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住友ファーマ 23年度予想を下方修正 コア営業損失1340億円、期初計画から赤字幅2倍に

公開日時 2024/02/01 04:52
住友ファーマは1月31日、2023年度通期予想を下方修正したと発表した。修正後の業績予想は、売上収益3170億円(期初計画から450億円減)、コア営業損失1340億円(同720億円減)、営業損失1560億円(同780億円減)――で、コア営業損失と営業損失は期初計画から2倍以上、赤字幅が膨らむと予想した。円安影響のほか、後発品参入の影響が想定以上だった北米のラツーダの下方修正や、“ラツーダクリフ”による減収影響最小化への期待が大きい北米基幹3製品(オルゴビクス、マイフェンブリー、ジェムテサ)の売上計画を各1億ドル以上、下方修正したことが主な理由となる。

◎野村社長 北米基幹3製品「期待しているレベルより成長スピードが遅い」

野村博代表取締役社長は同日のオンライン会見で、大幅な下方修正となった理由に触れ、特に北米基幹3製品の期初計画に関し、「『剤』のポテンシャルに対する期待度が過分に入っていた」と説明した。

同社グループでは23年7月に、米国子会社・孫会社計7社を1社に統合し、北米事業のマーケティング活動に住友ファーマ本社が積極的に関与できる体制を整えた。これにより北米基幹3製品について、グループ内での薬剤評価だけでなく、北米の医師や患者が各製品をどのように評価しているのかや、治療選択に対する考えがより把握できるようになった。野村社長は3製品について、「一定の売上水準までテイクオフすれば水平飛行になる。それほど悲観していない」と自信を見せ、「(3製品は)ダメな製品ではない。年々伸びていく。ただ、我々の期待しているレベルより成長スピードが遅いということ」と強調した。

野村社長によると、例えば経口投与の進行性前立腺がん治療薬・オルゴビクスの場合、米国の医師は前立腺がんに対して注射剤をまず想起すると言い、「今までの処方を変えるのに時間がかかっている」。経口投与の子宮筋腫・子宮内膜症治療薬・マイフェンブリーでは、患者はまず低用量ピルの使用を念頭に置くとの「現実がわかった」とし、「そうであれば低用量ピルで上手く治療できなかった患者の次の選択肢として提案するといった、より現実的なマーケティング戦略をとっていく必要がある」との認識を示した。

◎24年度にコア営業利益黒字化へ

野村社長は、24年度にコア営業利益を黒字化させる目標は降ろしていないと強調した。「コア営業利益を、その幅は問わないが、何とか黒字化できる施策をとっていく」と述べ、北米基幹3製品に関する情報活動を医師向け、患者向けにそれぞれニーズを踏まえて強化していく構えをみせた。

ただ、3製品の長期計画は見直しているとし、「出だしでそれぞれ1億ドルずつ下方修正したため、売上達成の年数は遅れる」と指摘した。同社は現在の中期経営計画で、3製品合計で24年度に2000億円、27年度に4000億円の売上計画を立てているが、その達成時期は数年うしろ倒しになりそうだ。なお、23年度の修正後の北米基幹3製品の合計売上予想は899億円で期初計画から335億円引き下げた。

◎減損テストを第4四半期中に実施予定

この日に発表された修正後の業績予想は、通期の想定為替レートを期初の1ドル130.0円から145.0円に、1元19.5円を20.0円に見直した。売上収益は、為替レート見直しによる増収効果はあるものの、市場浸透に時間を要しているオルゴビクス、マイフェンブリー、過活動膀胱治療薬・ジェムテサの北米基幹3製品や北米の非定型抗精神病薬・ラツーダの下方修正を見込み、期初計画から450億円引き下げた。

各製品の修正後の売上計画は、オルゴビクスは期初計画の3億9600万ドル(515億円)を2億9000万ドル(421億円)に、マイフェンブリーは同1億9200万ドル(249億円)を7000万ドル(101億円)に、ジェムテサは同3億6200万ドル(470億円)を2億6000万ドル(377億円)に、それぞれ1億ドル以上下方修正した。ラツーダは後発品の市場浸透スピードが想定以上に早いとして、期初計画の売上1億6100万ドル(209億円)を4700万ドル(69億円)に修正した。

販管費や研究開発費は為替レート見直しの影響が大きく、それぞれ200億円、80億円の増加を見込んだ。23年7月に実施した米国子会社・孫会社の再編に伴う事業構造改善費用205億円の計上もあり、コア営業損益や営業損益の赤字幅が拡大した。

なお、減損テストを23年度第4四半期中に実施する予定だとし、今回修正した業績予想には減損損失は織り込んでいないとしている。

ピーク時売上が2000億円超あったラツーダが23年2月に米国で特許が満了した。同社は23年度の期初に、この“ラツーダクリフ”の影響で、23年度は2期連続の営業赤字となるだけでなく、コア営業損益も赤字になるとの見通しを示した。具体的には23年度通期の期初計画は、売上3620億円(前年同期比34.8%減)、コア営業損失620億円、営業損失780億円――とした。

そして、23年度上期決算では、売上1526億4200万円(前年同期比52.2%減)、コア営業損失658億4900万円、営業損失864億9800万円――で、通期計画で立てた赤字幅を超えてしまった。しかし、住友ファーマ本社として北米基幹3製品の処方状況などを見極めたいとして、23年度上期決算時は通期予想を据え置いていた。
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