大塚HD 2019年通期決算・医療関連事業で13.1%増 研究プラットフォーム構築に力
公開日時 2020/02/17 04:52
大塚ホールディングス(HD)は2月14日、2019年12月期決算(1~12月)で、医療関連事業の売上高が13.1%増の9242億5000万円の増収増益だったと発表した。米国で利尿薬・サムスカ/ジンアークが好調など、主力品が伸長した。同日会見に臨んだ大塚HDの樋口達夫代表取締役社長兼CEOは、持続的な成長に向けて研究プラットフォーム構築に力を入れる意欲をみせた。グループ横断的な研究協業を促進させ、「多様な研究基盤を連携、融合させるような仕組みで、イノベーション創出が促進されるようなプラットフォーム構築へと進化させる」と述べた。このプラットフォームを核に、グローバルメガファーマやアカデミア、ベンチャーなどと幅広くコラボすることで、革新的新薬を創出し、真のグローバルファーマへと飛躍したい考えを示した。
◎国内医療事業は10.4%増 CAGRを上方修正
同社の2019年決算では、医療関連事業の事業利益が72.1%増となるなど、連結業績での増収増益にも貢献した。サムスカ/ジンアークをはじめたグローバル4製品(エビリファイメンテナ、レキサルティ、サムスカ/ジンアーク、ロンサーフ)が伸びた。特にサムスカ/ジンアークは、米国での常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)治療において、新規処方を獲得するなどで65.1%増と大きく伸長した。国内事業も好調で、ビラノア、イーケプラ、アブラキサンなどが伸び、10.4%増の4502億円となった。
第3次中期経営計画で事業利益のCAGR(年平均成長率)を10.6%としていたが、13%以上へと上方修正し、持続的な成長に自信をみせる。
◎大鵬、アステックス、MSDの提携で「全世界での研究、商業化の加速に期待」
こうした成長の源泉として掲げるのが、既存事業価値の最大化に加え、「新たな価値創造」だ。“大塚だからできる”新領域での挑戦”を目指す。「イノベイティブな製品を世の中に出していくことを我々のポリシーにしている」と樋口社長は語り、イノベーションへの取り組みをさらに加速する考えだ。大塚製薬と大鵬薬品や米・アステックス社、ビステラ社とグループで開発基盤や技術の連合・融合させた、横断的なプラットフォームを構築。イノベーションを創出したい考えだ。これを核に、アカデミアやベンチャー、グローバルメガファーマとのコラボを進め、イノベーションを創出したい考えだ。
すでに新たな試みも始まっている。KRAS遺伝子を含む複数の薬剤ターゲットに対する低分子阻害薬の開発をめぐり、独占的なグローバルでの研究提携とライセンス契約を大鵬薬品、アステックス、MSDの3社で締結したことを1月に発表している。アステックス社はフラグメント創薬の技術を有しており、高度な専門的知識や研究リソース、技術の活用で創薬力を強化することができる。「全世界での研究、商業化が加速することに期待する」と樋口社長は話し、グローバル展開を加速させたい考えを示す。このほか、大塚製薬はタカラバイオと、TCR遺伝子治療をめぐり、共同開発・独占販売契約を締結している。
今後も、中枢や腎臓・循環器、オンコロジーの3領域の基盤を活かす考え。同社の強みと言える低分子創薬については、アステックス社をグループ傘下とすることで強化した。さらに、中分子・高分子創薬を見据え、アカデミアや
バイオベンチャーからの技術も積極的に取り組む考えだ。米国を中心にバイオキャピタルなどを通じた投資やコンソーシアムへの参画などで、「基盤技術を強化すると同時に、将来に必要な技術を取り込んでいく」と、投資にも積極的だ。
研究開発だけでなく、マーケティングや営業などあらゆる分野でグローバル化が必須となるなかで、大塚製薬は新体制として始動する。3月10日の株主総会・取締役会で正式決定されれば、井上眞副社長が新社長に昇格し、樋口社長が代表取締役会長に就任する新体制となる。樋口社長は、新体制の狙いについても、「グローバリゼーションをさらに促進していく」と語った。
【連結業績(前年同期比) 20年予想】(IFRS)
売上高 1兆3962億4000万円(8.1%増) 1兆4450億円(3.5%増)
営業利益 1765億8500万円(63.0%増) 1970億円(11.6%増)
親会社帰属の純利益 1271億5100万円(54.1%増) 1450億円(14.0%増)
【主要製品の国内売上(前年同期実績) 20年予想、億円】
エビリファイメンテナ 93(83)105
レキサルティ 83(29)110
サムスカ 673(534)660
ロンサーフ 56(47)70
イーケプラ 468(403)390
ニュープロ・パッチ 134(128)115
アブラキサン 290(255)320
アロキシ 155(147)155
ムコスタ点眼液 53(51)50
ビラノア 122(66)135
エビリファイ 125(161)80
プレタール 44(61)23
ムコスタ 35(43)25
ティーエスワン※ 94(105)70
スプリセル共同事業 310(306)305
臨床栄養 895(884)885
*ティーエスワンは海外売上含む