田辺三菱製薬の代表取締役社長に辻村明広氏 MCGの執行役は退任 グループから適切な権限と責任を委譲
公開日時 2024/12/13 04:51
三菱ケミカルグループは12月12日、田辺三菱製薬の代表取締役社長に辻村明広氏を充てる役員人事を発表した。25年4月1日付で就任する。これに伴い辻村氏は執行役エグゼクティブバイスプレジデント・ファーマ所管を退任する。同社グループは2022年4月から「One Company, One Team」体制を敷き、完全子会社の田辺三菱製薬に社長、執行役員を置いてこなかった。今回グループの執行体制を見直したことで、田辺三菱製薬の権限と責任が辻村氏に委ねられ、同時に懸案課題である「パイプライン拡充と、より多くの資金を事業に注ぎ込んでくれる“ベストパートナー”探し」というミッションの全権を担うことになる。
◎One Company, One Team 事業現場における主体性が阻害されるなど課題が生じていた
今回の組織改正は、三菱ケミカルグループが持株会社としてグループ全体の戦略策定、経営資源の最適配分、事業経営の監督等を担い、傘下の田辺三菱製薬や三菱ケミカルなど事業会社がそれぞれの事業経営に当たる体制に移行させるというもの。22年4月から志向してきた「One Company, One Team」については、「グループ会社を含む事業の現場における主体性が阻害されるなどの課題が生じていた」と明かし、逆に、現場で活躍する従業員に挑戦の機会を提供し、そのパフォーマンスを最大化する目的で、「新しい経営体制のもと、事業会社とその傘下のグループ会社に対し、適切な権限と責任の委譲を進めていく」とした。
◎田辺三菱製薬のマネジメント一本に絞った舵取り
田辺三菱製薬の代表取締役社長に辻村明広氏が25年4月1日付で就任する。一方で同氏はグループの執行役エグゼクティブバイスプレジデント・ファーマ所管を退任することになり、田辺三菱製薬のマネジメント一本に絞った舵取りを任されることになる。
三菱ケミカルグループは11月13日に「新中期経営計画2029」を発表した。同日の記者会見で三菱ケミカルグループの筑本学代表執行役社長は、田辺三菱製薬のファーマ事業について、「思っている以上に稼ぐ力はある。唯一の問題はパイプラインの拡充だが、我々だけではなかなか大量の資金を独自に投入することは難しい。パートナーを探していくということが我々の道だと考えている」と語っている。
同社の24年度第2四半期(中間期)決算によると、北米でのALS治療薬ラジカヴァ経口剤の販売が伸長するなどして、売上高を押し上げ、コア営業利益は前年同期比27.5%増の414億円を計上するに至った。ただ一方で、田辺三菱製薬の売却準備に関する報道が一部メディアから流れるなど、業界内に様々な憶測が飛んでいることも見逃せない。同社グループも即座に否定のコメントを発表しているものの、「ファーマ事業を含めた全ての事業について、売却を含めたあらゆる選択肢を念頭に置いてポートフォリオ改革を推進している」と様々な環境変化に対応する姿勢を崩していない。
三菱ケミカルグループの筑本学代表執行役社長が強調する、「パイプライン拡充と、より多くの資金を事業に注ぎ込んでくれる“ベストパートナー”探し」でどのような着地点を見出すのか。業界関係者も固唾をのんで見守っている状況だ。グループから権限と責任を委譲される辻村新代表取締役社長がどのような立ち回りをするか目が離せない。