規制改革推進会議が答申 IRBの一括審査推進へ数値目標設定を 被験者保護、研究力強化へ
公開日時 2024/06/03 04:50
政府の規制改革推進会議は5月31日、規制改革に関する答申を取りまとめ、岸田首相に手渡した。被験者保護、研究力強化に向け、倫理審査委員会(IRB)での一括審査を普及させる必要性を指摘。「欧米と同程度の水準とする方向で、我が国における一括審査の実施状況に関する数値目標を設定する」ことを盛り込んだ。各省庁が公募を通じて行う競争的研究費の提供を受ける治験・研究について、「多機関共同研究を実施する場合には一括審査を必須要件に位置付ける」とした。2024年度中に検討を開始し、25年度までに結論・措置するとした。多施設共同で臨床試験を行う場合は、欧米では一括審査が普及しているが、日本では必ずしも十分に普及していない状況にある。プログラム医療機器(SaMD)については、保険外併用療養費制度を利用できる環境整備も盛り込んだ。
答申では、日本では海外と異なり、治験や臨床研究、生命科学・医学研究など目的と種類により適用される法律が異なっており、審査委員会を含めて異なる対応が求められることが大きな負荷や、倫理審査委員会など審査のバラツキの一因となっていると指摘。また、治験コストの高さやスピード面での課題があり、ドラッグ・ラグ/ロスの一因となっていることも指摘されているとした。
◎競争的研究費の提供受ける多機関共同研究 「一括審査を必須要件」に位置付けを
このため、答申では政府横断的に検討する必要性を指摘。「内閣府、こども家庭庁、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省は、我が国における一括審査の普及に関する目標として、国際共同試験への我が国の参加の状況、欧米の一括審査に関する水準等も踏まえ、欧米と同程度の水準とする方向で、我が国における一括審査の実施状況に関する数値目標を設定する」とした。目標達成に向けて、「内閣府、こども家庭庁、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省は、競争的研究費の提供を受ける治験・研究について、多機関共同研究を実施する場合には一括審査を必須要件に位置付ける。ただし、少数の研究機関がそれぞれ異なる内容を分担する基礎的研究については、必ずしもこの限りではない」とした。24年度中に検討を開始し、25年度までに結論・措置する。
「競争的研究費の提供を受ける治験・研究」については、多機関共同研究を実施する場合に限らず、公的資金の提供を受ける治験・研究については、一括審査を必須要件とするよう検討する必要があることも盛り込んだ。
また、①審査が必要な安全性情報の範囲の特定、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)等を遵守するための審査項目の明確化、治験・研究実施機関追加の際の審査の要否その他の審査事項等の更なる整理、②審査の議事概要の公表の促進を通じた審査の可視化、③審査委員の教育・研修の実施など、審査の質の担保・向上に資する方策について、各制度の規制調和・国際整合の観点から、各制度で共通する事項を整合させることに留意した上で検討し、結論を得た上で、実施するとした。24年度に検討を開始し、26年度までに結論・措置するとした。
◎SaMD 二段階承認制度の活用推進や保険外併用療養制度の環境整備など
SaMDについては、海外の一部の国で非臨床試験のみで時限的に薬事上の承認を付与し、保険適用する仕組みが実装されているとして、日本での承認・保険適用のあり方について、「臨床現場での早期の使用を可能にする観点から、我が国の新たな制度である二段階承認制度の活用を推進するとともに、医療技術の新陳代謝を加速する観点から、新たな有効性が示された場合には診療報酬改定ごとの頻度に限らずに保険適用の見直しを可能とすることを含めた仕組みについて検討する」とした。検討に際し、開発ラグを含めた比較も求めた。
また、厚労省に対し、SaMDを使用する患者が希望する医療機関で、保険外併用療養費制度等を円滑に利用できる環境を整備する観点から、「事業者による保険外併用療養費制度の対象への追加の提案を可能とするとともに、新たなエビデンスが示される場合には保険適用期間の延長を可能とする保険外併用療養費制度等の在り方を検討する」ことも盛り込んだ。引き続き検討を進め、25年度結論を得るとしている。
◎災害時のドローンでの医薬品輸送 許可を受けずに飛行できるよう明確化
このほか、災害時にドローンのさらなる活用も盛り込んだ。能登半島地震の際のドローンによる物資輸送は主要会社で10件程度にとどまっていた。緊急性がある場合は、航空法の特例で、ドローンの飛行の禁止空域及び飛行の方法に係る許可・承認等に関する規定が適用除外となっている。災害時における飛行禁止空域でも医薬品や食料品等の輸送などは許可を受けずに飛行できることを明確化する。2024年中に措置する。
◎OTCの遠隔販売 地理的制限の見直しや店舗上限数の見直しを
また、早朝・深夜や過疎地など、薬剤師が非常駐の店舗(受渡店舗)でも、遠隔で薬剤師が常駐する店舗(管理店舗)からデジタルによる管理・販売することで、一般用医薬品(OTC)を入手することを検討することも求めた。薬事監視を行う自治体間の適切な連携が求められるとの指摘があることを踏まえ、許可・監視の実効性を担保しつつ新制度の円滑な早期導入を実現する観点から、「まずは、同一都道府県内で実施する」ことを求めた。24年に結論を得て、速やかに措置するとした。
そのうえで、物理的な制約を課さないことが望ましいと指摘。「より広範囲での制度実施に向けて、監視に係る課題整理に着手するとともに、制度施行後の状況を踏まえた、撤廃も含め地理的制限の見直しを行うこと」を検討するよう、求めた。24年に検討を開始し、法令上の措置施行後2年以内に結論、結論を得次第、速やかに措置するとした。
また、管理店舗と受渡店舗が事実上1対1の関係であることから、上限についての検討も求めている。25年度に結論を得ることを求め、結論を得次第、速やかに措置するとした。