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製薬協 医療データ二次利用で「個人情報保護法の特別法早期制定を」 日本版EHDS視野 規制改革WG

公開日時 2024/11/26 04:51
日本製薬工業協会は11月25日の規制改革推進会議健康・医療・介護ワーキング・グループで、医療データの利活用に向けて、欧州のEHDS(European Health Data Space) のような「個人情報保護法の医療分野の特別法の早期検討・制定」を要望した。複数の参考人から、現在の本人同意を中心としたデータ利活用の“入口側”の規制ではなく、データ利活用時の“出口側”での規制を重視するよう求める声があがった。医療データの利活用をめぐっては、厚労省が、9つの公的データベースで仮名化データを患者の同意に依存せずに二次利用できるよう、来年の通常国会での法改正を目指している状況にある。製薬協の安中良輔氏(第一三共)は、こうした状況を歓迎しつつも「まだ道半ば」と述べ、健康医療データ活用に向けた環境整備の必要性を訴えた。

◎改正次世代医療基盤法施行も 仮名化情報活用は「まだゼロ」

健康医療データの利活用をめぐっては、改正次世代医療基盤法が今年4月に施行され、匿名加工医療情報の作成・提供に加え、新たに仮名化情報を利用できるようになった。情報を提供する医療機関・自治体は大学病院やナショナルセンターなど36都道府県、132件で、約450万人のデータの利活用ができるという。ただ、内閣府健康・医療戦略推進事務局によると、仮名加工作成事業者の認定に向けて政府内で作業を進めている段階で、仮名化情報を活用したデータは「まだゼロ」という。

◎厚労省・内山審議官 二次利用は「まず公的DBの仮名化情報を可能に」

全国医療情報プラットフォームの構築が進む中で、厚労省は環境整備に向けて次期通常国会への法案提出を目指している。まずは一次利用の環境整備を進める考え。具体的には、全国医療情報プラットフォームのカギを握る電子カルテ情報共有サービスについて医療機関から支払基金等への3文書6情報の提供することを可能にする。あわせて、法令に根拠を設けることにより、個人情報保護法の第三者提供について本人同意取得の例外として、3文書6情報を提供する都度の患者の同意取得を不要とする。

厚労省の内山博之医薬産業振興・医療情報審議官は、「厚生労働省としては、まず全国医療情報プラットフォームを通じて一次利用ができる情報を作ることが第一段階だと思っている」と表明。焦点となっている二次利用については、「まず公的データベースについて、仮名化情報で使えるようにするというところから始めたい」と説明した。現行の改正次世代医療基盤法では、仮名化情報同士の連結解析はできないことから、法改正を視野に、NDBやがんデータベースなどの公的データベースで仮名化情報の提供を可能とする方向で検討を進める。あわせて、利用申請の一元的な受付、二次利用可能なデータベースを可視化した上で研究者や企業等がリモートアクセスして、各種データベースのデータを安全かつ効率的に利用・解析できるクラウドの情報連携基盤を整備する方向で検討がなされている状況にある。

◎製薬協・安中氏「⽇本版EHDSの実現前倒しへ検討の加速・推進を」

製薬協の安中氏は厚労省が、公的データベースで仮名化データを患者同意に依存せず二次利用を可能とする方向で議論が進んでいることを歓迎。「現在の検討状況を歓迎しており、ぜひ、次期通常国会で法改正を実現していただきたい」と述べた。「感染症領域では、NDB、感染症DB、予防接種DB が連携されれば、感染抑制・副反応・副作⽤、後遺症の影響などの分析もできるようになると期待している」とユースケースをあげ、重要性を強調した。

一方で、こうした現状は「通過点」と指摘。さらなる環境整備に向けて、データ基盤の構築の観点から、「3⽂書6 情報を超える部分のデータ収集・標準化、電⼦カルテの普及、データ連携、ガバメントクラウドの強化などについて、製薬企業の意⾒を、ぜひ平場でもヒアリング頂き、実現をお願いしたい」と要望した。

そのうえで、将来的な絵姿として、全国民のライフコースデータを連携し、仮名化データを同意に依存せず利用できる基盤構築と法整備を実現する“日本版EHDS”の早期実現の必要性を強調。「⽇本版EHDS の実現を2030 年と言わず、ぜひ前倒しできるように検討の加速・推進をお願いする」と訴えた。実現に向けて、個人情報保護法の医療分野の特別法の早期検討・制定の必要性を指摘。直近の個人情報保護法の改正でも、医療データの利活⽤を阻害せず、むしろ推進させるよう訴えた。

厚労省の内山審議官は、「国民にどういうメリットがあるか。ユースケースの議論をいろいろな方面からいただきながら、実際に役に立つ基盤を作っていきたい」と述べた。

◎民間データベースとの連携求める声も

この日の規制改革推進会議では、公的データベースだけでなく、日本医療政策学会が「医療行政データベース/電子カルテデータベースに公的統計(人口動態統計はもちろん国勢調査 や国民生活基礎調査など)や医療費助成・生活保護受給者情報を紐付ける」ことを要望するなど、民間のデータベースとのデータ連携推進を求める声もあがった。

これに対し、厚労省の内山審議官は、「保有主体の性格あるいは保有するデータの量・質、ユーザーのニーズ、それぞれ適切なセキュリティ対策が講じられているのか、そしてそもそも連結に用いる識別子が他のデータベースでもあるのかといったようなところを踏まえてさらに検討する」方針を示した。

◎佐藤座長 国民に利益を見せることが必要「二次利用はより良い医療、日本経済活性化につながる」

佐藤主光座長(一橋大社会科学高等研究院医療政策・経済研究センター所長)は議論の取りまとめで、「一定の進捗があったということは評価できるが、ここで止まってていいというわけではないというのが多くの方々の意見ではないか」と説明。「これまでは本人の同意に基づく“入口規制”だったが、“出口規制”へと転換があってはいいのではないか。一方で、国民は個人情報の漏洩に対する不安感がある。安全性を担保するのは前提だが、利益を国民に見せていくことが必要だと思う。一次利用はもちろん直接患者さんの利益にかなうし、二次利用はより良い医療を生み出すこと、産業、日本経済の活性化にも最終的につながる。この姿をまず国民の皆さんに見せて理解を得るということが必要」と述べた。将来的な絵姿として、グラウンドデザインを描く必要性も指摘し、今後議論をさらに進める考えを示した。

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