小野薬品・奥野社外取締役 グローバル企業へ経営トップの意識変革求める 女性管理職は31年度末20%に
公開日時 2025/03/06 04:51

小野薬品の奥野明子社外取締役(甲南大経営学部教授)は3月5日のサステナビリティ説明会で、真のグローバル企業へと成長するため、人材の多様性実現などカルチャーの「変化」の必要性を強調した。「尖った人材、異質な人材を受け入れ、活かす姿勢をトップが示すことが、変化を可能にする」として、経営トップ自らの意識変革の必要性にも言及した。同社にとって初の海外企業のM&Aとなった2024年の米デシフェラ社買収により、必然的に多様性が増すことから、「(意識を)大きく変えるきっかけになる」と期待感も示した。女性活躍の必要性にも言及。女性管理職の比率を31年度末までに20%まで高めるとの目標を掲げたほか、役員レベルの女性登用も強く後押しする考えも示した。
◎グローバル展開へ「トラディショナルな日本企業の良さに安住していていいのか」
「2020年に社外取締役になってから常に感じてきたことは、当社がドメスティックでトラディショナルな企業であるということだ。もちろん、300年もの歴史を持つというのは強みではあるが、グローバル展開をするにあたって、いつまでもこのトラディショナルな日本企業の良さに安住していていいのだろうか。そのように感じてきた。特に伝統的な日本企業というのはモノトーンでダイバーシティに欠ける」-。奥野社外取締役は、こう小野薬品についての印象を語り、変革の必要性を強調した。
「最大の課題」であるオプジーボが段階的なパテントクリフを迎える中で、2024年は次なる打ち手として初の海外企業・デシフェラ社の買収に踏み切った。奥野社外取締役は、「モノトーンなマネジメントを大きく変えるきっかけになるのではないか」と期待を込める。
◎企業理念の浸透と多様性への理解の必要性を強調
奥野社外取締役はまた、“チェンジ”するうえで、「異なる価値観や企業文化をお互いに理解して企業価値を高めていくことが必要」と述べ、企業理念の浸透と多様性の理解の必要性を強調する。「伝統的な日本企業なので、メンバーシップを持つ従業員のエンゲージメントは高い。次の課題は、新しくメンバーになった従業員や、これまでメンバーとみなされにくかったマイノリティのメンバーが高いエンゲージメントを持ち、一緒に働いていくことだ」と指摘。「グループ共有の共通の価値観の浸透を進めながら、デシフェラ社の良いところも取り入れ、シナジーをみや生み出せるよう、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を進めていく必要がある」との考えを示した。
◎「組織の上層部でも多様な人材のロールモデルを」
多様性の一つとしてキャリア採用の社員増加もあげ、「キャリア採用のメンバーが組織の中で活躍するようになれば、当社の変化が進むと考えている」と説明した。また、「挑戦に意欲的な人材は多いので、経営のトップが後押しして、組織の上層部でも多様な人材のロールモデルを作っていくことを期待したい」と語った。
◎女性活躍の推進「同業他社にも遅れ」 ロールモデルになる女性採用も
女性活躍を推進する必要性も強調した。女性管理職の比率が7.3%(24年10月時点)であるとして、「同業他社にも遅れをとっている」と指摘する。26年度に10%、31年度に20%の目標を掲げるが、31年度の目標には未達の見通しだ。奥野社外取締役は、「これは十分とは言えない。しかし、伝統的な日本企業の組織文化を変えるためには時間がかかっている。コツコツと取り組んでいることは確か。すぐに成果が出ないかもしれないが、今後に向けた基盤ができつつあるのではないかと感じている」と述べた。
辻󠄀中聡浩代表取締役副社長は、「特にロールモデルになるような女性を採用して、この隙間を埋めていく」考えを示した。社内では、経営陣が社内メンターとなり、管理職一歩手前の女性を後押しするなどの取組みも進めた。辻中副社長は、「管理職一歩手前の女性がここで躊躇していて、どんな思いを持っているのかに触れることで、勉強になった。こうした気づきも活かしながら、女性育成に努めてまいりたい」と強調した。