中外製薬・鈴木DXユニット長 生成AI活用で社内タスクフォース構築 「Chugai AI Assistant」を基盤に
公開日時 2024/11/22 04:52
中外製薬の鈴木貴雄デジタルトランスフォーメーションユニット長は11月21日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社が企画したグループ取材に応じ、全社員のAI活用を推進する「生成AIタスクフォース(CoE)」を社内に立ち上げたことを明らかにした。同組織は鈴木ユニット長を中心に、社内各部門の人員が参画し、部門ごと生成AIの導入や開発を支援する。また、全社で生成AIを活用するための基盤として、「Chugai AI Assistant」を構築した。鈴木ユニット長は、「すでに5000人の社員がアクセスし、1000人以上が日常使用している」と明かし、社内におけるAI活用の“民主化”を進めていると強調した。
◎生成AIは社員のパートナー
「生成AIを人間のパートナーと位置づけ、ヒトと組織の可能性を解放し、医療の未来を切り拓き、人々に新たな未来の可能性を届ける。そういうパートナーを目指している」-鈴木ユニット長は、中外製薬が「生成AI活用により目指すビジョン」についてこう強調した。
生成AIの活用の方向性について鈴木ユニット長は、「業務効率化や定型的な業務については、これから“AI×ロボティクス”が浸透する」と見通す。すでに研究所や生産部門ではこうした概念が取り入れられているという。一方で、「インサイトの抽出や意思決定の支援、社内に眠る知見のマイニングやそれに基づく活動といった、価値創出が求められる定型的な業務は、人間とAIがうまく活動することになる」との見解を披露。例えば、研究部門における過去知見の再利用や、早期臨床における非構造化データの構造化などが生成AIの活用シナリオに想定しているとした。一方で、業務の効率化に関しては、試験関連文書の作成や、生産部門における申請書・報告書の作成支援などに生成AIを活用できるとした。
◎生成AIを使った“アイディアの壁打ち” 積極活用できる社内基盤を整備
鈴木ユニット長は生成AIの社内推進体制について、部門横断的な「生成AIタスクフォース(CoE)」を立ち上げたことを明かした。タスクフォースの役割は、①プロジェクト推進支援、②自社生成AI構築推進、③基盤構築推進、④人財育成試験、⑤ガバナンス-の各項目。社内の各部門に応じた生成AIの導入・開発を支援するというものだ。中でも、社員が積極的に生成AIを活用できる環境基盤として、自社構築の「Chugai AI Assistant」を用意した。これを業務に活用することで、生成AIを使った“アイディアの壁打ち”を行うことで生成AIとの親和性を高めることができる。さらに、社内にある様々なガイドラインの検索や情報の抽出にも利用できる。さらに、大量のファイル情報の要約などにも役立てている。
ほかにも生成AIを活用した事例として、「類似度の高い過去資料・関連情報を集約して提示」する機能もあり、これまでの業務にあった「検索・問い合わせ」といった業務が改善されるだけで、定量効果は約87%あったという。また、「治験計画届出提出後の照会対応における回答案ドラフト」についても、生成AIを活用することで、過去の照会に対して齟齬の無い回答を短時間で作成できるとし、定量効果(業務削減割合)は約57%だったと成果を強調した。
◎アイディア・ユースケース約900件収集 生成AIを”民主化“ 社員の利用環境整える
鈴木ユニット長は、生成AIで狙う「創薬ビジネスの変革」について、「医薬品のプロジェクト数の増加と上市までの期間削減により、創薬プロセスでのイノベーションを狙い、一日でも早く患者に革新的新薬を届けることができる。まさに健全かつアグレッシブな経営ができるということだ」と強調する。さらに、生成AIのアイディア募集を行ったところ、24年8月時点で、アイディア・ユースケース約900件を収集でき、うち約29件でPoCが進行中、14件で本番開発中・完了済みになっているとした。鈴木ユニット長は、「アイディアの中には非常に大きな価値が含まれている。我々は生成AIを民主化して、より多くの社員が使えるようにしたい」と期待を込めた。