年頭所感 日薬連は「薬価差生じる要因など本質的な議論を」 製薬協は革新的新薬創出に決意 卸連“古い商習慣”打破する一年に
公開日時 2025/01/07 04:50
日本製薬団体連合会(日薬連)と日本製薬工業協会(製薬協)、日本医薬品卸売業連合会(卸連)は2025年の年頭所感を会長名で発表した。日薬連の岡田安史会長は26年度薬価制度改革に向けて、「これまでにないほど重要な一年」として、「市場実勢価格に基づく薬価改定の在り方について、薬価差が生じる要因等の本質的な議論が行われることを期待する」としている。製薬協の上野裕明会長は、「医薬品企業は革新的医薬品の創出を通じて国民の健康寿命を延伸し、生産人口を増加させて日本経済を支えていきたい」とコメントを寄せた。卸連の宮田浩美会長は、「今まさに、コンプライアンスを徹底しつつ、過去からの『古い商習慣』を変えていく節目を迎えている」との見方を示した。
◎日薬連・岡田会長 25年度薬価改定でカテゴリー別対象範囲導入に「重要な転換」
日薬連の岡田会長は25年度薬価改定について、中間年改定廃止を求めてきた立場から実施されたことについて、「大変遺憾」との認識を示した。そのうえで、「本決定に至るプロセスとして、与党のみならず多くのステークホルダーから中間年改定廃止を訴える声がかつてないほど湧き上がったことは、医療現場で起きている国民にとっての課題を直視しているがゆえであると思う」と強調した。
25年度薬価改定についても、「これまでの流れから大きく変容し従来とは一線を画す内容での決着となったことも事実」との見解を表明。25年度薬価改定の実施範囲がカテゴリー別で決定されたことについて、「イノベーションの推進及び安定供給確保の必要性といった医薬品産業の眼目に沿って、過去最小の 5.2%の平均乖離率に象徴される医薬品の流通改善も踏まえ、少なくとも機械的な形での薬価改定とはならなかったことは、薬価政策の未来を見据えた哲学の非常に重要な転換であると考えている」としている。
◎製薬協・上野会長 イノベーション推進の流れを変えることなく使命果たす
製薬協の上野会長は、24年について、「医薬品業界にとって明るい兆しも感じられた」と振り返った。24年度薬価制度改革や薬事制度の見直しに加え、創薬エコサミットで製薬業界が日本の成長産業・基幹産業に位置付けられ、官民協議会を通じ、創薬力強化に向けた取組みが進められていることに触れた。
そのうえで、25年は団塊の世代が全て後期高齢者となる超高齢化社会に突入するとして「医薬品企業は革新的医薬品の創出を通じて国民の健康寿命を延伸し、生産人口を増加させて日本経済を支えていきたい」と決意表明。「課題は山積しているが、製薬協としてはイノベーション推進の流れを変えることなく、『必要な医薬品を患者さんにお届けする』という医薬品企業の使命を果たしていく」と強調した。
◎卸連・宮田会長 総価取引是正へ「過去からの商習慣が一新されるよう努力続ける」
卸連の宮田会長は年頭所感で、適切な価格形成が行われる市場環境の整備に向け「一丁目一番地となるのが『流通改善ガイドライン』への対応だ」と強調。「今まさに、コンプライアンスを徹底しつつ、過去からの『古い商習慣』を変えていく節目を迎えている」として「自ら変わることが重要であり、自らを律し、自らの規範にのっとって行動する『自律』と、自らが他者に依存せずに行動する『自立』、この2つの『じりつ』が求められている」と強調した。
「特に銘柄別薬価収載の趣旨にそぐわない総価取引を是正し、得意先の理解を得ながら単品単価交渉を推進することが非常に重要だ」と説明。「医薬品卸自らが率先して流通改善に取り組むことはもとより、そのうえで、医療機関、保険薬局、製薬企業の皆様、医薬品卸の相互理解が必要となります。互いに共感し、納得して行動に移すことで、過去からの商習慣が一新されるよう努力を続けてまいる」と表明した。
「時代が大きく変化する中にあっても、医薬品卸の使命は、平時でも有事でも、医薬品を途絶えさせることなく、医療の一翼を担う者として、国民の皆様の安心・安全な医療に貢献していくこと」と強調。「『共感しないと行動に移せない』この言葉を大切にし、会員企業の皆様方と共感しながら、一丸となって“古い商習慣を変えること”にチャレンジしてまいりたい。そのことが、私たち医薬品卸業界が大きく変わっていける、唯一の道筋だと思っている」と表明した。