働き方改革施行後の地域医療への影響「救急搬送受け入れ困難増加」が15.6% 日医調査
公開日時 2024/10/24 04:51
日本医師会は10月23日、医師の働き方改革が今年4月に開始されたことを踏まえ、自院の医療提供体制や地域医療への影響を調査した結果を発表した。地域の医療提供体制で実際に生じている問題点としては、「救急搬送の受け入れ困難(断り)事例の増加」が15.6%でトップ。有床診療所の回答では、「母体搬送・ハイリスク妊娠の受入困難(断り)事例の増加」も5.3%あった。城守国斗常任理事は同日の定例会見で、「まだ影響としては大きくはないが、現場の先生方が一生面工夫されて地域医療に影響が出ないようにしていただいているものだろうと思う。今後、どう推移していくか、しっかりチェックしていかなければならないと思っている」と述べた。
調査は8月20日~9月2日に実施。回答数は4082施設(有床診療所:1122施設、病院:2960施設)で回答率は28.7%だった。
自院の医療提供体制への影響を尋ねたところ、制度開始直前の調査よりも影響が大きくなっている項目は、「小児医療体制(「縮小・撤退を検討」は2.3%)、「救急医療提供体制(「縮小・撤退を検討」は5.3%)」、「手術件数(「減少」が10.8%)などとなった。宿日直体制については、縮小・撤退を行っていると回答した医療機関が8.2%(335施設)、外来診療体制を縮小した医療機関が9.3%(381例)となった。
◎医師の引き揚げや派遣制限の影響も「宿日直許可が取得できていない医療機関への派遣取りやめ影響」
医師の派遣・受け入れ状況については、医師を派遣している医療機関(672施設)では、「引き揚げる医師が昨年度より増加している」が8.8%、「宿日直の応援医師の派遣を制限する事例が昨年度より増加している」は7.0%で、事前調査よりも増加した。一方、医師を受け入れている医療機関(2927施設)では、「引き揚げにより医師数が昨年度より減少している」は11.2%、「宿日直の応援医師の確保が昨年度よりも困難になっている」は21.6%で、事前調査より減少。ただ、宿日直許可を取得していない病院(181施設)では「断られている」が9.4%で、直前調査の4.9%よりも増加していた。
一方、制度開始直前の調査よりも影響が小さくなっている項目として、「管理者(病院長)の業務負担(「増加」は27.3%)」、「教育・指導体制(「維持できない可能性がある」が4.1%)」、「周産期医療提供体制(「縮小・撤退を検討」は1.8%)」があがった。
城守常任理事は、「現時点では、全体的には思ったほどの影響はまだ出ていないのではないか。医師の引き揚げや派遣制限の影響が若干大きく出ているが、要因は宿日直許可が取れていない医療機関で派遣を取りやめられている影響が一部出ていると考えられる」と指摘した。
地域の医療提供体制への影響も尋ねた。実際に生じている問題点としてトップになったのは、「救急搬送の受入困難(断り)事例の増加」が15.6%、「専門的な診療科の紹介患者(ハイリスク患者)の受入困難(断り)事例の増加」が8.3%、「医療圏域外への搬送事例の増加」が7.5%、「母体搬送・ハイリスク妊娠の受入困難(断り)事例の増加」が2.1%となった。
◎都道府県医師会にフィードバック 新たな地域医療構想検討会などで活用を
日医は都道府県別に集計したデータを都道府県医師会にフィードバックする方針。地域ごとで実情が異なる中で、データを地域医師会と都道府県行政で共有してもらい、新たな地域医療構想の検討会の場などで活用してもらいたい考え。城守常任理事は、「都道府県でカバーしきれない部分を抽出し、日本医師会としてだけでなく、国としてどのような支援ができるのか考える必要上がる。その基礎データとして少しでも寄与できれば」と話した。
城守常任理事は、「働き方改革が地域医療に大きな影響を及ぼさないように医師の健康確保、そして医療の質の維持向上のバランスを取りつつ、今後も医療関係団体としっかりと意見交換をしながら、前向きに対応していきたい」と強調した。