中医協 不採算品再算定と供給改善の因果関係明示求める 石牟禮専門委員「必ずしも適用拡大求めない」
公開日時 2024/11/07 06:00
厚労省は11月6日、中医協薬価専門部会に2024年度薬価改定で不採算品再算定が適用された品目は、4割以上の品目で供給状況の改善傾向が認められると報告した。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「供給状況は改善できていない品目がまだある方が問題。不採算品目再算定と供給改善にどの程度の因果関係があったのか」と指摘。25年度薬価制度改価格に向け、特例的な対応を求める業界側に議論の「出発点」として説明を求めた。業界代表の石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部専任部長)は、「原材料の調達」や「品質面でのトラブル」など、「直接的に採算性に関わる部分ではないことが発生理由としてあった」と説明。物価が高騰する中で、「例えば増産要請に対応している企業の低薬価品目等に限定的に中間年改定の実施如何にかかわらず、投資を下支えいただく措置」の検討を求めた。「必ずしも不採算品再算定の適用品目を拡大したいということはない」とも言及した。
不採算品再算定をめぐっては、23年度、24年度と2年連続で、特例的に適用された。24年度薬価制度改革では、急激な原材料の高騰、安定供給問題に対応するため、「成分規格が同一の類似薬の全てが該当する場合に限る」との規定を適用せずに、企業から希望のあった品目すべてを対象に実施。1943品目に不採算品再算定が適用された。2024年度薬価制度改革の骨子で、不採算品再算定が適用された品目については、「次回の薬価調査における乖離状況を確認し、流通状況を検証」し、不採算品再算定の適用の在り方について今後検討するとされていた。
◎不採算品再算定改善傾向は4割も 適用外の品目と1割の差に
厚労省保険局医療課は、日本製薬団体連合会(日薬連)の供給状況調査に基づき、24年3月から8月までの供給状況の変化を分析した結果を提示。不採算品再算定を適用された品目の約7割は不採算品再算定の適用以前から安定供給を続けていた。24年度に不採算品再算定の適用を受けた品目では、供給状況が「改善」、「やや改善」となったのは41.8%で、不採算品再算定の適用を受けていない品目の28.3%を上回る結果となった。厚労省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官は、「供給量の増加等には時間がかかるものの、4割以上の品目で供給状況の改善、あるいはやや改善が認められている」と説明した。
◎診療側・長島委員「医療財源には限り、真に効果が見込めるもの検討を」
診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「医療保険財源に限りがあることからすれば、薬価上の対応についても、真に効果が見込めるもの、認められるものについて検討すべき」と主張した。そのうえで、「そもそも不採算品再算定は、赤字で供給できないから要望されているものであり、供給状況は改善できていない品目がまだある方が問題。改善できていない背景や状況を正確に把握できなければ、不採算品再算定のみでは改善できないということであり、薬価上の評価の効果が期待できない」と述べ、事務局に改善しない理由を質した。
厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長は、「限定出荷を解除すると注文が殺到する。市場のニーズを全部受け止めることが難しく、限定出荷を躊躇するというような理由を挙げられる企業が多い」、「増産について、原材料の調達、ラインの確保の観点からスピーディーな対応がなかなか難しいという側面もあるというふうに聞いている」などと企業が限定出荷解除に踏み切らない背景を説明。「事務局としては、メーカーに対して漫然と限定出荷を続けない、必要な量を増産する。そうしたことに向けて、私どもができる環境整備を進めながら、企業を叱咤激励して取り組みを進めているという状況」と説明した。そのうえで、「いまは定性的なことを申し上げた。どういう定量的な分析が可能か、業界と相談しながら、業界ヒアリングの機会があったら、業界と連携して対応していきたい」と応じた。
◎診療側・長島委員 不採算品再算定と供給状況の因果関係説明が「議論の出発点」
診療側の長島委員は、「貴重かつ限りある医療財源を投入する以上、薬価上の対応が真に効果あるものと考えることが大前提。まず現状、あるいは状況をしっかりと把握するとともに、業界あるいは企業がしっかりと具体的な説明を前向きに行うことが大前提」と釘を刺した。
「業界は対象品目の拡大を希望していると思うが、この点をしっかりと説明していただき、議論することが出発点。今後の業界ヒアリングにおいても、不採算品目再算定と供給改善にどの程度の因果関係があったのか、しっかりとご説明していただくことも重要だ」と強調した。「医療上の必要性が高い品目については優先的に対応するなど、メリハリをつけることも必要」とも述べた。
◎支払側・松本委員 特例措置繰り返すことの問題点強調 「仕切価の動向を注視」
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「安定供給に支障をきたす要因が様々あるということは十分理解をしているが、少なくとも今回の結果を見ると、不採算品再算定の特例によるポジティブな影響は限定的ではないか」と指摘。「特例措置を繰り返すことで、むしろ本当のルールがなし崩しになるという問題点を、我々の立場から強調させていただく」と釘を刺した。また、24年度薬価制度改革の議論の中で、不採算品再算定を受けたにもかかわらず、仕切価率を低下させた品目があったことにも触れ、「今回も仕切価の動向を注視していかなければならない」とも述べた。支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)も、「流通改善ガイドラインに沿った適正な取引を進めるなど、生産現場だけでなく、流通を含め、サプライチェーン全体の状況を踏まえながら進めていくことが必要」と述べた。
◎石牟禮専門委員「供給不安は直接的に採算性に関わる部分ではないことが発生理由も」
業界代表の石牟禮専門委員は、「不採算品再算定は、薬価改定全体から見て、一定の制約がある中で実施されており、必ずしも各企業の希望通りに薬価が引き上げられるものではないというのが実態」と指摘したうえで、「再算定が、例えば原材料の調達ですとか、人材の確保など必要な投資への下支えになった」との認識を示した。
そのうえで、不採算品再算定品目で、供給状況が改善に至らない理由として、「他社品の影響によって増加した需要に対応しきれていないという場合や、原材料の調達などの問題が生じている。製造におけるトラブルが図らずも発生してしまう、品質面でのトラブルが発生してしまう、といった直接的に採算性に関わる部分ではないことが発生理由としてあった」と述べた。
◎「増産要請に対応している企業の低薬価品」 投資を下支えする薬価上の措置求める
そのうえで、「原価高騰等の状況、原材料の調達コストの上昇によってさらに採算性が厳しいという状況や傾向が続いている。例えば増産要請に対応している企業の低薬価品目等について限定的に中間年改定の実施如何にかかわらず、投資を下支えいただく措置もご検討いただければ」と訴えた。「必ずしも不採算品再算定の適用品目を拡大したいということはない。必要な品目に適切に対応していただきたいというのが業界の意見だ」と述べた。