新薬11製品 3月19日収載へ 2製品でピーク時300億円超と予想 肥満症薬・ゼップバウンドは319億円
公開日時 2025/03/13 04:50
中医協総会は3月12日、新薬11成分19品目の薬価収載を了承した。収載日は3月19日。このうち2製品でピーク時売上が300億円を超えると予想。ひとつは日本イーライリリーの肥満症治療薬・ゼップバウンド皮下注で、10年後のピーク時で投与患者数13万人、売上319億円になる見通しだとした。もう1剤はファイザーのインヒビターを保有しない血友病AまたはBを対象疾患とする抗TFPI抗体・ヒムペブジ皮下注。6年後のピーク時に投与患者数は557人だが、売上は301億円になると予想された。
ピーク時売上予想が100億円以上の製品は、これら2製品を含め計7製品あった。具体的には、▽濾胞性リンパ腫治療薬・ルンスミオ点滴静注(中外製薬、286億円)、▽気管支喘息/好酸球性多発血管炎性肉芽腫症治療薬・ファセンラ皮下注30mgペン(アストラゼネカ、281億円)、▽慢性リンパ性白血病等治療薬・ブルキンザカプセル(BeiGene Japan、176億円)、▽潰瘍性大腸炎治療薬・ゼポジアカプセル(ブリストル・マイヤーズ スクイブ、174億円)、▽乳がん治療薬・ダトロウェイ点滴静注用(第一三共、127億円)――。このうちルンスミオ、ブルキンザ、ダトロウェイはピーク時の投与患者数が1000人台だとしている。なお、ブルキンザは中国BeiGene(ベイジーン)にとって日本進出の第1号製品となる。
◎希少な遺伝型SOD1-ALS治療薬・クアルソディ 原価開示度50%未満で加算ゼロ
バイオジェン・ジャパンの希少なSOD1遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬・クアルソディ髄注では、有用性加算(II)(A=15%)や市場性加算(I)(A=15%)が適用されたが、製造原価開示度50%未満ということで加算ゼロとなり、薬価に加算分が反映されなかった。
3月19日付で収載される製品は以下のとおり(カッコ内は成分名と薬価収載希望会社)。投与経路・薬効分類順。
▽ウプトラビ錠小児用0.05mg(セレキシパグ、日本新薬)
薬効分類:219 その他の循環器官用薬(内用薬)
効能・効果:肺動脈性肺高血圧症
薬価:0.05mg1錠 443.50円
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数166人、販売金額5.9億円
加算:小児加算(A=20%)「本剤は小児に係る用法・用量が明示されていること等から、加算の要件に該当する。日本人の試験組み入れ数、優先審査の該当性、海外よりも早い承認状況等を踏まえ、加算率は20%が妥当である」
新薬創出等加算:該当する(主な理由:小児加算適用)
費用対効果評価:該当しない
経口のプロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬。肺動脈性肺高血圧症(PAH)の小児適応では、2歳以上の幼児又は小児に対し1日2回食後に経口投与で用いるが、体重に応じた開始用量、増量幅、最高用量が設定されている。
PAHの治療では、プロスタサイクリン系薬剤、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬など、作用機序の異なる治療薬の併用が推奨されているが、小児PAHに対して国内で使用可能な薬剤は限られており、特にプロスタサイクリン系薬剤では静脈内持続投与を必要とする注射剤のみであることから、同作用機序の経口剤が求められている。
▽ゼポジアカプセル0.92mg、同カプセルスターターパック(オザニモド塩酸塩、ブリストル・マイヤーズ スクイブ)
薬効分類:239 その他の消化器官用薬(内用薬)
効能・効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)
薬価:
0.92mg1カプセル 4792.80円(1日薬価:4792.80円)
1シート 1万2313.30円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数9.6千人、販売金額174億円
加算:なし
新薬創出等加算:該当しない
費用対効果評価:該当しない
経口のスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節剤。S1P受容体1および5に高親和性で結合し、リンパ球遊走の上流で作用する、潰瘍性大腸炎(UC)に対する新規作用機序を有する。リンパ球を末梢リンパ組織内に保持することで、リンパ球の体内循環を制御し、病巣へのリンパ球の浸潤を阻害する。用法・用量は、「通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与する」。
