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規制改革推進会議が答申 “NP創設”は盛り込まれず 在宅医療での看護師へのタスクシフトは事実上骨抜き

公開日時 2023/06/01 18:31
政府の規制改革推進会議は6月1日、「転換期におけるイノベーション・成長の起点」と題する答申書を取りまとめた。焦点となっていた、在宅医療でのナース・プラクティショナー(NP)については、「様々な指摘があったことを適切に踏まえる」との表現にとどまり、“NP創設”は盛り込まれなかった。訪問看護ステーションでの配置可能薬拡大についても、「24時間対応が可能な薬局が存在しない地域」について実態調査を行ったうえで、必要な対応の検討を求めるにとどまった。議論の過程では、医療安全の観点から日本医師会や日本薬剤師会が強く反発し、調整が難航。盛り込まれた項目は、多くが実態調査の実施にとどまり、在宅医療でのタスクシフト/タスクシェアを目指した当初の案から事実上の骨抜きとも言える改革案となった。

◎日医、日薬が反発 「医療関係職種がしっかり連携・協議すれば解決できるもの」

NPをめぐっては、日本看護協会(日看協)などが、在宅患者の急変時に医師の指示を受けられずに患者の症状が悪化しているなどとして、創設に向けた早期の検討などを求めていた。規制改革推進会議でも、在宅療養患者の急変時の対応として、包括的指示の活用を推進し、「一定の条件下で、看護師が処方箋を発行、投薬する(輸液を含む)」などの案が提示されてきた。医薬品についても、訪問看護ステーションに薬剤師が遠隔管理する“薬局の遠隔倉庫”の案が提示されるなど、議論が進められてきた。

これに対し、日本医師会は、松本吉郎会長が「地域において医療関係職種がしっかりと連携し、協議をすれば、解決できるものだ」と述べるなど、現行制度下で解決可能との考えを表明。医療安全の観点や責任の所在などの課題をあげ、「新たな資格(NP)により看護師が診断・処方すれば(課題が)解決するということはあり得ない」と反発。一方で、「今後、在宅医療分野における特定行為研修を推進していくことは必要」との考えも示していた。日本薬剤師会の山本信夫会長も、医療安全や法的な観点から、「配置可能薬を拡大するということについては断固反対という立場だ」と述べるなど、反発が強まっていた。

また、日看協が議論の根拠として提出した調査結果では、7割以上の訪問看護ステーションが医師の指示が得られず、症状が悪化した事例があるとされているが、回収率は約6%と低率で、全体的な状況を反映していないとの指摘があがっていた。実際、日本医師会や日本薬剤師会の実施した調査では、こうした実態は「全くない」とともに強調していた。

◎答申 医療専門職の連携は「大前提」 タスクシフト/シェア推進の必要性には言及

答申では、NP創設や、「一定の条件下で、看護師が処方箋を発行、投薬する(輸液を含む)」などの文言は盛り込まれなかった。在宅医療において、専門職の連携は「大前提」としたうえで、「現実には、多職種間の“連携”で対応するという主張は、すでに20年以上行われているものの、我が国の人口構造が変化する中で、必ずしも十分な対応を行うことはすでに困難となっているとの指摘もある」と指摘したうえで、タスクシフト/シェアの推進が必要とした。

具体的には、「①地域の在宅患者に対して最適なタイミングで必要な医療が提供できないために患者が不利益を被る具体的状況や、②そのような具体的状況において医師、看護師が実際に果たしている役割や課題を24年度および25年度に調査し、さらなる医師、看護師間でタスクシェアを推進するための措置について検討する」とするにとどめた。ただし、「ナース・プラクティショナー制度を導入する要望に対して様々な指摘があったことを適切に踏まえるものとする」ことも盛り込んだ。

◎特定行為修了者を地域医療の現場に 手順書の理解促進のための周知・広報を

一方で、医師から看護師のタスクシェアを推進する観点から、特定行為の推進を盛り込んだ。現行制度下では特定行為修了者が大病院に偏っていることから、「地域医療(地域の小規模医療機関で外来看護や訪問看護など)で活躍可能な特定行為研修修了者の養成を促進し、医師不足が顕著な地域をはじめとする各地でのケアの質を維持する」とした。具体的には、医師から必要な手順書が必ずしも円滑に発行されない実態を踏まえ、「関係団体の協力も得ながら医師に対し、手順書の理解促進のための周知・広報を図る」とし、現在の標準的な手順書の改定も盛り込んだ。23年度から検討を開始し、遅くとも24年度に措置する。

◎在宅での薬物療法 24時間対応薬局の公表、輪番制の導入など対応を 23年度に結論

在宅医療における薬物療法については、夜間・休日などで医師に連絡がつかない事例があるなどとして、「具体的にどのような地域にどの程度の頻度でどのような課題があるかについて現場の医師、薬剤師、看護師および患者等に対して調査を行い、必要な対応を検討する」とした。23年度に検討を開始し、24年度に結論を得る。

厚労省は議論のなかで、24時間対応を要件とする地域連携薬局が在宅医療を担っていると説明していたことを踏まえ、答申では「地域連携薬局の一部に、現実には夜間・休日の調剤が行われていないことがあるとの指摘を踏まえ、必要な措置を講ずる」とした。具体的には、輪番制の導入や対応薬局の公表、またその是正などを通じて、24時間対応を可能とするよう、求めた。23年度に検討を開始し、結論を得る。

一方で、24時間対応が可能な薬局がない地域については、「必要に応じて、薬剤師、看護師、患者等に対し、具体的な課題を把握するための調査を行ったうえで、在宅患者に円滑に薬剤を提供する体制の整備に向けて、訪問看護ステーションに必要な薬剤(最低限の数量に限る)を配置することを含め、必要な対応を検討する」とした。23年度に検討を開始し、遅くとも24年度中に結論を得る。

このほか、オンライン診療については、へき地において公民館などに、オンライン診療のための医師非常駐の診療所を開設したことを踏まえ、「都市部」を含め、医師非常駐の診療所を開設可能とすることを検討するとした。
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