ミクス調査 8割の企業がマーケ&セールス部門の「DX投資」継続意向 一方で3割弱がMR削減を計画
公開日時 2024/11/15 04:52
ミクス編集部が製薬企業30社にデジタル投資とMR数の増減について調査したところ、8割の企業がマーケティング&セールス部門のDX投資を今後も継続すると回答した。一方で、同数の企業が過去5年の間に「MR数を減らした」と回答。今後5年間のMR数も3割弱の企業が“さらなる減少”を予測しているなど、MR数のダウントレンドに歯止めがかからない状況がうかがえた。各社ともDX投資は継続する方向で、MRはこれまで以上に生産性向上と、社内外にある様々なデータを利活用したマーケットアクセスが求められそうだ。MRにとって、DXは逆風ではなく“強い味方”として捉えるスキルとマインドが求められることになる。
製薬各社のDX投資状況や、経営者とデジタルマーケティング推進関連部署それぞれの回答比較など、調査の詳報はMonthlyミクス11月号に掲載しています。(記事は
こちら)
調査は、製薬各社の経営部門(マーケティング&セールスのDX戦略立案者)とデジタルマーケティング推進関連部署が対象。回答企業数は30社(内訳:内資系企業18社(先発品)、外資系企業8社(先発品)、後発品企業4社)だった。調査期間は9月30日~10月10日。製薬各社にメールで調査票を配布し、メールまたはGoogleフォームにて回答を回収した。
◎MR数 将来も減少予測3割弱 DX投資「今後も同等以上」8割
調査に回答した製薬各社をMR数の規模別で見ると、「500~999人」が最も多く37.9%だった。次いで「499人以下」(27.6%)、「1000人以上」(20.7%)と続いた。2019年以降の過去5年間のMR数推移では、「10%以上減少した」「9%未満ではあるが、減少している」の合計が全体の79.3%を占めた。「ほぼ同等」は3.4%で、「増加した」と回答した企業はなかった。将来予測に転じると、29年にかけての5年間のMR数推移予想では、「10%以上減少する」「9%未満ではあるが、減少する」との回答が合わせて全体の27.6%に及んだ。いずれも過去5年間でも減少していると回答した企業だった。
こうしたMR数の減少傾向とは裏腹に、製薬各社のマーケ&セールス部門におけるDX投資は将来的な観測も含めて前のめりに進む。経営層に聞いたDX投資状況をみると、過去5年間DX投資を行った企業は全体の9割超、さらに「今後も同等、あるいはそれ以上に投資する」とした企業は8割を占めた。逆に、これまでにDX投資に手つかずと回答した企業はなく、製薬ビジネスにおいて、デジタルへの対応や営業支援ツールの活用などのデジタルシフトは不可避になりつつあると言えそうだ。
◎投資目的は業務効率化がメイン 「人員削減が目的」は限定的
DXの加速がMR数削減につながるのか―。DX投資を行う目的(複数回答)を尋ねた結果では、人員削減が目的とした回答は1割強と限定的だった。多かったのは「顧客対応の密度向上」(89.7%)や「情報の質の向上」(82.8%)などを狙った業務効率化にあり、ともに全体の8割以上を占めた。
MR数の減少自体は、製薬ビジネスの変化や日本全体の労働人口減少という面からもある意味必然といえる。ただ、コロナ禍以降はデジタルを活用したオムニチャネル化が進み、売上高や顧客情報などリアルタイムデータの利活用も定着。デジタルシフトが進むことで情報提供活動のあり方が変わり、MRの適正化に動いたという企業もある。間接的ではありながら、DX投資が増えたことが、MR数減少につながった側面はありそうだ。
◎恩恵をどう結果に結びつけるか 問われるのは“向き合い方”次第
とはいえ、DX投資は営業支援ツールの導入や、データ利活用のための分析・整備などに向けられ、その目的はあくまで日々のMR活動に重きを置いた上で後方支援し、業務効率化につなげていくことにある。DXにより導入された基盤やデータなどのインフラをどう使いこなし、社内外含めたデジタル人材のサポートを受けながら、いかに協働していくか―。
MRの数が絞られていくことで、一人ひとりの生産性向上が求められる状況は今後もさらに進展するとみられる。その上で、DXはMR個人にとっても“向き合い方”次第で強力なサポートになり得る。むしろ積極的にデジタルツールやデータを利活用していく能力が必須になっていくことは間違いないだろう。MRにとっては、DX投資の恩恵をいかに結果やパフォーマンスに結びつけるかが問われていくことになりそうだ。