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日医・松本会長 財政審の物価・賃金の伸び反映で保険料率上昇に「極めて遺憾」 補正予算で要望も

公開日時 2024/10/24 04:53
日本医師会の松本吉郎会長は10月23日の定例会見で、物価・賃金の伸びを給付に反映することが保険料率の上昇につながるとの財務省財政制度等審議会財政制度分科会での議論に対し、「ミスリードと言わざるを得ず、極めて遺憾」と反発した。賃金・物価上昇は医療機関経営に影響を与えており、地域医療が崩壊しかねないと危機感を表明。「賃上げ、物価高騰は喫緊の課題であり、補助金や診療報酬など、あらゆる選択肢を含めて機動的に対応を講じていただきたい」と強調した。新たな経済対策の実施に向けた財源となる24年度の補正予算を見据え、石破首相のほか、加藤財務相、福岡厚労相をはじめ、厚労関係議員に、医療分野の物価高騰賃上げの対応について要望を進めている。

財務省は10月16日の財政制度等審議会財政制度分科会に、「社会保障分野においては、高齢化等により、給付費が雇用者報酬を上回って増加しており、保険料率が上昇している。これに加えて、物価・賃金の伸びを給付に反映した場合、ますますの保険料率の上昇につながり、現役世代の負担が更に増加(可処分所得が減少)することにも留意が必要」とする資料を提示。医療給付・介護給付費の伸びを抑制するような制度改革が必要との考えを示していた。

◎物価・賃金反映しなければ保険料率上昇しないは「国民に不誠実で、財務省の詭弁」

松本会長は、「日本医師会としても、当然ながら少子高齢化人口減少が進む中で、現役世代の負担軽減は極めて重要な視点だと考えている。医療分野についても、生産性向上や効率化を進めるべきと考え、これまでもDXの推進やタスクシフトなどに取り組んできた」と述べた。そのうえで、「物価・賃金の伸びを給付に反映しなければ、保険料率が上昇しないといった説明は国民に対して不誠実であり、財務省の詭弁と言わざるを得ない」と断じた。

そのうえで、「医療費の増加は高齢化が主因であって、骨太の方針でも示されている通り社会保障費の増額として認められている一方、医療技術の進歩、高額薬剤等医療費の増加部分は近年医療費適正化として相殺され、高齢化の分だけしか反映されていない」と指摘。物価上昇は諸外国でも医療費に反映されており、「インフレ基調に転じた経済状況を踏まえておらず、デフレ下のコストカット型経済を踏襲したものとなっている」と指摘した。

賃上げに政府が注力する中で、賃上げの伸びについて「自民党が政権復帰後の約12年間」をみても、一般労働者の賃金の推移では医療業は全産業を「むしろ若干下回っている水準」と説明。24年度診療報酬改定ではベースアップ評価料が創設され、2.5%の賃上げを実現したが、春闘の平均賃上げ率は定期昇給をあわせて5.1%、ベースアップ(ベア)は3.56%とのデータを引き合いに、「ベースアップ評価料による賃上げ率は春闘との間に約2.6%もの差があって、全く追いついていない。このままでは他産業並みの賃上げが実現できないだけではなくて、来年度の賃上げもままならない状況になっている」と危機感を表明。「現在の医療機関の経営状況ではこれ以上の賃上げは到底不可能であり、このままでは人手不足に拍車がかかってしまい、国民に適切な医療を提供できなくなってしまう。今後とも地域医療を守り、そして地域経済を活性化するためには、必要な賃上げを行い、医療従事者を確保していくことが不可欠だ」と訴えた。

◎インフレ下では税収、保険料収入も増加「十分な原資配分で他産業並みの賃上げ実現を」

インフレ下では税収に加え、保険料収入が増加することも指摘。財務省は財政審で保険料率の上昇を強調したが、「現在の保険料率は18年に政府が示した予測を約1%下回っており、可処分所得が減少するなど、国民に対して過度な不安を煽るべきではない」と強調。「医療分野においても物価高騰に対応できる十分な原資を分配していただき、他産業並みの賃上げができる環境と作っていくべきだ。それが地域医療を確保し、国民の安心・安全を守るとともに、地方、ひいては国全体の経済にとって大きなプラスになると考えている」と述べた。

◎食費、電気・ガス・水道料金、通信費の値上げで「医療機関経営は限界に」

物価上昇の影響についても言及。24年度診療報酬改定では入院時の食費が引き上げられたが、今年6月以降の食品に係る消費者物価指数は2か月ですでに1.1%上昇しているとして、「今回の食費の基準額引き上げではまだまだ不十分」との認識を表明。さらに、電気・ガス・水道料金や通信費の値上げなどで、「医療機関の経営は限界に来ている」と強調。「医療機関の経営状況はコロナ以降、患者数が戻っていないことに加え、様々なコロナ補助金が廃止され、かつ昨年以上の急激な人件費の増加、食材料費の高騰などにより非常に厳しく、このままでは地域医療が崩壊しかねない」と危機感を露わにした。

石破首相は、新たな経済対策の実施に向けた財源となる24年度の補正予算について13兆円を上回る規模とする方針を示している。松本会長は、「公定価格により運営する医療機関、介護事業所等においては、価格に転嫁することができないことから、賃上げおよび物価高騰につきましては喫緊の課題であり、補助金や診療報酬など、あらゆる選択肢を含めて機動的に対応を講じていただきたい」と要望。医療分野の物価高騰賃上げの対応について要望を行っているとした。

今後、医療の給付範囲を含めた給付と負担の議論になることも想定される。松本会長はこの点について、「あくまで給付と負担はセットで考えるべき。給付だけ減らすという話では当然ないと思う。DXやタスクシフトなどの努力は積み重ねていかなければならないと思うが、大きな議論をしてその中で考えていくべきだ」と述べた。


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