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メディパルHD・長福副社長 流通改善GL“別枠品”の単品単価交渉に手応え「交渉が改善し、増益できた」

公開日時 2024/11/06 04:52
メディパルホールディングス(HD)の長福恭弘取締役副社長は11月5日の2024年度第2四半期決算説明会で、流通改善ガイドライン(GL)に明記された“別枠品”の単品単価交渉について、「原価は上がったが、得意先との価格交渉が改善し、増益できた」と述べ、“別枠品”の価値を踏まえた単品単価交渉により、結果として収益面にもプラスに働いたとの認識を示した。“別枠品”は、特に医療上の必要性が高く安定供給を確保すべき医薬品であるということが「得意先にもご理解をいただいている」と強調。医療機関や保険薬局で“別枠品”の理解が浸透しているとの見方も示した。メディセオの今川国明代表取締役社長は長期収載品の選定療養化の影響について、一部の貼付剤や塗り薬で「大きな変化が出ている」と述べた。

3月1日に改訂された流通改善GLでは、「医薬品の安定供給を確保する観点から、特に医療上の必要性の高い医薬品として基礎的医薬品、安定確保医薬品(カテゴリーA)、不採算品再算定品、血液製剤、麻薬、覚醒剤及び覚醒剤原料については、価格交渉の段階から別枠とし、個々の医薬品の価値を踏まえた単品単価交渉とすること」と明記され、特に医療上の必要性の高い“別枠品”について単品単価交渉を行うことが示された。

この背景には、安定確保医薬品や不採算品再算定品などは医療上の必要性が高いにもかかわらず、総価取引が行われて価格の調整弁とされ、乖離率が大きいことがある。結果として製造コストがまかなえず、安定供給にも支障をきたす事態となっていた。

メディセオの芝野博之取締役営業本部長は、24年度上期の“別枠品”の単品単価交渉について、「(医療機関や保険薬局の)ご理解をいただくことで、原価の上昇率を少し上回るような(形で妥結でき)、乖離幅の圧縮ができた。そのため売上総利益のプラスにつながった」と振り返った。

また、24年度上期の妥結率は「94%強」(芝野営業本部長)で、前年同期とほぼ同水準だった。

◎今川社長 10月からの長期収載品の選定療養 貼付剤や塗り薬に「大きな変化が出ている」

このほか10月から、選定療養の対象となった長期収載品については、長期収載品の薬価と後発品の最高価格帯との価格差の4分の1に相当する額を患者が追加負担するルールが施行された。

今川社長は、自社の売上データから貼付剤や塗り薬の市場で10月以降、「大きな変化が出ている」とし、「これらの製品については今後、更なる変化が出てくると思っている」との認識を示した。貼付剤や塗り薬の後発品の安定供給に現在のところ支障が出ていないものの、「異常な発注量がかかった場合、供給が不安視される場合はある」とも話した。

貼付剤や塗り薬は、その使用感から患者が後発品を選択することをためらうケースが少なくないとされる。これらの長期収載品の選定療養化により後発品の使用がより進むかどうか、今後の動向が注目される。

◎24年度第2四半期 売上総利益6.1%増の741億円 売上総利益率0.22pt増の6.35%

メディパルHDの24年度上期業績は、売上高は前年同期比2.6%増の1兆8246億円、営業利益は31.7%増の271億円だった。営業利益の大幅増益は、前年同期に事業投資費等で55億円を計上した反動による影響が大きい。この事業投資費等を除外した調整後営業利益は5.3%増の285億円となり、増益を達成した。

医療用医薬品等卸売事業(メディセオ事業)については、売上高は2.4%増の1兆1676億円、売上総利益は6.1%増の741億円、売上総利益率は0.22ポイント増の6.35%、営業利益は121.1%増の118億円、調整後営業利益は12.9%増の122億円――だった。

医療用医薬品等卸売事業では、4月の薬価改定影響や新型コロナ治療薬及び検査関連試薬の需要減があった一方で、新型コロナワクチンや子宮頸がんワクチンの需要増、成長品目への注力、病院販路での販売拡大、流通改善GLを踏まえた価格交渉、メディスケットの事業拡大――などにより増収増益となった。

◎メディスケットの物流改革 1日配送回数 23年度約7.27万回→24年度約6.90万回に削減

このうちメディスケットは、メディパルHDと臨床検査受託大手のH.U.グループホールディングスとの合弁会社で、全国13か所の高機能物流センター(ALC)のネットワークを活かし、医薬品配送から検体回収までに対応した国内最大の物流プラットフォームを持つ。両社のルートを共通化することで、両社が取り扱う医薬品や検査資材等の供給と、臨床・治験・研究等の検体の集荷を最適化する。

24年度上期は、薬価改定やH.U.グループからの受託増に伴いメディスケットの物流量は増えたが、ALC機能を活用して配送回数は23年度の約7万2700回/日が24年度は約6万9000回/日に削減。受注締め時間は、23年度の21時12分が24年度は20時46分となり、出荷業務を30分短縮できた。これらの物流改革により、配送回数の削減で年間約3.5億円の配送コストの削減、受注締め時間の改善で年間約0.5億円の労働時間短縮による人件費の削減が期待できる状況になった。

メディセオの今川社長は、「24年度上期は、薬価改定などを踏まえて物流量は6%増えたのに、物流コストは増えていない。これは相当なコスト削減につながったということ」と強調した。

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