ブリストル・マイヤーズ スクイブの勝間英仁代表取締役社長は3月19日、就任後初の記者会見に臨み、日本の長期成長戦略として、「2032年までの10年間で売上を2倍」にする目標を掲げた。ただ、エリキュースやオプジーボなど主力品の特許切れが目前に迫っていることに触れ、「グローバル全体で次のステージへ向かうための大きな局面を迎える」と指摘した。“2倍戦略”を成功に導く国内の中期戦略（J-26）にも触れ、既注力品と新製品にリソースを集中させ、同社特有の「少数精鋭」を活かす大胆かつ迅速なリソース配分を実行すると明言。すでに戦略的重点分野ごとに“ブランドリード”を設け、部門横断的に製品をマネージする組織再編に着手したと明かした。勝間社長は、「卓越した実行力が推進力となって、我々は中期・長期成長戦略を必ず達成したい」と意気込んだ。

◎“レガシー製品”から“成長製品”への移行　「外部から強いられる前に自ら先んじて計画を実行」

「我々が注力する主力製品群をみると、2023年～24年にかけて17%成長を達成した。グローバル本社から約100億円の追加投資を受けることができた」－。BMS本社が重視するアジア・太平洋地域（APAC）の牽引役として2桁成長を果たしたことに勝間社長は胸を張った。一方で、「将来に目を向けるとブロックバスター群のエリキュース、オプジーボのLOE（特許権喪失）を控え、近い将来同じように著しい成長は見込めない」と現実を直視。2032年を見据えた“2倍戦略”の前半は、“レガシー製品”から“成長製品”への移行期間を含めた成長戦略が求められることから、勝間社長は、「外部から強いられる前に、自ら先んじて計画を実行する」と強調した。

◎“2倍戦略”  ブレヤンジ、レブロジルなど注力品の成長加速　「5年で15以上の新たな承認見込む」

同社が掲げる2032年の“2倍戦略”を成功に導くカギは、ブレヤンジ、レブロジル、ソーティクツ、オプジーボ、ヤーボイの注力製品の更なる成長加速と、「今後5年で15以上の新たな承認を見込む」新薬の最大化にある。

◎「現場にオーナーシップを持たせることで、社員のエンパワーメントを高める」

勝間野社長は、これら注力製品と今後の新薬に全リソースを集中させる中期戦略（J-26）を着実に実行すると表明。「現場にオーナーシップを持たせることで、社員のエンパワーメントを高め、日々変わりゆく外部環境に迅速かつタイムリーに柔軟に対応して意思決定できる社内体制を整える」と述べ、人財開発や組織再編が「我々の卓越した実行力につながっていく」と期待感を滲ませた。

◎ブランドリードの配下に、マーケティング、デジタル、データ分析、薬価、渉外企画等を配置

また、その一例として本社コマーシャル組織の再編やオペレーションモデルの変革に着手したことを披露。同社の戦略的重点分野（固形がん、血液疾患、心血管疾患、免疫系疾患、神経系疾患）ごとに「ブランドリード」を本社に配置し、その配下に、マーケティング、デジタル、データ分析、薬価、渉外企画などの複数チームを間接的に配置することで、生産性・機動性の高い少数精鋭の組織に見直したと明かし、「これにより部署横断的な協力体制の強化を実現できる。加えてタイムリーな意思決定が可能な環境を整えることができる」と強調した。

◎ＡＩやデータ解析を用いた“オペレーションナル・エクセレンス”「日本で最適モデル」築きたい

勝間社長は、ＡＩやデータ解析を用いてBMSがグローバルで導入した“オペレーションナル・エクセレンス”に絡めながら、「グローバル本社の指示を待つのでなく、自分たちで日本に最適なモデルを築いていく。そこが我々の目指している卓越した実行力であり、全体的なカスタマ・エクセレンスモデルの形になる」と語り、“大胆かつ迅速なリソース配分と経営判断”を実行する考えを強調した。また、高い成長率と売上目標の達成は、「グローバル本社から高い期待と投資の持続的な継続にもつながる」とし、社員一人ひとりのポテンシャルを最大化するための、人財開発への投資や組織力の強化に注力する考えを強調した。