日本製薬団体連合会（日薬連）の保険薬価研究委員会の赤名正臣委員長（エーザイ執行役チーフガバメントリレーションズオフィサー）は６月10日、会見に臨み2022年度薬価制度改革に向けて、「イノベーション推進と必須な医薬品の安定供給の２点を私の薬価研委員長としての最も大事な課題だと考えている」と述べた。特に、特許期間中の薬価維持を求める考えを示した。また、治療概念を大きく変える革新的医薬品などが登場し、医薬品の概念も治療だけでなく未病や予防へと拡がるなかで、「個人的な意見」と断ったうえで、「バリューベースで評価していく」ことが必要との考えも示した。

◎イノベーション推進へ　特許期間中の薬価維持求める

主張の柱に据えるイノベーション推進をめぐっては、コロナ禍でワクチンや治療薬を開発する製薬産業のもたらす価値が再認識されるなかで、政府が示した「経済財政運営と改革の基本方針2021（骨太方針2021）」の原案と「新成長戦略実行計画案」の原案にも、“革新的な医薬品におけるイノベーションの評価の観点”などと盛り込まれている。

こうしたなかで、改めてイノベーション推進の重要性をステークホルダーに訴えていく考えだ。具体的には、新薬創出等加算について特許期間中の薬価を維持する仕組みとして十分機能するように求めるほか、薬価収載後の革新性、有効性の評価を含めた改善に向けた検討が必要との考えを示した。再算定については、効能追加を行う製薬企業の開発意欲を削ぐことなども指摘し、現行ルールの課題について検討する必要があるとの考えを示した。新薬の算定に際して類似薬の対象を拡大する仕組みの導入も求める考えだ。

◎安定確保医薬品　薬価を維持・下支えする措置の充実を　G1・G２ルールからの除外も一考

もう一つの柱である医薬品の安定供給をめぐっては、医療上必要不可欠であり、幅広く使用され、安定確保について特に配慮が必要な「安定確保医薬品」が今年３月、リスト化されている。赤名委員長は、「新薬、長期収載品、後発品と広く存在していると考えている。従来以上の安定供給体制の整備等が求められるということであれば、それなりの措置の充実が必要だと考えている」として、薬価を維持・下支えする措置の充実が必要との考えを示した。具体的な措置の在り方については、「具体的な検討はこれから行われると考えている」としたうえで、「例えばだが、G１・G２ルールから除外することや、基礎的医薬品にするなど、色々なやり方があるのではないか」との考えも示した。

なお、安定確保医薬品をめぐっては、日本医学会傘下の58学会の選んだ成分に基づき、厚労省の検討会がリストを今年３月に決定。最も優先度の高いカテゴリAには、ワルファリンやメトトレキサート、セファゾリンなど21成分が指定されている。

◎再生医療等製品やプログラム医療機器　事例集積で「多様な価値反映を」

再生医療等製品やプログラム医療機器など新たなモダリティが登場し、医薬品そのものの概念も大きく変わり始めている。例えば再生医療等製品では、自家・他家細胞移植や、１度の治療で完治する医薬品なども登場している。赤名委員長は、「そういったものがもたらす多様な価値、これを価格に反映することについて、引き続き様々な事例の集積を行い、多様な価値、新薬の評価を含めて適切に評価し得る算定の在り方についてはどういうものがあり得るのか、引き続き検討して参りたい」と述べた。

これまで治療にフォーカスしてきた医薬品の概念も、未病や予防などに拡がることも想定される。赤名委員長は、「個人的な意見」と断ったうえで、「未病に介入することで病気を防ぐことは、ファイナンス的にも大きなインパクトがある。病気になるまで待っていることはない。もちろん食べ物や運動もあるが薬剤でもそういったことに介入するポテンシャルはある」との見解を表明した。こうした革新的医薬品など
に対し、「バリューベースで評価していく。そういった学問が進展し、アカデミアの先生方とも協力しながら、持っている価値を確実に価格に反映できるようになればいいと個人的には思っている」と述べた。

なお、この日、薬価研では赤名委員長を再任した。任期は２年間。