三菱ケミカル・筑本社長 ファーマ事業はパイプライン拡充へ「ベストパートナー探す」 新中計発表
公開日時 2024/11/14 04:50
三菱ケミカルグループの筑本学代表執行役社長は11月13日の経営方針説明会で、今後のファーマ事業(田辺三菱製薬)の戦略について、「ポイントはパイプラインの拡充。そのために、より多くの資金を事業に注ぎ込んでくれる“ベストパートナー”を探していきたい」と強調した。同日発表した「新中期経営計画2029」の中で明らかにしたもの。一部にファーマ事業の売却準備を始めたとの報道もあるが、筑本社長は“ベストパートナー”という表現を用いながら、「田辺三菱製薬をどうやって伸ばしていくかを主眼に考えている。(パートナーについては)相手によっても変わってくる。いろいろな可能性があると思う」と述べるにとどめた。
◎「我々だけでは大量の資金投入難しい」 売却や資本提携などあらゆる可能性に含み
「皆さんが思っている以上に稼ぐ力はある。唯一の問題はパイプラインの拡充だが、我々だけではなかなか大量の資金を独自に投入することは難しい。パートナーを探していくということが我々の道だと考えている」―。筑本社長は新たな経営ビジョンに基づく中計でファーマ事業をこう位置付けた。ファーマ事業の売却や資本提携、出資を伴わない協業などあらゆる可能性に含みを持たせた格好だが、「『これだ』という答えは持ち合わせていない。何も決まっていない中で言えることは何もない」(筑本社長)と明言を避けた。
◎新中計 国内の構造改革と主力品拡販でキャッシュ創出 パイプライン強化へ
中期経営計画では、ファーマ事業の戦略として、「国内事業の構造改革を通じた大胆なコスト最適化」や「主力3製品の拡販」によるキャッシュ創出に加え、ポスト・ラジカヴァを見据えた「開発後期のパイプライン強化」を掲げる。筑本社長は主力品として開発中のパーキンソン病治療薬候補・ND0612や糖尿病治療薬・マンジャロに期待を寄せ、ALS治療薬・ラジカヴァも「パテント戦略を粛々と進めており、皆様が思っているよりも価値を伸ばせるのではないか」と述べた。その上で「ファーマ事業を成長させていくために、ファーマで稼いだ金はしっかりファーマのために使い、ファーマ中心で経営を考えることが大事だ」と繰り返し強調した。なお、ファーマ事業の中計におけるコア営業利益目標は、24年度(予想)の610億円から29年度の1070億円と約2倍を掲げた。
◎新たな経営ビジョン「KAITEKI Vision 35」も発表 35年のグループコア営業利益9000億円目指す
この日の説明会では、2020年に公表した中長期経営基本戦略「KAITEKI Vision 30」を見直して策定した新たな経営ビジョン「KAITEKI Vision 35」を発表。加速する外部環境の変化を反映させ、「グリーン・ケミカルの安定供給基盤」「新しい治療に求められる技術や機器」「環境配慮型モビリティ」「データ処理と通信の高度化」「食の品質保持」―の5つの注力事業領域を示した。グループ全体のコア営業利益として、24年度(予想)の2900億円から35年度には約9000億円を目指すとした。