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厚労省 価格代行業者の“単品単価交渉”は「加盟薬局の確認」求める 問われる加盟薬局のかかわり方

公開日時 2024/10/11 06:31
厚労省の「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会」は10月10日、“単品単価交渉”の解釈を了承した。いわゆる価格代行業者(ボランタリーチェーン)を介した価格交渉を行って取引価格を決める場合は、加盟薬局ごとに地域差や取引条件などを考慮し、加盟薬局の「確認の下」で品目ごとの価格交渉が行われている場合のみ“単品単価交渉”と解釈する。ボランタリーチェーンの価格交渉をめぐってはベンチマークを用いた強行な値下げ交渉や、医薬品特性・地域特性を考慮しない交渉が指摘される一方、単品単価交渉を主張するボランタリーチェーンもある。解釈を明確化することで、ボランタリーチェーンに加盟する薬局も価格交渉へのかかわり方を問われることになる。

単品単価交渉をめぐっては、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン(流通改善ガイドライン)」の今年3月に改訂に伴い、「他の医薬品の価格の影響を受けず、地域差や個々の取引条件等により生じる安定供給に必要なコストを踏まえ、取引先と個別品目ごとに取引価格を決める交渉」と定義された。2024年度診療報酬改定で、24年度診療報酬改定で未妥結減算において取組み状況の報告が求められていることもあり、流通当事者の意識を共通化するために解釈を明確化した。

◎ベンチマークを用いた交渉 地域差や取引条件など“プロセス”が重要に

具体的には、単品単価交渉と解釈できない場合として、「全品に対して総価値引率を適用し、その値引率に合わせる形で事後的に単品ごとに価格を決定する交渉」や「ベンチマークを用いた交渉のうち、配送コストなどの地域差及び購入金額、支払条件、返品、急配等の取引条件を考慮していない単価(例えば全国最低価格など)をベンチマークとし、当該価格で決定する一方的な交渉」をあげた。ベンチマークを用いる場合でも、交渉過程で地域差や取引条件を考慮して取引価格を決定する場合は単品単価交渉となる。

厚労省医政局の藤沼義和首席流通指導官は、「流通改善ガイドラインで大事にしているのは、交渉のプロセス。ベンチマークを一方的におしつけるのではなく、それを基準に交渉をスタートさせ、交渉過程の中で、双方で色々決めていただくプロセスの考え方が大事になる」と述べた。

貞弘光章構成員(全国自治体病院協議会常務理事)は“地域差”という言葉が明記されていることに「違和感がある」と反発。「薬価は全国一律だ。定義に地域差が出てくることに関しては、地域の色々な流通コストを含めたうえでの価格差を容認するような形に聞こえてくるが、それについても懸念がある」などと指摘した。

これに対し、厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長は、「取引の中には物を運ぶことも含まれている」としたうえで、「薬価が一律であるから、一律のベンチマークを全国に通用していいということにならない」と強調した。

◎チェーングループの本部一括交渉「条件考慮し、品目ごとに平均額に基づく場合」は単品単価交渉に

一方で、チェーングループでの本部一括交渉については、「同一グループ施設の地域差や取引条件等を考慮し、品目ごとにその平均額に基づいた価格交渉」であれば単品単価交渉と認める。価格代行業者を介した交渉については、「加盟施設(医療機関・薬局)ごとに地域差や取引条件等を考慮し、加盟施設の確認の下で品目ごとの価格交渉」が行われている場合は、単品単価交渉とした。

豊見敦構成員(日本薬剤師会常務理事)は、価格代行業者の取引状況について実態調査が行われていることに触れ、「現段階で確定的な定義づけということで、ミスリードにならないか」などと疑義を示した。厚労省の藤沼首席流通指導官は、「調査を行う上で、まずは考え方を整理しないとその拾い方がどうしても混乱してしまう可能性がある」と述べ、定義を明確化する必要性を強調した。

◎コストベースでの単品単価交渉で安定供給を 宮川構成員「限定出荷は単品単価を阻害」

単品単価交渉が安定供給につながるかも議論となった。三村優美子座長(青山学院大名誉教授)は、「単品単価というか、コストベースできちんとした取引を行われることから、安定供給を進める上での一つの大きな一歩ではないか」と意義を強調した。

宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、限定出荷が「単品単価交渉を阻害する要因になる」との見方を表明。「安定供給があるからこそ交渉がしっかりできる。企業側の中で、限定出荷、それも意図的な限定出荷があってはならない」と強調した。

原靖明構成員(日本保険薬局協会医薬品流通・OTC検討委員会副委員長)は、「我々薬局も当然儲からないから患者を受けないとはできない。医療機関も同様だ。医療の中では必ず見るが、メーカーさんは儲からないから辞めるという選択ができる。そこはよく考えて安定供給に帰するようにご協力をいただきたい」と述べた。このほか、物価が高騰する中で最低薬価の課題についても指摘した。

◎未妥結減算 取引状況、医薬品卸が「参考資料」として医療機関・薬局に提供 

未妥結減算制度をめぐり、医薬品卸が取引状況などについて医療機関・薬局に対し、「参考資料」として提供する新たな取組みもスタートさせる。未妥結減算をめぐっては24年度診療報酬改定で報告内容が変更され、妥結率に加え、新たに「医療用医薬品の取引状況」、「医療用医薬品の流通改善に関する取り組み状況」を報告することとなったことを踏まえたもの。医薬品卸にも医療機関や薬局と同様の項目について聞き、確認した取引状況は、医療機関や薬局に伝える。医療機関や保険薬局は地方厚生局へ報告する義務があるが、医薬品卸からの報告は「参考資料」であることから、地方厚生局への報告は不要。システム改修や社内教育などの準備期間が必要となることから、25年度からスタートさせる。厚労省は近く通知を発出し、流通当事者に周知を図る考え。

藤沼首席流通指導官は、「医薬品卸に確認行為を行ってもらうことで振り返るとともに、結果を医療機関・薬局にお伝えすることで、コミュニケーションが取れる。双方の流通改善ガイドラインへの理解が深まるとともに、認識があっていないところについてすり合わせを行う機会ができれば非常に有益ではないか」と意義を強調した。

原構成員は、「卸間の誤差がないよう、徹底していただかないと、かなり現場は混乱する」と指摘。藤沼主席流通指導官は、卸に統一見解などの整理を求めたほか、厚労省としてもQ&Aを発出し、運用を明確にする考えを示した。



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