再審査期間延長の上限を12年に引き上げる。小児用医薬品の再審査期間は現行延長上限が10年で、希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)として指定されている場合はすでに上限に達しており、延長が認められていなかった。業界代表の中濱明子委員(エーザイ執行役)は、「再審査期間の延長で2年の余地ができたということは、日本への投資に積極的になれるという観点で非常にありがたい」と見直しを歓迎した。

◎自家細胞由来の再生医療等製品 規格外製品の授与可能に 副作用被害救済制度も対象

自家細胞を用いた再生医療等製品については、安全性が確保されていることを大前提とし、患者の求めに応じたものであることや、含量などが規格外であることにより推定される効果の低下に比べて疾患の重篤性や患者の状態から治療を受ける機会の損失の影響が多大であること、医師が有用性を認めた提供であるなど、一定の要件を満たす場合に限り授与することを認める考え。適正に使用される許可再生医療等製品として、医薬品副作用被害救済制度対象とする方針。

◎製薬業界が要望 GCP省令やGMP適合性調査の整合性、MRAなど

このほか、議題にはなかったが、中濱明子委員(エーザイ執行役)は、「法律レベルの改正には至らないが、ドラッグ・ロスや供給不足などの医薬品等へのアクセスの課題解決に関し、3点ほどご提案申し上げたい」と切り出した。

まず、GCP省令についてICH―E6で医薬品の臨床試験の実施に関する基準のガイドラインが議論されていることに触れ、「ガイドラインの国内実装時にリスクプロポーショナルアプローチなど、新しい考え方を積極的に導入するなど、国際調和を意識したGCPイノベーションをぜひお願いしたい」と述べた。

次に、国際整合性や安定供給の観点から、「区分適合性調査について調査に要する標準的処理期間についても、GMP適合性調査に要する時間、期間との整合性をご検討いただきたい」、「GMP調査結果について、外国製造業者に対しても調査結果の正確な理解を促すように、日本語だけでなく英語併記も検討していただきたい」などと続けた。

さらに、「グローバルなサプライチェーンの中で重要な役割を担う欧州連合、EUと締結されているGMPに関する相互承認協定(MRA)についても、血漿分画製剤等、現在対象となっていない医薬品への拡充等についてもご検討いただきたくお願い申し上げる」と述べた。

中井医薬品審査管理課長は、「いずれにせよ検討する」と応じた。
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