治療補助アプリ2製品承認へ 小児ADHD、アルコール依存症患者の飲酒量低減用で 薬事審・部会が了承
公開日時 2025/02/07 04:50
厚生労働省の薬事審議会・プログラム医療機器調査会は2月6日、塩野義製薬が申請した「小児期における注意欠如多動症(ADHD)の治療補助アプリ」と、CureAppが申請した「アルコール依存症患者の飲酒量低減治療補助アプリ」の承認可否を審議し、いずれも承認することを了承した。両アプリとも、医師が患者に対して“アプリ”を処方し、患者は自身のスマホなどにアプリをダウンロードして、アプリからの指示・推奨に従って患者が行動することで効果を発揮する。
両アプリとも概ね1カ月程度で正式承認される見込み。承認されれば、小児ADHDの症状改善やアルコール依存症患者の飲酒量低減に向け、初めてアプリを介してアプローチできることになる。
【審議品目】(カッコ内は一般的名称、申請企業名)
▽ENDEAVORRIDE(エンデバーライド)(注意欠如多動症治療補助プログラム、塩野義製薬):「小児期における注意欠如多動症(ADHD)の治療補助」を使用目的とする疾病治療用プログラム。対象患者は、不注意・多動-衝動性が共にみられる状態像又は不注意が優勢にみられる状態像の患者。
エンデバーライドは、アプリ内で提供される患者毎に難易度が調整された2つの異なる操作を同時に行うこと(=二重課題の実行)で、ADHDの主症状を改善することが期待されている。例えば小児患者はアプリの画面上で乗り物を操作するが、指定の経路に沿って運転する操作(ステアリング)と、指定の対象物をタップする操作(タッピング)を同時に行う。このような二重課題に対する取り組みによりADHDの症状緩和を期待する。
使用方法は、「毎日約25分、6週間使用すること。再度使用する場合は、4週間以上あけることを推奨する」となり、1日約25分、6週間を超えての治療はできない仕様となっている。
国内のADHDガイドラインでは、ADHDの治療・支援の方法として、環境調整を含む心理社会的治療と薬物治療が挙げられている。厚労省の担当者は部会後の記者説明会で、エンデバーライドは心理社会的治療に上乗せして使用することや、その後、薬物治療が入ってきたあとに上乗せして使用することが可能と説明した。
エンデバーライドの使用対象患者の年齢については、「使用目的上は明確に年齢制限を設けていないが、臨床試験は6歳以上18歳未満で行われており、基本的にはこの年齢が対象になる」と説明した。
日本で実施した第3相臨床試験ではADHD治療で通常行われる環境調整や心理社会的治療が実施された6歳以上18歳未満を対象に本製品の有効性と安全性が評価された。主要評価項目のADHD重症度評価尺度であるADHD-RS-IV不注意スコアの6週間使用終了時のベースラインからの変化量について、本製品群は-4.44、通常治療群は-1.47と統計学的に有意な改善を認めた(p<0.0001)。有害作用は2.8%に認められ、欲求不満耐性低下0.9%、頭痛0.9%、悪心0.9%だった。
▽CureApp AUD飲酒量低減治療補助アプリ(アルコール依存症治療補助プログラム、CureApp):「アルコール依存症患者の飲酒量低減治療補助」を使用目的又は効果とする疾病治療用プログラム。
同アプリは、飲酒量低減治療において、日常の患者状況を医師アプリで簡便に確認しつつ、患者アプリにより患者ごとに行動変容を促し、適切な飲酒習慣を身につけることを意図したプログラムとして開発された。飲酒量低減を目的とした心理社会的治療を補助するためのもので、飲酒量低減治療マニュアルポケット版等の関連ガイドラインやマニュアルに基づく標準的な治療とともに用いる。
同アプリは患者アプリと医師アプリで構成される。患者アプリは医師の処方により使用可能で、患者自身のスマホにアプリをインストールし、患者の情報を入力データとして患者アプリで取得する。患者アプリは、患者が入力した情報及び収集した行動の実践結果をもとに、習慣化に必要な取り組みを個別化し、アプリから提示する。これにより飲酒量低減効果を得る。
医療従事者は、医師アプリを通じて患者アプリで取得された患者の情報を確認し、提示された患者情報を参考に診療を行う。また医療従事者は、患者がアプリを使った治療の管理下にあることを確認するが、これが確認できない場合、医療従事者の判断で患者アプリの使用を停止することができる。
国内臨床試験では、本製品を用いた介入群140例(心理社会的治療+本製品の使用)と、対照群143例(心理社会的治療+飲酒記録)を比較し、有効性と安全性が検証された。主要評価項目は、Heavy Drinking Day(HDD)数(=1日あたりの純アルコール摂取量が男性60g、女性40gを超える日(HDD)の4週間当たりの日数)のベースラインから12週時点への変化量。その結果、介入群の変化量は-12.237、対照群は-9.453で、介入群で有意な減少を示した(p=0.0038)。すべての有害事象で本製品との因果関係が否定され、健康被害発生の恐れがある不具合の発現はなかった。
同アプリの販売はサワイグループホールディングスが行う予定になっている。