2014年メディケアパートD薬剤費 CMSとPhRMAが対立
公開日時 2016/08/25 03:50
米メディケア&メディケード・サービス庁(CMS)は8月18日、2014年のメディケア(高齢者保険)パートD(薬剤給付システム)における薬剤給付額は1210億ドル(対前年比17%増)となったことを発表した。
パートDの薬剤費は2桁増の伸びを示したが、パートD以外の薬剤費も伸長しており、CMSの上級官庁であるDHHS(保健福祉省)が今年3月に発表した報告書では、各種保険システムなどすべてを含んだ薬剤費の伸びは12.6%だった。パートDの加入者は、メディケア受給者の約70%を占めている。
CMSのNiall Brennan統計最高責任者(CDO)は、今回のデータ発表により患者、研究者および医療供給者はメディケアパートDについての価値ある情報が取得できると指摘したうえで、「本日の発表は、CMSが処方せん薬のコストを含め、政府発表のデータについての透明性を改善する取り組みの一環」であると話した。
しかし、米国研究製薬工業協会(PhRMA)のAllyson Funk広報担当は同日、CMSのパートDの薬剤費発表を受け、「この金額は、実際にメディケアが処方せん薬として支払った金額ではない」と指摘し、人々の誤解を招く不正確な数字であるとCMSに反発した。その理由として、「このデータの数字には、製薬企業とパートDが直接交渉する値引きやリベートの分が除外されている」と述べた。議会予算局によると、2014年のパートDが実際に支払った金額はCMSが発表した金額の約半分である650億ドルで、この金額はメディケア全体の経費のわずか10.9%に過ぎないと説明した。
さらにFunk 広報担当は、「医薬品は米国のヘルスケアシステムにおいて、治療を改善させると同時にコストの管理に役立つ重要な役割を果たしている」と話し、医療費問題は目先の薬剤費削減ばかりを見るのでなく、疾病からの回復によるメリットや長期的な疾病がもたらす損失額など全体から見るべき必要性を示唆した。
CMSは、今回のデータ発表について、政府発表データの透明性ばかりを訴えているが、財政支出を抑制する目的で薬剤費がいかに高騰しているかを強調したい狙いがあると見られている。一方、PhRMAは、このようなデータ発表によって、薬価高騰の矛先が製薬企業に向けられる傾向が一層強まることを避けたい思惑があると見られる。