PMDAワシントン事務所が稼働 米スタートアップに日本の開発に興味を 石黒所長「NWづくりに注力」
公開日時 2024/12/02 04:51
PMDAワシントンD.C事務所が稼働を開始した。革新的新薬の開発の担い手が米国のベンチャーやスタートアップにシフトする中で、日本の薬事制度への理解を深めてもらい、日本に呼び込むことで、ドラッグ・ラグ/ロスを防ぐ狙いがある。石黒昭博所長は11月29日に開いた説明会で、「まずは、現地でしっかりネットワークを作ることが重要と考えている」と意欲を語った。将来的には米ボストンなどのエコシステムにも直接訪問し、個別のベンチャーやスタートアップと意見交換を行うことも見据え、積極的な活動を進める考え。「日本の開発に興味を持ってもらい、薬事申請をしてもらえるようアプローチしていきたい」と話した。
ワシントン事務所は、11月1日に設立。14日から業務を開始した。所長に加え、事務系総合職の駐在員と現地採用した技術系職員の3人体制を敷く。米FDAをはじめとする政府機関との連携強化に加え、正確な日本の薬事制度をタイムリーに発信。初期の総合的な開発相談に乗る。
◎日本から世界に出る意義を強調 「日本で待っていても進まない」
同日会見した、PMDAの藤原康弘理事長は、「日本で待つのではなく、日本のPMDAが世界に出ていって、各国の規制調和を対面ではかったり、各国の新しいシーズを日本に呼び込んで、日本を開発の場として、あるいは将来の医薬品・医療機器の展開の場として考えてもらったりすることをサポートしていきたい」と述べた。
安田尚之執行役員(国際部門担当)は、「革新的な医薬品等の開発主体が海外、特に米国のスタートアップやベンチャーに移る中で、日本の医療を向上させていくためには、こうした企業による開発を日本においても迅速に進めていく必要がある。日本でただ待っていても進んでいくものではない。PMDAが積極的に海外に行って、日本でも革新的な医薬品、医療機器等の開発が進むよう、働きかけていくことが必要」と述べ、ワシントン事務所設置の意義を強調した。
◎石黒所長「一歩ずつ理解を広げ、着実に理解を深めていく」
ワシントン事務所では、日本語は必要なく、すべて英語での対応が可能になることが特徴だ。石黒所長は、「日本語の資料は必要なく、英語でのコミュニケーションができることがメリット」と説明した。
「まずは、現地でしっかりネットワークを作ることが重要と考えている」と強調。米国での学会やイベントに積極的に参加するほか、エコシステムの関係者に直接コンタクトを取るなどして、ネットワークを広げる考え。「日本の制度、日本で開発をするメリットをわかりやすく紹介して、意見交換を行っていきたい」と意欲をみせた。将来に向けた取組みとして、米ボストンなどを直接訪問して、個別企業と情報交換することも視野に入れる。石黒所長は、「海外の方にわかりやすく情報発信をしていく、直接コミュニケーションを取るということを一歩ずつ重ねて理解を広げていく。それが実は遠回りに見えて、着実に理解を深めていくためには重要だ。そういった機会をワシントン事務所が担当させていただいていると考えている」と述べた。
◎日本と米国の“薬事の架け橋”に
ワシントン事務所だけで対応できない場合は、厚労省や東京のPMDA、日本大使館、ジェトロ(日本貿易振興機構)などとも連携して、対応を進める考えも示した。安田執行役員は、「ワシントン事務所が日本に関する薬事対応に向けたワークショップの場として機能していくことを目指している。こうしたPMDAの対応が今後、日本とアメリカ双方の薬事の架け橋となるべく、日本からもバックアップを積極的に行って、ワシントン事務所が機能していくようサポートする」と述べた。