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仏セルヴィエ・ローロプレジデント 日本のがん市場に注力 MR体制構築、将来の増員も

公開日時 2022/08/31 04:51
フランスの製薬企業・セルヴィエ社のオリヴィエ ローロ プレジデントは8月30日、来日を機に本誌などのグループインタビューに応じ、日本市場でがん領域に注力する方針を表明した。がん領域でのプレゼンス拡大は同社のグローバル戦略のひとつ。日本では、2020年から製造販売している膵がん治療薬・オニバイド点滴静注に加え、25年までに血液がん領域で2製品の承認取得を目指す。製品導入も積極的に検討する。ローロ氏は、「日本の将来のがん領域ポートフォリオを考えた時、非常に大きな成長機会がある。ここはリスクをとって自社のMRチームが必要と判断した」と22年にMR体制を構築した理由を語った。計画通りに新製品の市場投入が実現できた場合は、MRの増員を検討する考えも示した。

オニバイドは、日本法人の日本セルヴィエが初めて日本で製造販売承認を取得した製品で、ヤクルト本社が20年6月の発売当初からプロモーションしている。しかし、日本セルヴィエの「事業戦略の変更」により、プロモーション提携は今年9月末で終了。10月からは日本セルヴィエが単独プロモーションすることがこれまでに発表されている(記事はこちら。日本セルヴィエにとって単独プロモーションは同剤が初めて。同社MR(人数非開示)は8月から活動をスタートし、ヤクルト本社MRからオニバイドに関する引き継ぎが行われている。

オニバイドは、発売から約2年となる22年4月の薬価改定で、「市場規模の拡大(原価計算品目)」を理由に市場拡大再算定が適用されるほど急成長している製品。ローロ氏は、「ヤクルト本社とのパートナーシップがあったからこそ、日本でのオニバイドの成功もあった」とヤクルト本社への謝意を示した上で、「今後出てくるがん領域の新製品のために、いま、自社MRで地場を固めることが重要と考えた」、「ヤクルト本社に対し、善意をもって交渉した」とプロモーション契約の終了交渉を振り返った。

◎23年までにALL治療薬、25年までにAML治療薬の承認取得を計画

日本セルヴィエは今後、23年までに急性リンパ性白血病(ALL)治療薬・ペグアスパルガーゼ(22年6月承認申請)、25年までに急性骨髄性白血病(AML)治療薬・イボシデニブの承認取得を目指すほか、オニバイドを加えた自社3製品と相乗効果が期待できるがん領域の製品導入も積極的に検討していく。

このうちペグアスパルガーゼは厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議からの要請に基づき日本で開発・申請したもの。イボシデニブは同会議の開発要請品リストに掲載されたものとなる。ローロ氏は両剤の日本での開発経緯に触れながら、「当社は、日本におけるドラッグラグの解消にも努めていく」と強調した。

◎流通政策 スズケングループとは別の「2社目の卸を検討」

オニバイドは現在、スズケングループによる1社流通だが、今後投入する新製品の流通政策も気になるところ。この点について日本セルヴィエのエリック デラージュ代表取締役は、「イボシデニブが経口剤であることを考えると、異なる物流モデルが必要になると思っている」とし、「(スズケングループとは別に)日本全国をカバーできる2社目の卸を検討する必要がある」との認識を示した。同剤の承認取得は計画でも約3年後のため、今後じっくり検討していくとした。

スズケングループに対しては、オニバイドのこれまでの上市成功を背景に、「これまでの2年間のサポートに非常に感謝している。この関係は今後も継続していきたい」と述べた。

◎研究開発費の50%をがん領域に投入

セルヴィエはフランス第2位の製薬企業。連結売上は21年9月期で47億ユーロ(約6000億円)。売上に占める研究開発費比率は20%以上で、現在は研究開発費の50%をがん領域に充てている。

25年の数値目標は、がん領域を中心に成長させて、連結売上65億ユーロ、うちがん領域売上10億ユーロ)、EBITDA13億ユーローーと設定。25年までに1つの新有効成分含有医薬品を創出することも掲げた。なお、日本法人の売上は22年9月期見込で約1億ユーロだが、新製品の上市や導入品を軸に、10年以内に国内売上が今の2~4倍の規模になるよう活動する方針だ。

◎私たちに株主は存在しない 日々の業務の受益者は「患者」

同社は、非営利財団が運営する非上場の独立した国際的な製薬グループで、株主が存在しない。ローロ氏は、「私たちは独立しているため、長期的な視座を持つことができる。患者の利益のために、治療薬の進展のために献身することが私たちの使命」と強調した。そして、「私たちに株主は存在しない。日々の業務の究極的な受益者は患者であり、当社の体制こそが最良の形と思っている」と述べた。

経営主体が非営利財団ではあるものの、パフォーマンスを上げ、利益を上げることは必要とも指摘した。「こうすることで、世界でイノベーションを生み出すための投資ができる。イノベーションを生み出す源泉となる当社の有能な社員・人財に注力できる」と話した。

セルヴィエはこれまで循環器・代謝領域で存在感を示していたが、ローロ氏が2014年に現職に就任して、がん領域への参入を決定し、18年の旧シャイアー社のがん事業及び米国事業拠点の買収などを次々と実現した。ローロ氏は、がん事業を手掛けるメガファーマと差別化するため、▽大手が手掛けない対象集団が小さい治療困難ながんに注力する▽特定の作用機序に焦点をあてる▽大腸がん、胃がん、膵がん、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、神経膠腫といったがん種をしぼった研究開発を展開する――ということを決め、経営資源を集中してきた。結果として現在、がん領域だけで開発段階に25プロジェクト、研究段階に20プロジェクトがあると紹介した。

ローロ氏のグループインタビューの詳細記事(一問一答記事)は、ミクス10月号で紹介します。
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