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規制改革推進会議・答申 医療データの利活用推進で「特別法」制定 創薬研究など「2次利用」も同意無し

公開日時 2023/06/01 18:30
政府の規制改革推進会議が6月1日に取りまとめた答申では、医療データの利活用を推進するための「特別法」の制定を提言した。実臨床で医療従事者等が医療データを利用する「1次利用」、医療機関、製薬企業、医療機器メーカーなどが医学研究、創薬研究、国際共同研究等で利用する「2次利用」とも、個人を特定できないなど一定の条件を科した上で患者本人等の同意が無くてもデータの利活用を認める法整備と基盤構築を行う。一方で、厚労省と個人情報保護委員会に対し、個人情報保護法の制度・運用の見直しの必要性を含めて所要の検討を求めた。23年度以降、速やかに措置する。

医療データの利活用をめぐっては、医師であっても、患者の過去の診療内容を照会するための同意すら困難であるなど、効率的に情報共有できないなどの課題が報告されていた。一方で、日本における医学研究や創薬・医療機器開発に利用可能な民間のリアルワールドデータが欧米と比較して少ないなどの指摘もあがっていた。こうした状況から、国内のアカデミアや産業界を中心に、医療データの利活用促進で「特別法制定」を求める声が急速に高まっていた。

◎「必ずしも同意に依存しない医療等データ利活用法制等の検討」を提言

今回の答申では、医療データの「1次利用」、「2次利用」とも、「適切な診断・ケアや医学研究、創薬等のため、必ずしも同意に依存しない医療等データ利活用法制等の検討」を提言した。特に、医学研究や創薬開発については、日米欧や中国など東アジアを加えた国際共同研究が世界的潮流となりつつあるなかで、利用できる日本人データが少ないことを懸念する意見がみられていた。一方で、EUでも同様の議論が巻き起こり、EU域内の統合データによる真の単一市場の実現に向けてEHDS法案(European Health Data Space)の検討が進められている。この法案は、一般データ保護規則(GDPR)のEU加盟国内の不均一を解消し、電子ヘルスケアデータの2次利用に関する障壁を取り払うことを目的としたものだ。

こうした国際的な医療データ利活用のトレンドを踏まえ、日本でも電子ヘルスデータの二次利用の障壁を取り除くことで、国際的な臨床研究などに立ち遅れないための制度化や環境整備に向けた議論の高まりが期待されている。今回の答申では、データの取り扱いと同時に情報連携基盤の設計にあたって、一次利用に供された医療データに必要な仮名化を行った上で、自動的かつ長期にわたって特定2次利用を可能な仕組みにするなど必要な検討を行うことも明記した。このほか、患者本人の権利利益を適切に保護する独立した監督機関の必要性にも触れている。

◎プログラム医療機器(SaMD) 23年度中に「二段階承認制度の導入」で検討・措置

このほか答申では、プログラム医療機器(SaMD)について、臨床現場における使用を早期に可能にするため、23年度中に「二段階承認制度を導入する方向」で検討、措置するとした。第1段階の承認は、「非臨床試験で評価できる場合や探索的臨床試験が必要である場合の整理、標榜可能な臨床的意義の範囲など、SaMDの使用目的や機能の違いに応じた検討」を行う。第2段階の承認では、「治験による場合の他、リアルワールドデータなどを活用して有効性の確認を行い得る」こととする。

◎SaMD 保険外併用療養費制度の活用を含めた新たな仕組み検討を

一方、厚労省に対しては、事業者が迅速に保険償還を受けられることで、革新的なSaMDの開発を可能にする観点から、「SaMDについては保険外併用療養費制度の活用を含めた新たな仕組みを設ける方向で、保険適用のあり方を検討する」よう明記。第1段階承認後に事業者の選択に基づき保険外併用療養費制度の活用を可能とし、第2段階の承認に向けたデータの収集を実現する。さらに臨床現場での一定期間の使用実績を踏まえて、償還価格の柔軟な見直しを行うとした。

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