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24年度改定 急性期の機能分化へ「地域包括医療病棟入院料」新設 中小病院など地域医療への影響大きく

公開日時 2024/02/15 07:20
中医協は2月14日、2024年度診療報酬改定を武見敬三厚労相に答申した。入院医療では、「重症度、医療・看護必要度」の見直しや、急性期のいわゆる“7対1病床”の平均在院日数の短縮など厳格化が公益裁定で決定された。一方で、この受け皿として、「地域包括医療病棟入院料」が新設された。高齢者の救急患者が増加する中で、救急患者の受け入れ体制に加え、リハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に担う。「3050点」という手厚い配分を行い、病床転換を促すことで、入院医療のさらなる機能分化・強化、連携を進めたい考え。一方で、同日開かれた日本医師会・四病院団体協議会合同記者会見では、中小病院や内科系を中心とした7対1病床の維持に対する懸念の声が上がり、地域医療への影響の大きさを懸念する声が相次いだ。

急性期医療をめぐっては、「重症度、医療・看護必要度」も急性期一般入院料1では急性期一般入院料1については重症度・医療看護必要度について「B項目(患者の状況等)」(該当基準:A2点以上かつB3点以上)を廃止するなどの見直しがなされた。看護配置7対1の急性期一般入院料1の平均在院日数を「18日以内」から「16日以内」に見直し、該当基準割合は、「①:「A3点以上」又は「C1点以上」に該当する患者の割合(20%)」、「②:「A2点以上」又は「C1点以上」に該当する患者の割合(27%)」-の両方を満たす必要があるなど厳格化した。

◎地域包括医療病棟入院料「3050点」も平均在院日数、在宅復帰率など要件厳しく

一方で、新設される「地域包括医療病棟入院料」には、「3050点」という手厚い配分を行った。特に軽症・中等症の高齢の救急患者が増加する中で、早期からリハビリテーションや栄養管理の実施などを包括的に提供し、在宅復帰を促したい考えだ。

施設基準としては、看護配置10対1や、平均在院日数が21以内、退院患者に占める、在宅復帰率が8割以上であることなどを求めた。また、重症度、医療・看護必要度については、病棟に入院している患者については、「A得点が2点以上かつB得点が3点以上」、「A得点が3点以上」、「C得点が1点以上」のいずれかに該当する患者が重症度、医療・看護必要度Ⅰで16%以上、重症度、医療・看護必要度で15%以上、新たに入棟した患者については「入棟初日のB得点が3点以上」が50%以上であることとしている。

◎日医・松本会長 地域医療への影響懸念 7対1「本当に維持できるかという問題も」

日本医師会の松本吉郎会長は、「診療側としてはこの改定内容が現場に直接与える影響を懸念している。特に今回は多くの項目の組み合わせでどれを選ぶかといった議論に収れんしてしまったことは非常に残念だ。これまで以上に医療現場はその対応に迫られ、混乱、疲弊することが予想される。各地域において必要な医療体制は一律ではないが、診療報酬や医療機関がどのような医療機能を選択したとしても、経営が成り立つよう、寄り添うという理念を守るべきと主張してきた。診療側として改定の施行を見据え、経過措置も含めてしっかりと状況を注視していきたい」と述べた。

急性期一般入院料1を取得する医療機関については、「非常に負担がかかるのではないか、本当に維持できるのかという大きな問題があると思う」と指摘。地域包括医療病棟については、「今後急性期一般入院料や地域包括ケア病棟などからの転換も含めてしっかりと検討されるのではないか。大きな影響は出てくるのではないか」との見通しを示した。

◎日病・島副会長 重症度、医療・看護必要度B項目廃止で「内科系に厳しく」

日本病院会の島弘志副会長は、重症度、医療・看護必要度の見直しについて、「特に手術を多くやっているような医療施設ではクリアできる内容になっているだろうと思うが、前回改定から、内科系にはかなり厳しい評価になっている。内科系の入院患者さんを多く抱えている医療機関は、このまま7対1の状態で維持できないところが結構出てくるのではないか」と見通した。

地域包括医療病棟は、「努力は必要だが、健全な経営を保っていくために今からそれぞれの施設で真剣に考えていくことになるだろう。影響はかなり大きいだろうと思う」と述べた。

「高齢者救急の受け皿としてしっかりと機能していくためには、トリアージを行う医療機関との連携が極めて重要で、下り搬送の件数も含めて十分にそれぞれの地域で機能しているかを評価する必要がある」と指摘した。

