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厚労省 生産計画含めた需給モニタリング実施へ 市場全体の供給量を見える化で安定供給に一役

公開日時 2024/10/03 04:52
厚生労働省の「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」は10月2日、医薬品の安定供給に向けて、製造販売業者の生産計画を含めた需給状況を平時からモニタリングする新たな仕組みの構築について議論した。マクロな観点から薬効や成分単位での推移変化を把握することで、市場全体の供給量の適正化・見える化を進めたい考え。限定出荷の解除など適切な企業判断や、供給不安の兆候の迅速な把握につなげることを視野に入れる。厚労省は処方量や投薬・調剤量の把握に電子処方箋データを活用することを提案したが、DPC包括診療分を把握が難しいなど課題も残る。厚労省は費用対効果も含めて、具体的な検証を進め、実現に向けてさらに議論を深める方針。

この日の議論は、供給情報ワーキンググループの議論を踏まえて行われた。厚労省の提案した需給モニタリングをめぐる新たなシステムは、製造販売業者の生産計画や生産量、在庫量、受注量、出荷量に加え、医薬品卸の在庫量・出荷量、医療機関や薬局の処方量、投薬・調剤量を把握するというもの。費用対効果の観点から、安定確保医薬品や感染症対応医薬品に絞り、モニタリングを行う考えを示した。

◎データ活用で可視化 供給不安発生時の市場全体の変化や地域での需給状況“ヒートマップ”も

現段階で想定するデータを活用したモニタリングのイメージも例示した。全体の供給量を製造販売業者が把握できないことが、供給不安の状況把握や要因特定の妨げになっていることが指摘されている。新たな仕組みを活用して、製造販売業者の足下の生産量と在庫量、生産計画など、市場全体の供給状況を把握。これらをグラフにして見える化することで、供給不安発生時の市場全体の変化を把握することができるとのイメージを示した。例えば感染症の流行期に受注量が急速に増加した場合、製造販売業者全体の受注量と発注量を比較することで、流行が落ち着けば受注量が減少し、市場が安定するなどの見通しがつきやすくなる可能性がある。

また、投薬・調剤量と医薬品卸の入荷量を把握することで、マクロで地域の需給状況を把握できる可能性も説明した。例えば感染症の流行する地域では、入荷量を上回る投薬・調剤料となることが想定される。厚労省は、“薬局の入荷量と投薬・調剤料比率ヒートマップ”をイメージとして図に示した。色分けするなどして可視化することで、一目で医薬品不足の緊迫度合いを把握することが可能になり、事前に供給不安の兆候を察知するのに活用することもできるとの考えを示した。

◎電子処方箋データは限界も 川上構成員「変化を捉える“傾き”を検出できる可能性ある」

ただ、システムの実用化に向けて課題も残る。安定確保医薬品については医薬品の需給状況把握のための報告聴取規定がないことから、安定確保医薬品(A/B/C)に報告規定を設けることを想定して法整備も進める考え。ただ、安定確保医薬品は506品目あり、現実的には全品目の対応は難しいことから、実際の対象品目は追って検討を進める方針。

また、システム構築に向けた課題に加え、投薬・調剤量を把握するのに活用する電子処方箋データでは、DPC包括診療分や電子処方箋未導入の医療機関・薬局など把握が難しいデータがある。平川淳一構成員(日本精神科病院協会副会長)は、院内処方での注射薬などの情報が取得できないと指摘。川上純一構成員(浜松医科大医学部附属病院薬剤部 教授・薬剤部長)は、「院内処方の薬剤の使用量を電子処方箋の仕組みにどう取り入れるかという議論もワーキンググループでは行っている」と議論の内容を紹介し、将来的に院内処方のデータも取得できる姿に期待を寄せた。

電子処方箋データでは全体量を把握することができないとの指摘もあがったが、「ある医薬品が通常出荷だったものが限定出荷や出荷停止などに陥ってきたときに変化を捉えるためには、全体量というよりも“傾き”をいかに捉えられるかが重要。変化は十分検出できるという可能性を考えたい」(川上構成員)、「ヒートマップがあれば、感染症のうねりのようなものは参考情報になる可能性はある」(國廣吉臣参考人・日本製薬団体連合会 安定確保委員会供給不安解消タスクフォースリーダー)などの期待を寄せる声もあがった。

◎宮川構成員 製薬企業の生産計画把握の重要性を強調「企業のあり方、見えてくる」

宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、製造販売業者の生産計画を把握することの重要性を強調。「企業は5年も10年も前から日本に薬がどれくらい必要か、平時の状況を把握しながら生産計画を立てている。感染症などがあってもバッファーとして、ある程度余裕のある生産計画を立てているはず。ただ、現在困窮する状況になっているのは何なのか」と指摘。「企業が恣意的、意図的に生産に対しての調整をしている部分があろうかと思う」と述べたうえで、「安定供給マネジメントシステムの中で、生産計画から生産量をディスクローズすることを日薬連も同意してくれた。意図的な限定出荷も見えてくるはず。製造販売業者が受注量という世の中の要請に対し、企業が日本の中でどのようにあるべき姿を見せるのかということが当然見えくるだろう」と指摘した。

國廣吉臣参考人(日本製薬団体連合会 安定確保委員会供給不安解消タスクフォースリーダー)は、「需要に応える我々も、全体の供給量をしっかりわかるようにしていただきたいというのは同じだ。全体がよくわからないこともあって、十分な供給ができずに限定出荷がかかっているような問題を抱えている。川上のところをしっかりやらないといけないと思っている」と応じた。
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