政府 第3期 健康・医療戦略を閣議決定 外資やVCをメンバーに「官民協議会」設置 29年度末のKPI示す
公開日時 2025/02/19 04:51
政府は2月18日の閣議で「第3期 健康・医療戦略」を決定した。外資系製薬企業やベンチャーキャピタル(VC)等をメンバーとする官民協議会の設置を明記。創薬エコシステムの育成施策や課題、改善策について国内外の製薬企業等の意見も踏まえ議論を進めるとした。その上で、2029年度末までの「成果目標(KPI)」を設定。官民協議会の議論を踏まえ、①事業予見性の拡大、②製薬産業の投資拡大、③日本市場の医薬品売上高を増加基調とする―などの成果目標を明記した。加えて、アウトプット指標としてAMEDに対し、優れたシーズの実用化に向けて、製薬企業等に成果を受け渡す“出口志向”の研究開発マネジメントと事業間連携の強化を求めた。
第3期戦略では、ドラッグ・ラグ/ロスの解消や、それを防ぐための創薬環境の整備、さらに必要な薬事規制の見直しや運用の改善、国際企業への働きかけなどに焦点をあてた。特に、昨年7月の創薬エコシステムサミットで岸田前首相が宣言した「医薬品産業を成長産業・基幹産業と位置づけ」や、政府の創薬力構想会議が提言した「官民協議会」の設置などが具体的に戦略として明記され、今後の議論の中身を成果目標(KPI)に掲げた。
◎官民協議会メンバーの外資系製薬企業やVCに対し「国内活動へのコミットメントを求める」
新たに設置する「官民協議会」について第3期健康・医療戦略では、外資系製薬企業やVCをメンバーとするほか、参加する製薬企業やVCに対し、投資、インキュベーション施設の設置、人材の定期的派遣など、「国内活動へのコミットメントを求め、日本の創薬エコシステムに官民が協力する形」を構築する方針を強調した。また、官民協議会に加えて、Bio Japanやジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット等の機会を使って、「外資系製薬企業やVC等を招聘した国内のみならずアジア地域も含むアカデミアやスタートアップの有望なシーズとのマッチングイベントを定期的に開催する」と指摘。外資系製薬企業や、VCなど投資家への働きかけを強めることで、国内スタートアップやアカデミアのシーズの売り込みや、薬価制度、薬事制度を含む日本の創薬関連施策に関する情報発信を行う方針も明記している。
◎事業の予見性、製薬産業への投資拡大、国内製薬市場の売上増など成果目標(KPI)に設定
こうした戦略に対し、「成果目標(KPI)」と「アウトプット指標」も明記した。成果目標では、2029年度末までにドラッグ・ロス解消のため、国内に既存薬のない薬剤等(ドラッグ・ロスを生じている86品目)のうち必要な医薬品等について、「26年度までに開発に着手する」とした。また、官民協議会での議論を通じ、「新たなドラッグ・ロスの発生を減少させる」ほか、事業の予見性拡大や製薬産業への投資拡大、国内市場の医薬品売上高を増加基調に転換させる考えも盛り込んでいる。
◎アウトプット指標 創薬スタートアップへの民間投資額 23年度比で「2倍」に
一方、アウトプット指標では、創薬スタートアップへの民間投資額を23年度比で「2倍」とするほか、企業価値100億円以上の創薬スタートアップを新たに10社以上輩出(33年創薬ユニコーンを輩出)する目標も掲げた。さらに、国内のイノベーション促進拠点または国内イノベーション促進プログラムを有する外資系製薬企業を14社、創薬ベンチャーエコシステム強化事業における創薬ベンチャーの採択件数を70社にする指標も盛り込んでいる。
◎AMED 出口志向の研究開発マネジメント、事業間連携の強化を求める
このほかAMEDに対して、「AMEDが支援する研究開発から生まれた優れたシーズの実用化を加速するため、各府省庁に紐づく様々な支援事業について、事業間をつないで連続的に研究開発を支援する仕組みを構築し、企業の開発に受け渡す仕組みを導入する」と指摘した。出口志向の研究開発マネジメントと事業間連携の強化を求めたものだ。
このため政府は、各府省庁補助等事業の間で連続的な支援を行えるようにファンディングの仕組みを見直し、調整費を機能強化するとともに、採択プロセスを柔軟に運用するペアリング・マッチングの仕組みを導入して実施する方針を第3期戦略に盛り込んだ。
◎「民間保険の活用」、「スイッチOTC化の推進」、「DCT(分散型臨床試験)の普及」も明記
このほか主な戦略として、バイオシミラーの使用促進や、新しい技術について公的保険に加えた「民間保険の活用」、「スイッチOTC化の推進等によるセルフケア・セルフメディケーションの推進」、「国内での国際共同治験を呼び込む観点でのDCT(分散型臨床試験)の普及」にも取り組む考えを明記した。