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厚労省 安定供給責任者の設置など製薬企業の体制整備を法令上義務化へ 安定確保会議が議論スタート

公開日時 2024/09/03 06:00
厚生労働省の「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」は9月2日、安定供給責任者の設置など、安定供給確保に向けた製薬企業の体制整備について法令上の義務化に向けて議論を開始した。厚労省は、供給不安報告・供給状況報告や、安定確保医薬品を法令上位置付けることも俎上にあげた。医薬品の安定供給に向けた“マネジメントシステム”として、医薬品の安定供給をめぐる製薬企業の責務を法令上明確にし、実効性を高めたい考え。薬機法や医療法の改正も視野に、制度改正に向けて議論を詰める。構成員からは法制化の必要性を指摘する声が多くあがった。今後、会議を複数回開き議論し、制度改正に向けた関係審議会で議論を進める方針。

◎安定供給責任者 信頼性保証本部、生産本部調達管理本部、営業本部など部署横断で

厚労省は医薬品の安定供給に向けた、“マネジメントシステム”の一環として、「厚労省からの要請等への適切な対応を担保する」観点から、安定供給責任者の設置を法令上義務化することを提案した。

医薬品の品質管理・安全管理をめぐっては、現行の薬機法で総括製造販売責任者(総責)の設置が義務付けられているほか、品質保証責任者(品責)や安全管理責任者(安責)が省令で規定されている。現在薬機法改正に向けた議論が進む中で、品責の法令上規定することなども議論されている。こうした責務は、信頼性保証本部などが担うケースが多いが、安定供給に関する機能(生産計画、原料調達、在庫管理)などは、信頼性保証本部だけでなく、生産本部や調達管理本部、営業本部など、複数の部署にまたがることが多いことも指摘されている。

厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の田中広秋総括調整官は、「企業の事前の対応として、安定供給責任者を置き、生産計画を作るにあたって原材料調達の部局や販売や市場分析を行う部局などを含めて安定供給を徹底し、どう生産計画を作っていくか。原材料の問題に対応できるようにダブルソース化の検討をどう進めるかなど、各企業で取り組んでいただけるよう、安定供給責任者の設置も含めた対応を提示させていただいている」と説明した。

豊見敦構成員(日本薬剤師会常務理事)は、「情報が揃っただけでは、マネジメントということにはならないだろう。実効性のある体制整備をお願いしたい」と要望。総責には薬剤師要件が課されていることに触れ、「企業の中で、ガバナンスをしっかりと行っていただきたいということ。総責については薬剤師がしっかりと進めていく必要がある。その重要性も高まっているのではないか」とも述べた。

◎罰則規定 個人ではなく取締役会の責任を 清田座長「腹を切るのは社長」

法律上の罰則規定についても焦点となることが想定される。原靖明構成員(日本保険薬局協会 医薬品流通・OTC 検討委員会副委員長)は、「罰則規定の有無よりも、法制化すること自体が非常に重要だ」と表明。一方で、安定供給責任が指名された個人の問題となることに懸念を示し、「最終的には取締役会の問題だと思っている」と述べ、責任の所在を明確化する必要性を指摘した。清田浩座長(東京慈恵会医科大客員教授・井口腎泌尿器科・内科 新小岩副院長)は、「当然腹切るのは社長だと思うが、そこまで文章化するかは皆様とご相談ということになろうかと思う」と応じた。

◎製薬企業の義務を課す“マネジメントシステム” 薬機法や医療法の改正も視野

厚労省は、医薬品の安定供給に向けた、“マネジメントシステム”として、①製薬企業における安定供給確保に向けた体制整備、②供給不安の迅速な把握/報告徴収/協力要請、③安定確保医薬品の供給確保要請-の3つの観点をあげた。

安定供給責任者だけでなく、いずれも法令上の規定を視野に入れる。田中総括調整官は、「製薬企業に義務を課すのであれば、当然法律に規定する必要が出てくる。例えば、製造販売業者に対する規制という考え方で薬機法に規定すべきなのか、医薬品の確保と医療提供体制の確保という形で医療法に規定すべきかといった内容については、検討させていただきたい。法制局等への相談も必要になってくるので、法令上の義務として手当が必要だということであれば、事務局で具体的にどの法律に規定すべきかとうことも含めて検討を進めさせていただきたい」と説明した。