▽ブルキンザカプセル80mg(ザヌブルチニブ、BeiGene Japan)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(内用薬)
効能・効果:慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)、原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫
薬価:80mg1カプセル 6636.10円(1日薬価:2万6544.40円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数1.8千人、販売金額176億円
加算:なし
新薬創出等加算:該当しない
費用対効果評価:該当しない
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬。①慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)②原発性マクログロブリン血症(WM)及びリンパ形質細胞リンパ腫(LPL)――に対して、1次治療から使用できる。用法・用量は「通常、成人には1回160mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」。
中国BeiGene(ベイジーン)にとって、日本進出の第1号製品となる。
▽ブリィビアクト静注25mg(ブリーバラセタム、ユーシービージャパン)
薬効分類:113 抗てんかん剤(注射薬)
効能・効果:一時的に経口投与ができない患者における、下記の治療に対するブリーバラセタム経口製剤の代替療法:てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)
薬価:25mg2.5mL1瓶 2450円(1日薬価:4900円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数4.9千人、販売金額1.8億円
加算:なし
新薬創出等加算:該当する(主な理由:新薬創出等加算を受けている製剤の剤形追加)
費用対効果評価:該当しない
てんかん発作に関わるとされる脳内の神経終末にあるシナプス小胞タンパク2A(SV2A)に結合することにより作用を発揮すると考えられているSV2A作用薬。用法・用量は、ブリィビアクト静注に先行して2024年8月に薬価収載・発売されたブリィビアクト錠からの切替処方か、錠剤の経口投与に先立ち使用するかで異なる。
錠剤の経口投与からの切替処方の場合は、「通常、ブリーバラセタム経口投与と同じ1日用量及び投与回数にて、1回量を2分から15分かけて静脈内投与する」。錠剤の経口投与に先立ち静注製剤を投与する場合は「通常、成人にはブリーバラセタムとして1日50mgを1日2回に分け、1回量を2分から15分かけて静脈内投与する」。また、いずれの場合も、「症状により適宜増減できるが、1日最高投与量は200mgとする」。
▽クアルソディ髄注100mg(トフェルセン、バイオジェン・ジャパン)
薬効分類:119 その他の中枢神経系用薬(注射薬)
効能・効果:SOD1遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症における機能障害の進行抑制
薬価:100mg15mL1瓶 278万8883円
市場予測(ピーク時3年後):投与患者数136人、販売金額47億円
加算:
有用性加算(II)(A=15%):「本剤はSOD1mRNAに結合しRNase-Hに分解されることでSOD1タンパク質合成を抑制する新規作用機序医薬品であること、対象疾患は標準的治療法が存在しない重篤な疾患であることから、有用性加算(II)(A=15%)を適用することが適当と判断した」
市場性加算(I)(A=15%):「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす。患者数が特に少なく開発が難しいと想定される中で、本剤開発時の国際共同治験に日本人患者が組み入れられていたことを踏まえ、加算率15%が妥当である」
なお、製造原価開示度50%未満のため、加算係数はゼロ。
新薬創出等加算:該当する(主な理由:希少疾病用医薬品として指定)
費用対効果評価:該当しない
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)。希少なスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)タンパク質の生成を抑制するために、SOD1mRNAに結合するように設計されている。ALSの中のSOD1遺伝子変異を有するSOD1-ALSに対し、遺伝的原因を標的とする国内初の治療薬。用法・用量は、「通常、成人には、トフェルセンとして1回100mgを1~3分かけて髄腔内投与する。初回、2週後、4週後に投与し、以降4週間隔で投与する」。