◎全日病・猪口副会長 医師の働き方改革の影響指摘「全体的な医療提供体制から注視を」

全日本病院協会の猪口雄二会長は、「例えば7対1の急性期一般を維持するのはますます厳しくなったときに、高齢者救急に特化した地域包括医療病棟という選択につながることはあり得る」との見方を示した。そのうえで、地域での医療連携や地域医療構想の実現に加え、「医師の働き方改革」の影響も指摘。「医師の働き方により、夜間の救急に対応する医師数がどう変化するかは、急性期の病棟がどれぐらい維持できるかにも大きく影響してくるだろう。単に診療報酬だけではなく、全体的な医療提供体制という観点からやっぱり十分に注視していく必要があるのではないか」と述べた。

◎医法協・太田副会長 中小病院に厳しく 7対1取得も「工夫する余地はほとんどない」

日本医療法人協会の太田圭洋副会長は、「急性期機能の高い医療機関にはかなり厚く財源が配分されているが、中小民間病院にはかなり厳しめの改定内容になっていると危惧している」との見解を示した。

「中小病院では、手術など侵襲的な手術の比率が高くない内科系の患者さんを診ている医療機関が多い。そういうところが高齢者の救急医療を担っている」と指摘。中医協では医療資源投入量の分析に基づいた議論がなされたが、「実際一番重要な医療資源は、人だ。どれぐらい手間がかかるのかというのが一切評価されることなく、今回重症度、医療・看護必要度がかなり厳格化される変更が行われた」と指摘した。この影響で経営破綻に追い込まれる医療機関が出ることにも懸念を示した。また、これまでの改定では急性期一般入院料1を算定する医療機関が減らないことも指摘されてきたが、今回の改定については「工夫する余地はほとんどない」として、急性期一般入院料1を算定する多くの医療機関が脱落する可能性を示唆し、「そういう意味で非常に厳しい」と述べた。

地域包括医療病棟入院料についても、重症度、医療・看護必要度のハードルなど、「算定要件がかなり厳しめだ。実際それが上手な受け皿になってくれるかどうかは、これから地域の各病院の先生方が様々考えながら対応しきれるかどうかということにかかってくるだろう」と見通した。

答申がバレンタインデーの2月14日であることに掛けて、「厚生労働省から、どちらかというと苦味の強いチョコレートをいただいたかなと感じている」とも話した。

◎支払側 急性期一般入院料2~6は集約を 地域医療構想とあわせた検討も求める

一方、支払側の会見では、健康保険組合連合会(健保連)の三宅泰介政策部長は、急性期一般入院料2~6について早期の集約を求め、「今後、急性期病床の機能分化については、将来の医療の効率的・効果的な医療を作っていく上で早急に手をつけていかなければならない問題だと考えている」と指摘。真に救急医療に特化する医療機関と、救急医療に加え、リハビリや栄養管理を包括的に提供する病棟に機能分化する必要性を指摘した。

日本労働組合総連合会総合政策推進局の佐保昌一局長は、「高齢者が増えていく中で、地域包括医療病棟ができる中で人口構成や地域にお住まいの方の年代、医療ニーズを踏まえながら急性期2~6は集約されていくのではないか」と見通した。そのうえで、「診療報酬改定だけでなく、地域の医療提供体制を整理することをあわせてやらないと、診療報酬だけで誘導するやり方ではうまくいかないのではないか」と指摘。地域医療構想などで、地域での医療提供のあり方をきちんとその医療圏域ごとに考え、今の医療機関の姿を少しずつ変えていかないと、地域医療提供体制がもたないのではないかと思っている」と述べた。

◎「精神科地域包括ケア病棟入院料」新設 日精協・平川副会長「夢のような形」も「大変リスクも高い」

このほか、精神科の医療分野では、「精神科地域包括ケア病棟入院料」(1535 点)が新設された。日本精神科病院協会の平川淳一副会長は、「精神科の医療分野では、救急と療養の2しかなく、真ん中のいわゆるポストアキュートやサブアキュートみたいな病棟がこれまでなかった」と説明。「入院から3か月以降1年未満の対応が難しい患者さんに力を入れていくということ」として、長期入院に力を入れる医療機関は「青い顔をしてしまう可能性もある」改定だと述べた。そのうえで、「我々も一般病棟と同じように13対1といった手厚い人員配置の中で、一般と異なり、作業療法士、公認心理士等多職種で13対1を組んで患者さんを診るという、一つの夢のような形を今回の病棟で実現していただいた。さらに、退院後には、訪問看護などとも連携して診ていく、地域の社会資源とも連携していくということで、理想的な形を作ってきた」と評価した。そのうえで、「本当に我々にとっても、清水の舞台から飛び降りるようなもので、大変リスクも高い病棟になる。そこは一つ一つ実践してみた上で考えていきたい」と述べた。




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