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Patient Centricity/PSP実現への道筋を描き 新たなビジネスモデル構築と価値創造を支援

公開日時 2023/11/01 00:00
提供:PwCコンサルティング合同会社

少子高齢化で医療費財源の増加が見込めない上、患者の健康に対する価値観が多様化し、デジタル化により医療者・患者・製薬企業の関係性が変化する中、製薬業界においてはPatient Centricityという言葉が飛び交い、患者にフォーカスした企業活動の重要性が認識され始めている。ただ、“言うは易く行うは難し”で、Patient CentricityとPatient Support Program(PSP)実現へのイメージが描けていない企業も少なくない。PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)は、独自のアプローチ手法により、新たな患者エンゲージモデルの構築を支援している。目指すのは「患者中心医療の実現」という社会的価値と、「製薬企業の新たなビジネスモデル創出」という経済的価値の両立だ。

シックケアとウェルケアによる
新たなエンゲージメントモデル
Patient Centricityがなぜ必要なのかは言わずもがなであろう。社会環境が大きく変化する中、人々の健康に対する価値観は多様化し、適切な治療を提供するだけでは患者ニーズを満たせなくなっている。

「PSPにおいても治療を軸とした患者支援が中心ですが、予防や未病、重症化予防や予後とペイシェントジャーニー全体をカバーした“治療+α”の支援が求められています。さらに患者さんの生活全般を支援するライフスタイルサポート(図1)により、医薬品の提供を超えた新たな価値創造の追求が今後、製薬企業の取り組みとして重要になると思います」と、PwCコンサルティング ヘルスケア・医薬ライフサイエンス事業部シニアマネージャーの須田真澄氏は指摘する。Patient Centricityを実現していくために、“Around the Pill”もしくは“Beyond the Pill”といった患者エンゲージメントモデルの構築が必須というわけだ。

これらのモデルを構築するにあたり、同社では個人あるいは患者のデータを中心に、特定の疾患の治療を核とするシックケア領域と、疾患の予防を目的としたウェルケア領域の2つのサイクルで形成されるヘルスケアエコシステムを提唱している。特に“Beyond the Pill”の実現に向けては、シックケアとウェルケアを組み合わせ、シナジーや新たな価値を生み出すようなPSPの設計がポイントになるという。

「ヘルスケアエコシステムに参入するプレイヤーは民間保険、AI系ベンチャー、食品会社など多様です。患者中心の医療を実現するには、既存のヘルスケア業界のステークホルダーだけでなく、このような異業種とコラボレーションしながらPSPを進めていく必要があります」と須田氏は話す。
PSP実現に自信を持つ企業は3割
Patient Centricityが重要なテーマであることは、多くの製薬企業が理解しており、PwCの調査によると、製薬企業の91%が患者にフォーカスしたミッションやビジョンの実現が重要であると考えている。しかし、その実現に自信を持っている企業はわずか30%だ。また、90%の企業がPatient Centricityの成功には中長期的なフォーカスが必要であると考えている半面、短期的な財務パフォーマンスに関心を示しているとの回答が53%を占めた。さらに、Patient Centricityに関する取り組みを行っていても、半数以上の企業で適切な教育や予算が与えられていなかったり、施策やプロジェクトの成果測定が行われていなかったりするなど、どこまでPatient Centricityに本腰を入れているのかが疑問視される調査結果となっている。

「やはり従来型の組織やマネジメントでは、患者中心の医療と財務面の両立は実現できません。そこには何らかのイノベーションが必要で、私たちはビジネス(B)、エクスペリエンス(X)、テクノロジー(T)の3つを融合させたBXTアプローチで製薬企業の変革を促すサポートを行っています」と同社マネージャーの坪井りん氏は説明する。

中でも同社が重要視しているのがエクスペリエンス、すなわち最適な患者体験である。「頭でPatient Centricityを理解するだけでなく、患者さんの真のニーズはどこにあり、どのような体験を求めているのかをきちんと捉えて、その上でビジネスとしてどう成立させるのか、どのようなテクノロジーを活用するのかといったアプローチで取り組んでいく必要があります」(坪井氏)。