ALSは、随意筋の運動をコントロールする脳と脊髄における運動ニューロンの喪失をもたらす希少かつ進行性で死に至る神経変性疾患。厚労省は、ALS患者のうちSOD1遺伝子変異陽性は2%程度と説明している。
▽ファセンラ皮下注30mgペン(ベンラリズマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ)
薬効分類:229 ベンラリズマブ(遺伝子組換え)
効能・効果:気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)、既存治療で効果不十分な好酸球性多発血管炎性肉芽腫症。
薬価:30mg1mL1キット 35万1731円(1日薬価:6281円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数1.5万人、販売金額281億円
加算:小児加算(A=10%)「本剤は小児に係る用法・用量が明示されていること等から、加算の要件に該当する。既収載の医薬品に係る適応の対象年齢、投与頻度等を踏まえ、加算率は10%が妥当である」
新薬創出等加算:該当する(主な理由:小児加算適用)
費用対効果評価:該当しない
抗IL-5受容体α抗体。ペン製剤の用法・用量は、既承認のファセンラ皮下注30mgシリンジと同じく、気管支喘息に対し「通常、成人、12歳以上の小児及び体重35kg以上の6歳以上12歳未満の小児にはベンラリズマブ(遺伝子組換え)として1回30mgを、初回、4週後、8週後に皮下に注射し、以降、8週間隔で皮下に注射する」。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)に対し、「通常、成人には1回30mgを4週間隔で皮下に注射する」。
▽ゼップバウンド皮下注2.5mgアテオス、同皮下注5mgアテオス、同皮下注7.5mgアテオス、同皮下注10mgアテオス、同皮下注12.5mgアテオス、同皮下注15mgアテオス(チルゼパチド、日本イーライリリー)
薬効分類:249 その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)(注射薬)
効能・効果:「肥満症。ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する、・BMIが35kg/m2以上」
薬価:
2.5mg0.5mL1キット 3067円
5mg0.5mL1キット 5797円
7.5mg0.5mL1キット 7721円
10mg0.5mL1キット 8999円
12.5mg0.5mL1キット 1万180円
15mg0.5mL1キット 1万1242円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数13万人、販売金額319億円
加算:なし
新薬創出等加算:該当する(主な理由:加算適用品等の収載から3年以内3番手以内)
費用対効果評価:該当する(H1)
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬。用法・用量は、「通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgまで減量、又は4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量できる」。
ゼップバウンドの製造販売元の日本イーライリリーは、同一成分のマンジャロ皮下注を23年4月に2型糖尿病の適応で発売している。肥満症治療薬・ゼップバウンドの効能・効果の食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない患者に限るといった内容は、ノボ ノルディスク ファーマが23年3月に承認取得、24年2月に発売した肥満症治療薬である持続性GLP-1受容体作動薬・ウゴービ皮下注(一般名:セマグルチド(遺伝子組換え))と同様となっている。
▽ダトロウェイ点滴静注用100mg(ダトポタマブデルクステカン(遺伝子組換え)、第一三共)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(注射薬)
効能・効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん
薬価:100mg1瓶 31万1990円(1日薬価:4万4570円)
市場予測(ピーク時4年後):投与患者数1.2千人、販売金額127億円)
加算:なし
新薬創出等加算:該当する(主な理由:加算適用品等の収載から3年以内3番手以内)
費用対効果評価:該当する(H5)
抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)。第一三共はHR陽性HER2陰性の転移性乳がんに係る2次/3次治療で承認申請していた。用法・用量は「通常、成人には1回6mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する」。
