NSCLCに対する初の二重特異性抗体・ライブリバントなど新薬3製品承認へ 薬事審・第二部会が了承
公開日時 2024/09/02 04:51
厚生労働省の薬事審議会・医薬品第二部会は8月30日、ヤンセンファーマの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する抗EGFR/MET二重特異性抗体・ライブリバント点滴静注(一般名:アミバンタマブ(遺伝子組換え))など新薬3製品の承認の可否を審議し、承認を了承した。NSCLCに対する二重特異性抗体の承認は国内初となる。
報告品目の8製品も承認を了承した。この中には尿路上皮がん1次治療に対するアステラス製薬の抗Nectin-4抗体微小管阻害薬複合体(ADC)・パドセブ点滴静注用と、MSDの抗PD-1抗体・キイトルーダ点滴静注との併用療法が含まれる。審議品目、報告品目ともに9月中に正式承認される見通し。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽オータイロカプセル40mg(レポトレクチニブ、ブリストル・マイヤーズ スクイブ):「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
ROS1阻害薬。ATP競合性のROS1、TRK A/B/Cを選択的に阻害する経口の低分子チロシンキナーゼ阻害薬で、ROS1またはNTRK融合遺伝子を有するがん細胞の増殖を抑制する。NSCLCは肺がん全体の約85%を占め、その約1~2%が制御不能な細胞増殖をもたらすROS1遺伝子変異を特徴とするROS1融合遺伝子陽性疾患とされている。
用法・用量は「通常、成人には1回160mgを1日1回14日間経口投与する。その後、1回160mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」。
国内では、ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対し、ザーコリカプセル(クリゾチニブ)とロズリートレクカプセル(エヌトレクチニブ)の2剤が承認されている。
海外でオータイロカプセルは、24年6月時点において、ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに係る効能・効果で、3つの国又は地域で承認されている。
▽ライブリバント点滴静注350mg(アミバンタマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
上皮成長因子受容体(EGFR)及び間葉上皮転換因子(MET)を標的とする二重特異性抗体。免疫担当細胞を介して抗腫瘍作用を発揮し、活性化及び抵抗性のEGFR変異、MET変異及び増幅を有する腫瘍を標的とする。
用法・用量は「カルボプラチン及びペメトレキセドナトリウムとの併用において、3週間を1サイクルとし、通常、成人には以下の用法及び用量で点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する」となっており、体重80kg未満と80kg以上に分けて用量が設定されている。
海外では、24年6月時点において、化学療法歴のないEGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに係る効能・効果で、4つの国又は地域で承認されている。
国内でライブリバント点滴静注は、▽EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する経口第3世代EGFR-TKI・ラゼルチニブ(国内未承認)との併用療法、▽第3世代EGFR-TKIによる前治療無効のEGFR陽性NSCLCに対する化学療法との併用療法――でも承認申請中となっている。
▽ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ、同160mgオートインジェクター(ビメキズマブ(遺伝子組換え)、ユーシービージャパン):「化膿性汗腺炎」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(2030年1月19日まで)。
ヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体。IL-17AのみならずIL-17Fも選択的に阻害することが特長で、IL-17Aのみの阻害よりさらに大きな炎症抑制が期待されている。
化膿性汗腺炎に対するその用法・用量は「通常、成人には、1回320mgを初回から16週までは2週間隔で皮下注射し、以降は4週間隔で皮下注射する。なお、投与間隔は患者の状態に応じて適宜2週間隔又は4週間隔を選択することができる」。
海外では、24年6月時点で、化膿性汗腺炎に対する治療薬として欧州の31の国又は地域で承認されている。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽ノボセブンHI静注用1mgシリンジ、同2mgシリンジ、同5mgシリンジ(エプタコグアルファ(活性型)(遺伝子組換え)、ノボノルディスクファーマ):「グランツマン血小板無力症患者の出血傾向の抑制」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤。本剤は現在、グランツマン血小板無力症に対し、「血小板に対する同種抗体を保有し、血小板輸血不応状態が過去又は現在みられるグランツマン血小板無力症患者の出血傾向の抑制」を効能・効果に承認されている。今回、「血小板に対する同種抗体を保有し、血小板輸血不応状態が過去又は現在みられる」の部分が削除され、限定がなくなる。