とはいえ、上記の3つを進めていくにあたっても課題は山積している。例えば、エクスペリエンスに関しては、疾病管理アプリの使い勝手の悪さなどが挙げられる。また、成果や実現までの道筋が不明瞭なビジネスプラン、不十分な投資や人材配置などの指摘も多いという。Patient Centricityが短期的な利益確保につながらないという、製薬企業のこれまでのマジメント姿勢がこうした課題を生み出しているともいえるだろう。
持続可能なPSPの実現には
混合診療解禁など規制緩和が必要
製薬企業の組織やマネジメントは医薬品を売る上では機能的と言えるかもしれないが、Patient CentricityやPSPを実現するには不十分な点がある。坪井氏は「まず関連部門全体が1つのチームをつくる。そしてエクスペリエンスの改善などを目的にチームで患者さんや患者団体のアンメットニーズ、患者インサイト、RWDなどを共有して新たなサービスや製品を開発し、医療機関と連携して提供していくという体制づくりが必要です」と指摘する。

同社では各製薬企業の実情に合わせながら、Patient Centricity実現に向けた組織運営全般を支援している。具体的にはビジョンと戦略の策定、組織体制と運営の仕組みの構築、“患者中心”の企業文化の醸成といったチェンジマネジメント(図2)であり、須田氏は「特にビジョンと戦略では、いかに社員の“やらされ感”を払拭して、腹落ちしてもらうかを心掛けています」と強調する。
BXTアプローチにおいては、ビジネス、エクスペリエンス、テクノロジーでそれぞれの専門チームを擁し、コンサルティングだけでなく、テクノロジーツール・システムの実装まで一貫してサポート。また、同社は他業界のクライアントも数多く抱えていることから、異業種とのネットワーク構築に長けている。「エクスペリエンスは重要ですが、ビジネスになるものと、社会貢献として患者さんとその家族、または社会のためになるものをバランスよく組み合わせていくことがPSPのポイントです。そうすることで患者さん、製薬企業、自治体、医療機関などのステークホルダー全てをWinにしていけることも当社の強みといえます」とヘルスケア・医薬ライフサイエンス事業部パートナーのプルック ヴィリヤブパ(エディ)氏は話す。

もっとも、患者にフォーカスした製薬企業の取り組みは端緒についたばかりで、医薬品の特許が切れるのと同時に、当該医薬品の服薬を想定したアプリの利用が終了するなど“患者中心”とは真逆のケースも散見されるという。「アプリ開発も治療単位ではなく、少なくとも疾患軸、ゆくゆくは患者軸で捉えていただきたい」と須田氏は要望する。

また、Patient Centricityでどのようにマネタイズしていくかも大きな課題で、持続可能な患者サービス実現に向けた規制面での支援は必須だ。Patient Centricity実現への貢献があった場合には診療報酬上のインセンティブを付けたり、混合診療を解禁して自由診療でPSPを受けられたりすることができれば、マネタイズの実現可能性は高くなるという。 “医療はタダ”という患者の意識も変えていかなければならないが、逆に言えば、対価を支払ってでも受けたいというサービスの開発が求められるとも言える。
「現状では医療機関の報酬の大部分は公的保険による収入が占めているため、大胆な変革がしづらい。つまり、製薬企業のPatient Centricityの取り組みは医療を外側から変えていく側面も有しているのです。一方で医薬品もいずれペイフォーパフォーマンスに移行していくでしょう。PSPとの両輪で効果をきちんと出していくという視点が重要になると思います」とヴィリヤブパ(エディ)氏は展望する。Patient Centricity/PSP実現の成否は、メインである医薬品事業の将来も左右するということだ。

PwCコンサルティング合同会社
ヘルスケア・医薬ライフサイエンス産業事業部

問合:jp_cons_info.hia@pwc.com

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