抗TROP2 ADCとして、ギリアド・サイエンシズのトロデルビ点滴静注用(一般名:サシツズマブ ゴビテカン(遺伝子組換え))が24年9月に承認、11月に発売されている。その適応はトリプルネガティブ乳がん(HR陰性HER2陰性)となっており、ダトロウェイとは異なる。
▽テクベイリ皮下注30mg、同皮下注153mg(テクリスタマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(注射薬)
効能・効果:再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)
薬価:
30mg3mL1瓶 21万6930円
153mg1.7mL1瓶 108万1023円(1日薬価:13万6746円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数515人、販売金額87億円
加算:なし
新薬創出等加算:該当する(主な理由:希少疾病用医薬品として指定)
費用対効果評価:該当する(H5)
抗BCMA/CD3二重特異性抗体。国内では、抗BCMA/CD3二重特異性抗体として、ファイザーのエルレフィオ皮下注(一般名:エルラナタマブ(遺伝子組換え))が再発・難治性の多発性骨髄腫(MM)の適応で24年3月に承認、5月に発売されており、テクベイリは2番手となる。
テクベイリの用法・用量は「通常、成人にはテクリスタマブ(遺伝子組換え)として、漸増期は、1日目に0.06mg/kg、その後は2~4日の間隔で0.3mg/kg、1.5mg/kgの順に皮下投与する。その後の継続投与期は、1.5mg/kgを1週間間隔で皮下投与する。なお、継続投与期において、部分奏効以上の奏効が24週間以上持続している場合には、投与間隔を2週間間隔とすることができる」。
▽ルンスミオ点滴静注1mg、同30mg(モスネツズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(注射薬)
効能・効果:再発又は難治性の濾胞性リンパ腫
薬価:
1mg1mL1瓶 8万3717円
30mg30mL1瓶 239万3055円(1日薬価:11万3955円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数1.2千人、販売金額286億円
加算:なし
新薬創出等加算:該当する(主な理由:加算適用品等の収載から3年以内3番手以内)
費用対効果評価:該当する(H5)
抗CD20/CD3二重特異性抗体。中外製薬は2レジメン以上の全身療法を受けたことがある再発・難治性の濾胞性リンパ腫(FL)で承認申請していた。FLに対する二重特異性抗体の承認(24年12月27日付)は国内1番手。用法・用量は、「通常、成人にはモスネツズマブ(遺伝子組換え)として、21日間を1サイクルとし、1サイクル目は1日目に1mg、8日目に2mg、15日目に60mg、2サイクル目は1日目に60mg、3サイクル目以降は1日目に30mgを8サイクルまで点滴静注する。8サイクル終了時に、完全奏効が得られた患者は投与を終了し、また、病勢安定又は部分奏効が得られた患者は、計17サイクルまで投与を継続する」
抗CD20/CD3二重特異性抗体として、ジェンマブのエプキンリ皮下注(一般名:エプコリタマブ(遺伝子組換え))が大細胞型B細胞リンパ腫を対象疾患に23年9月に承認、11月に発売されている。エプキンリは25年2月20日付でFLの適応を追加した。
▽ヒムペブジ皮下注150mgペン(マルスタシマブ(遺伝子組換え)、ファイザー)
薬効分類:634 血液製剤類(注射薬)
効能・効果:血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対するインヒビターを保有しない先天性血友病患者における出血傾向の抑制
薬価:150mg1mL1キット 88万3108円(1日薬価:12万6158円)
市場予測(ピーク時6年後):投与患者数557人、販売金額301億円
加算:なし
新薬創出等加算:該当する(主な理由:小児加算要件該当)
費用対効果評価:該当しない
抗TFPI抗体。プレフィルドペン型注入器を用いて週1回皮下へ自己投与する製剤。体重換算の必要がない固定用量であるため、患者の利便性が高いことも期待されている。用法・用量は「通常、12歳以上かつ体重35kg以上の患者には、初回に300mgを皮下投与し、以降は1週間隔で1回150mgを皮下投与する。なお、体重50kg以上で効果不十分な場合には、1週間隔で1回300mgに増量して皮下投与できる」。
抗TFPI抗体として、ノボノルディスクファーマのアレモ皮下注がインヒビターの有無によらず血友病AまたはBの適応を持っている。維持用量は1日1回皮下投与となっている。