◎供給不安報告・状況報告の義務化を検討 供給量の提供義務付けは盛り込まず

供給不安報告をめぐっては、今年4月から従来の報告制度から、今後の供給不足がある場合に早期報告により未然に防止することを目的とした「供給不安報告」と、供給情報の速やかな医療機関への共有を目的とした「供給状況報告」に整理され、対応がなされている。ただ、厚労省の協力要請に基づいており、日本製薬団体連合会(日薬連)の調査と開きがあり、企業側が報告を怠っているケースがあることが指摘されている。このため、法令上、一つの枠組みとして位置付けることで、企業からの報告を徹底させる方針。供給不安の報告を受けた際に、製薬企業や卸に出荷や増産についての依頼、医療機関や薬局に長期処方を控えるよう協力要請を行っているが、こうした対応も法令上、位置付けることを提案した。

田中総括調整官は、「限定出荷のような状況を極力起こさない、起きてしまったときはそれに対して迅速に把握し、厚労省から要請できるようにする。限定出荷が起こらないよう、企業様に適切な体制を整えていただく」と説明。一方で、「企業に供給量の提供は盛り込んでいない」ことも説明し、あくまで体制整備に主眼を置いたものであることを強調した。

◎安定確保医薬品を法令上位置付け 感染症対策物資と同等の措置も

安定確保医薬品については、法令上位置付け、供給不足がある場合、感染症対策物資と同等の措置を講ずることができるようにすることを提案した。感染症対策物資については、国民の生命および健康に重大な影響を与える恐れがある場合、国が増産要請や、生産計画の提出変更を指示でき、正当な理由がなく指示に従わない場合は公表できることが感染症法に位置付けられている。

◎梶山構成員「品質確保が企業にまず対応」 宮川構成員「今さら言うこと自体がおかしい」

今後、製薬企業に義務付ける範囲も議論の焦点となることが想定される。川上純一構成員(浜松医科大医学部附属病院薬剤部教授・薬剤部長)は、法令上の規定の必要性を指摘したうえで、「企業に負担をかける部分もあると思う。ドラッグ・ラグ/ロスの問題もある中で。日本での医薬品開発や製造販売を避けては本末転倒だ。負荷がかかる部分、企業の支援もやっていただきたい」と国に要望した。宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、「財政支援をすれば、企業は安定供給していただけるのか。企業も正直に、どのような支援が欲しいのかってはっきり言っていただきたい」と投げかけた。

梶山健一構成員(日本製薬団体連合会安定確保委員会委員長)は、「財政支援ももちろん大事なところかと思っているが、それ以外にも品質の問題等、色々な問題がある。そういうことに対して、企業並びに団体としてしっかりと対処していく。承認書の自主点検自己点検や供給状況調査をより正確にしていくことをまずしっかりやらせていただくことが大事だと思っている。まず私どもとしてやるべきことをしっかりやる。各企業が果たすべき機能、これをしっかりと今回の議論を経て明確にし、それを各社が対応していく、遵守していくことが大事かなと思っている」と応じた。

これに対し、宮川構成員は、「企業は、品質が悪いものを出すのか、不祥事を起こすのは当たり前なのか。そうではないだろう。それは大前提で、製薬企業としては当たり前だ。今さら、“取り組む”と言うこと自体おかしい」と製薬業界の姿勢に苦言を呈す場面もあった。

◎水谷課長「個々の企業に安定供給義務付けるのは現実的ではない」 体制整備を規定

厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長は、「供給不安は誰にとってもどうしようもない事情で起きていることもある。特に、個々の企業の観点から安定供給そのものを義務付けることは、私どもも現実的ではないと思う。マネジメントシステムの中では、個々の企業における安定供給確保に向けた体制整備をお願いしている」と説明。実効性の観点から法令上の位置づけが必要との認識を示した。

産業構造や薬価の課題などについても厚労省として対応を進めており、「様々な環境整備の一環として大変重要なことだと思っている。引き続き手を打つとともに、進捗を確認しながら、さらにご議論いただいて進めていきたい」とも述べた。

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