政府 24年度補正予算案を閣議決定 創薬力強化、安定供給に442億円を計上
公開日時 2024/12/02 04:50
政府は11月29日、2024年度補正予算案を閣議決定した。このうち、厚生労働関係は8454億円(うち、一般会計 8414億円、労働保険特別会計38億円、年金特別会計41億円)。医薬品関連では、医薬品関連では「創薬力強化に向けたイノベーションの推進、医薬品等の安定供給確保」に442億円、「.医療・介護・障害福祉分野の更なる賃上げの支援等、医師偏在是正に向けた対策の推進」に2861億円、「医療・介護DX等の推進」に1447億円を計上した。臨時国会での成立を目指す。
◎創薬力強化へ 実用化への橋渡し支援や創薬クラスター拡充で民間投資呼び込む
創薬力強化に向け、創薬エコシステム・創薬クラスターの発展支援に100億円を計上した。医薬品産業を成長産業・基幹産業に位置付け、日本を「創薬の地」とするため、アカデミアシーズ等の実用化に向けた橋渡しの支援を行う。創薬の経験を有する研究開発支援者がアカデミアに対して研究支援を行うほか、実用化に向けてスタートアップ設立に向けた支援、研究開発支援などを実施する。また、各地の創薬クラスター内で不足している動物実験施設やインキュベーションラボの建設、スタートアップの成長に資する取組みなどに要する費用を支援する。民間投資を呼びこみ、実用化に向けたスピードを加速することを視野に入れる。
◎“ワンストップサービス窓口”を高度専門医療研究センターに設置 28年度に15件の相談を
ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験の実施体制の整備に7.9億円を計上する。目標として、28年度までに新たに整備する 施設における国内 FIH試験実施件数10件を掲げる。海外発のシーズも含む革新的新薬候補の国内での研究開発を促進する。
ドラッグ・ラグ/ロスが指摘される中で、国内に開発拠点を有さない海外のスタートアップや製薬企業から、国内での治験実施について相談を受け、国内での治験実施を調整するとともに、国内での治験の実施の誘致を行う“ワンストップサービス窓口”を国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部に設ける。予算としては2.7億円を計上。28年度のワンストップ窓口への国際共同治験の相談件数年間15件を目標に掲げる。
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所で、医療機関と連携して患者から検体と診療情報をリアルタイムに収集。生成AIを活用して、患者層別化に有用な各種マーカーをリアルタイムに特定することで、創薬に有用なプラットフォームを実現し、日本の医学研究・創薬の活性化を図る。
◎後発品の産業構造改革の支援に70億円計上
医薬品の安定供給をめぐっては、後発品の産業構造改革に70億円を計上した。委託事業を通じ、品目統合などに向けて計画的に生産性向上に取り組む企業に対する必要な支援モデルを構築。関係者間の調整や法務面での調整費用及び機器導入など、後発品企業間の連携、協力、再編に向けて支援を行う。補助率は国が1/2、事業者が1/2。
医薬品の安定供給・流通確認システムの開発についても予算を計上した。供給不安時の供給状況報告・供給不安報告について、報告の受付・集計分析機能を有する情報システムを構築する。あわせて、医薬品の供給状況報告の内容を掲載・通知するウエブサイトを構築し、出荷状況の変更について医療機関・薬局に供給状況を速やかに通知することを可能にする。4.4億円を計上する。
鎮咳・去痰薬など、供給不足が発生している安定確保医薬品や感染症対策医薬品の増産に必要な設備整備・人件費に対する緊急的な補助として、20億円を計上した。採算性などの理由により海外から原薬の多くを輸入している抗菌薬などについて、製薬企業が原薬などの代替供給源の探索・検討を行う経費を支援する。5100万円を計上する。
バイオシミラーの国内製造施設整備推進も支援する。65億円を計上する。現状、バイオシミラーは輸入に頼っており、海外市場への展開も視野に入れ、新規製造工場等の設備投資に必要な取組みを支援する。補助率は国が1/2、事業者が1/2。
◎医療・介護・障害福祉分野の「更なる賃上げ等の支援」で1892億円計上
補正予算案のうち、「医療・介護・障害福祉分野の生産性向上・職場環境改善等による更なる賃上げ等の支援」として1892億円を計上した。内訳は、医療828億円、介護806億円、障害者福祉258億円。
このうち医療分野は、生産性向上に資する設備導入等の取り組みを進める医療機関等(ベースアップ評価料算定機関)に対し、経費相当分の給付金を支給し、生産性向上・職場環境整備等を図る。具体的には、医療機関等のICT機器の導入(Web会議設備等の導入等)や、タスクシフト・タスクシェア(医師・看護師の業務効率化)などを支援するもの。病院・有床診に1病床あたり4万円、診療所(医科・歯科)・訪問看護ステーションに1施設あたり18万円を交付(補助率10/10)する。
◎経営状況の急変に対応する「緊急的な支援パッケージ」に1311億円
補正予算案では、人口減少や医療機関の経営状況の急変に対応する「緊急的な支援パッケージ」(1311億円)を盛り込んだ。患者減少に伴う医療経営の急変や、物価高騰を含む経済状況の変化により施設整備等が困難な病院等への支援を行うというもの。特に、産科・小児科医療確保事業として、急激な分娩減少などにより特に支援が必要な産科・小児科に対して支援する。