▽リンヴォック錠7.5mg、同15mg、同30mg(ウパダシチニブ水和物、アッヴィ):「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量医薬品。再審査期間は、残余(2028年1月22日まで)。
JAK阻害剤。アトピー性皮膚炎に対する用法・用量が「通常、成人及び12歳以上かつ体重30kg以上の小児には15mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて30mgを1日1回投与することができる」に変更され、12歳以上かつ体重30kg以上の小児に30mg1日1回投与の選択肢が追加される。
▽①アラグリオ顆粒剤分包1.5g、②同内用剤1.5g(アミノレブリン酸塩酸塩、SBIファーマ):「経尿道的膀胱腫瘍切除術時における筋層非浸潤性膀胱がんの可視化」を効能・効果とする新用量・その他の医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は①②残余(2027年9月26日まで)。
光線力学診断用剤。用法・用量を現在の、膀胱鏡挿入「3時間前(範囲:2~4時間前)」から「2~8時間前」に変更し、投与できる時期を広げる。手術前の投与タイミングが柔軟になり、利便性の向上が期待される。
▽パドセブ点滴静注20mg、同30mg(エンホルツマブベドチン(遺伝子組換え)、アステラス製薬):「根治切除不能な尿路上皮がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。優先審査。再審査期間は残余(2029年9月26日まで)。
▽キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「根治切除不能な尿路上皮がん」を効能・効果とする新効能医薬品。優先審査。
パドセブはネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体(ADC)。キイトルーダはがん免疫療法薬の抗PD-1抗体。今回、根治切除不能な尿路上皮がん(1次治療)に対し、両剤の併用療法を可能にする。
海外では、24年5月時点において、化学療法歴のない根治切除不能な尿路上皮がんに対する併用投与は米国のみで承認されている。
▽①タフィンラーカプセル50mg、②同カプセル75mg、③同小児用分散錠10mg(ダブラフェニブメシル酸塩、ノバルティスファーマ):「BRAF遺伝子変異を有する低悪性度神経膠腫」を効能・効果とする①②新効能医薬品、③新効能・新用量・剤型追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(2033年11月23日まで)。
▽①メキニスト錠0.5mg、②同錠2mg、③同小児用ドライシロップ4.7mg(トラメチニブジメチルスルホキシド付加物、ノバルティスファーマ):「BRAF遺伝子変異を有する低悪性度神経膠腫」を効能・効果とする①②新効能医薬品、③新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(2033年11月23日まで)。
タフィンラーはBRAF阻害剤。メキニストはMEK阻害剤。新効能となる「神経膠腫」は、最も多い小児中枢神経系腫瘍で、小児脳腫瘍全体の約半分を占める。神経膠腫は、低悪性度(グレード1および2)または高悪性度(グレード3および4)のいずれかに分類される。BRAFV600E変異陽性の小児低悪性度神経膠腫(pLGG)は、生存転帰(OS/PFS)の不良と関連し、pLGGの約15%~20%に認められる。
海外では、24年6月時点において、タフィンラー、メキニストの既承認製剤及び小児用製剤は、BRAF遺伝子変異を有する小児低悪性度神経膠腫に係る効能・効果で、それぞれ8つ及び7つの国又は地域で承認されている。また、各小児用製剤は標準的な治療が困難なBRAF遺伝子変異を有する進行・再発の固形腫瘍に係る効能・効果で2つの国又は地域で承認されている。
▽ヌバキソビッド筋注1mL(SARS-CoV-2rS(オミクロン株JN.1)、武田薬品):「SARS-CoV-2による感染症の予防」を効能・効果とする新効能・新用量・その他・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は残余(2030年4月18日まで)。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の組換えスパイク蛋白質(rS)抗原を含有するワクチン。今回、SARS-CoV-2のオミクロン株JN.1系統対応ワクチンを追加する。厚労省の担当者は「ヌバキソビッドは初めての株変更ということで部会に報告した。2回目以降の株変更に関しては部会に報告するという形の審査ではなく、PMDAで審査が終了したら事務局の方で承認の処理をする形で運用している」と説明した。
海外でヌバキソビッドの1価(JN.1)ワクチンは、24年7月末時点で承認されている国又は地域はない。