中医協薬価専門部会 製薬3団体は期中改定に反対 最適使用推進には業界への配慮も
公開日時 2016/09/15 03:52
中医協薬価専門部会は9月14日開かれ、日本製薬団体連合会(日薬連)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)の3団体から高額薬剤問題について意見を聞いた。焦点となっている期中改定については、3団体とも明確に反対の姿勢を示した。一方で、厚労省と関係学会、PMDAが策定する最適使用推進ガイドラインを通じた最適使用の推進については賛意を示したが、患者の新薬へのアクセス確保やガイドライン策定プロセスへの関与などの配慮も求めた。
期中改定について、日薬連の多田正世会長(大日本住友製薬代表取締役社長)は、「次期薬価改定を待つことなく、これまでにないルールを突然導入し、適用することは到底容認できない」、PhRMAの梅田一郎在日執行委員会副委員長は「革新的な医薬品の薬価を期中に引き下げる制度を導入すべきではない」、EFPIAのカーステン・ブルン会長は「安定性と予見性にさらなるダメージを与える期中改定には反対する」と反対の姿勢を貫いた。
日薬連の多田会長は、イノベーションの評価は薬価で具現されるとの見方を示し、「薬価こそが企業経営の要であり、持続的経営の源」とした。その上で、2016年度薬価改定で、特例拡大再算定が導入されたことにも触れ、「ルール変更が頻繁に行われることは、健全な企業経営の根幹を揺るがす事態で、強い危機感を覚える」と強調した。また、「産業政策の推進のバランスを考えていただきたい。薬価の議論が中心になるが、より総論的な医薬産業政策を考えないといけない」との考えも示した。
◎PhRMA 日本市場伸びは横ばい 過大な薬剤費支出「現実のものとなるとは考えがたい」
PhRMAの梅田副委員長は、国内医薬品マーケットについて、後発医薬品の使用促進もあり、今後はほぼ横ばいで推移すると説明。「一部で懸念されているような過大な薬剤費支出が現実のものとなるとは考えがたい」との考えを示した。
◎EFPIA 支払期間長期間、患者の転機に基づいた支払いなどで負担軽減も
EFPIAのブルン会長は、革新的新薬にどう財源を手当てするかが課題との考えを表明。新しい財政的な手段による対応が解決の手段になる可能性を指摘した。その例として、薬剤に対する支払期間を長期にして単年度の影響を軽減すること、患者の転機に基づく支払などをあげた。
そのほか、ソバルディやハーボニーなどのC型肝炎治療薬の使用増により、概算医療費を約1%押し上げたことについて支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「いまの日本の医療費を考えると2年待つ余裕はない」と述べ、改めて期中の薬価引き下げを求めた。また、幸野委員は、抗がん剤・オプジーボを例に、最初に承認取得する効能・効果の患者数に基づいて薬価が算定される「原価計算方式の不備が顕著になってきた」と指摘し、薬価制度の根本的な見直しを求めた。これに対し、多田会長は、「現在の薬価制度そのものが大変よくできた制度だと考えている」と述べ、薬価制度そのものの見直しではなく、あくまで抗がん剤・オプジーボに絞った特例的な検討を求めた。
診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、外国平均価格調整を引き合いに原価計算方式だけでなく、類似薬効比較方式も根本から見直すべきだと指摘した。また、オプジーボが悪性黒色腫の承認取得後に、非小細胞肺がんの承認を適応したことを引き合いに、患者数が小規模な適応取得から始めて広げる企業の戦略を指摘。「企業戦略であるのであれば大きな問題だと言わざるを得ない。日本の公的保険制度を翻弄している。翻弄されるのはたまらないというのが国民感情だ」と述べた。
これに対し、多田会長は、希少疾患治療薬は、既存治療薬がないケースが多いと説明。アンメット・メディカルニーズに挑んだ結果だと説明し、「戦略的におかしいという批判は、私どもとしては受け入れがたい」との考えを表明した。さらに、中川委員のオプジーボへの期中の薬価引下げを含む緊急的な対応の必要性を問われ、「慎重に検討すべき課題だとは思っている」とした上で、「直ちに何らかの検討をするということに違和感を覚える」と述べた。