日本医療研究開発大賞 総理大臣賞は協和キリンら受賞 モガムリズマブ開発で 厚労大臣賞は中外製薬
公開日時 2025/01/21 04:50
内閣府は1月17日、第7回医療研究開発大賞の表彰式を行い、内閣総理大臣賞を協和キリンと東京理科大生命医科学研究所炎症・免疫難病制御部門の松島綱治教授、近畿大の義江修名誉教授が共同受賞した。「ケモカインの発見に基づくT細胞リンパ腫治療薬の開発」として、T細胞白血病リンパ腫治療薬・モガムリズマブ(製品名:ポテリジオ)開発の功績が評価された。また、厚生労働大臣賞には中外製薬の「ALK選択的阻害活性を有するがん治療薬アレクチニブ塩酸塩の創製」が選ばれた。
受賞の功績について、松島教授は免疫・炎症反応において生体防御を担う白血球の特定組織への移動を制御するタンパク質ケモカインのプロトタイプを発見。義江名誉教授との共同研究によってCCケモカイン受容体(CCR4)が成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)に高発現することを見出して、新規ATL治療薬「モガムリズマブ」開発の礎を築いたことが評価された。協和キリンは抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を高める独自の「ポテリジェント」技術を搭載したモガムリズマブを作成し、名古屋大学の上田龍三特任教授(当時名古屋市立大学、2017年に紫綬褒章受章)らとともに国内臨床試験を実施。日本発・日本初のがん領域での抗体医薬開発に成功した成果が認められた。
協和キリンの宮本昌志代表取締役社長CEOは「松島教授と義江名誉教授による画期的な発見に加えて、T細胞リンパ腫患者さんのニーズの理解のもと、疾患サイエンスと創薬テクノロジーの組み合わせにより創薬を推進した結果であり、まさに協和キリンが目指す研究開発の在り方が評価された」と喜びのコメントを寄せた。
日本医療研究開発大賞は、医療分野の研究開発の推進に多大な貢献をした事例に対して功績をたたえる賞で2017年度から実施されている。第7回の受賞は以下の通り。
▽内閣総理大臣賞:松島綱治氏(東京理科大学生命医科学研究所炎症・免疫難病制御部門教授)、義江修氏(近畿大学名誉教授)、協和キリン
「ケモカインの発見に基づくT細胞リンパ腫治療薬の開発」
▽健康・医療戦略担当大臣賞:本田一文氏(日本医科大学大学院医学研究科生体機能制御学分野教授)
「膵がん診断のための血液バイオマーカーの発見と体外診断用医薬品承認、保険収載、臨床実装」
▽文部科学大臣賞:村松慎一氏(自治医科大学客員教授/遺伝子治療研究所取締役CRO)
「AAVベクターによる難治性疾患の遺伝子治療開発」
▽厚生労働大臣賞:中外製薬
「ALK選択的阻害活性を有するがん治療薬アレクチニブ塩酸塩の創製」
▽経済産業大臣賞:富士フイルム
「液体ヘリウムを全く使用しないMRI装置開発」
▽スタートアップ賞(健康・医療戦略担当大臣表彰):Heartseed
「世界初のiPS細胞を用いた再生心筋細胞移植による重症心不全治療の世界展開、及び基盤技術を活用した他疾患への展開」
▽スタートアップ奨励賞:アイリス、バイオチューブ
▽日本医療研究開発機構(AMED)理事長賞:柴田峻氏(東北大学大学院医学系研究科助教)、冨樫庸介氏(岡山大学学術研究院医歯薬学域/岡山大学病院教授)、藤本康介氏(大阪公立大学大学院医学研究科准教授/東京大学医科学研究所特任准教授)、増田隆博氏(九州大学生体防御医学研究所附属高深度オミクスサイエンスセンター分子神経免疫学分野主幹教授)