J&J、ロシュがGSKを買収ターゲットか:英紙報道
公開日時 2015/06/23 03:50
米ブルームバーグ通信が、米ファイザーが英グラクソスミスクライン(GSK)を買収のターゲットとしているとの観測を掲載したことは本誌既報の通りだが、今度は、英一般紙「Daily Mail」6月15日付が、GSKを狙うのは米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)あるいはスイス・ロシュではないかとの証券アナリストらの観測についての記事を掲載した。
同誌によると、アナリストらはすでに、J&Jあるいはロシュは、GSK株式1株当たり1900ペンスをオッファー、買収額は920億ポンド(1430億ドル)になると見込んでいるようだ。
最近、GSK買収の噂が度々持ち上がるのは、同社の株価低迷にあるようだ。今年1月には、1327ペンスの底を打ったあと、4月半ばの株価は1642ペンスだった。6月15日の株価(終値)は1351ペンスで、2年前の1700ペンス以上だった頃とは格差を生じている。
市場観測筋は、「株主は、GSK株価の脆弱性(不安定さ)について不安に思っている」とDaily Mailに語っている。
しかし、J&Jあるいはロシュとの統合についての論理性はあるのだろうか?と米医薬専門誌「Fierce Pharma」(6月16日付)は、疑問を投げかける。
ファイザー、GSKの統合ほど論理性は強くないようだ。大規模のOTCおよび消費者向け製品部門を持つJ&Jの場合は、GSKとノバルティスの消費者向け製品部門の合弁企業を取得することで、その強化を図れる。しかし、医療用ではJ&Jはワクチン事業や医療用ではGSKが強い呼吸器薬部門を持っていないので、その強化は出来ない。が、新たに取得は出来る。それにJ&Jが関心を持っているのか?
一方、ロシュの場合、OTCや診断薬以外の事業への関心を示したことはない。同じスイスのライバル、ノバルティスが眼科領域、OTC、ワクチンなど幅広く関心を持っても、ロシュは、医療用医薬品にこだわり、診断薬事業と医薬品事業を適切にリンクさせ、個別化医療を推進している。ロシュは、近年では、米ジェネンテクの買収以降、昨年、InterMuneを83億ドルで買収しているが、いずれも個別化医療推進が根底にあると思われる。
「Fierce Pharma」は、GSKの株主は大型M&Aを望んでいるとの見方を示している。GSKのAndrew Witty CEOのかじ取りは着実だがテンポが遅く、短期的株価上昇の「処方せん」にはなっていないと指摘している。