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アルナイラム・岡田社長 スペシャリティ領域に進出へ 「KAMやMSLは倍増程度まで増員したい」

公開日時 2024/07/29 04:52
アルナイラム・ジャパンの岡田裕代表取締役社長がこのほど、本誌インタビューに応じ、RNAi治療薬・アムヴトラ皮下注について、2024年の後半以降にトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)の適応追加を一変申請すると明らかにした。同社はこれまで患者数1000人未満の希少疾患に対するRNAi治療薬を手掛けてきたが、ATTR-CMと診断されている国内患者数は数千人、潜在患者数は数万人が想定されるという。このため組織の拡大も進める考えで、「フィールドのKAMやMSLは倍増程度まで増員したい」と述べた。同社は今後、MR資格を持つ人などの採用活動を強化する。

アルナイラムは米国マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を構える。2002年設立とまだ若い会社だが、RNAiに基づく医薬品のパイオニアであり、リーディングカンパニーとして知られる。世界初のRNAi治療薬・オンパットロを米国で18年に上市して以来、世界60カ国で5つのRNAi治療薬を発売している。25年末までの年平均成長率40%以上を目標としている。

日本法人は18年7月に設立した。19年にトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)を適応とするオンパットロ、21年に急性肝性ポルフィリン症を適応とするギブラーリ、22年にTTR-FAPを適応とするアムヴトラ――の承認を取得し、自社販売している。現在の社員数は約80人。なお、アルナイラムが創製したLDLコレステロール低下siRNA製剤・レクビオはノバルティス ファーマが販売している。

◎スペシャリティ領域や一般的な疾患にまでRNAi治療薬を届けたい

岡田社長は日本法人の成長戦略について、「RNAi治療薬は医療の未来を大きく変革する可能性を秘めたテクノロジープラットフォーム。当社は、現在の希少疾患からスペシャリティ領域に、さらにはより患者さんの多い一般的な疾患にまでRNAi治療薬を届けていきたいと考えている」と話してくれた。ここでいう希少疾患は患者数1000人未満の疾患で、スペシャリティ領域は患者数が数千人から数万人の疾患のこと。日本で自販している3剤はいずれも希少疾患に該当する。

このようななかアムヴトラで今年6月、ATTR-CMを対象とする国際共同第3相試験(HELIOS-B)で主要評価項目及び全ての副次評価項目を達成するなど「非常にポジティブなトップラインの結果」(岡田社長)が得られた。このため24年後半以降に米国、欧州、日本でATTR-CMの適応追加を申請することがグローバルに決定した。

岡田社長は、「当社が現在取り扱っている3製品は、遺伝性の希少疾患という非常に限られた治療選択肢しかないか、治療選択肢が全くない患者さんに希望をもたらす画期的な治療薬。3製品の提供を通じて、結果的に日本法人は2ケタ成長を続けており、組織の能力も向上してきた」と国内ビジネスの現状を説明した。そして、「次の成長マイルストーンとして、アムヴトラのATTR-CMの適応追加を目指す。これでスペシャリティ領域に参入し、2ケタの成長を継続していく」と述べ、営業、メディカル、マーケティング、開発などの各部門で増員する計画を披露した。

◎「患者さんのためにchallenge acceptedの精神で課題に挑める方」求む!

同社では、医薬情報担当者のことを「MR」とは呼称せず、キーアカウントマネジャー(KAM)と呼んでいる。取扱製品が遺伝性疾患に対するRNAi治療薬ということもあり、同社は医薬情報担当者に対し、地域でキーとなる医療機関を中心に担当エリア全体を自ら市場分析するなどして行動計画を策定・実行し、PDCAサイクルを回すことを期待している。このためKAMと呼称する方が適切と判断したという。

岡田社長はKAMの増員にあたり、「医薬情報担当者に変わりはないが、自ら考え、自らPDCAを回し、自ら行動できる方を求めている」と述べた。さらに、「当社では『challenge accepted』という言葉がキーワードになっている。これは『誰もが不可能だ、非現実的だという既成概念に果敢に挑みます』ということ」だとし、「患者さんのためにchallenge acceptedの精神で課題に挑める方、画期的なRNAi治療薬を患者さんにどのように届けるかということに挑める方に、当社は向いていると思う」と求める人財像を示した。

法性哲夫・人事部長は、様々な部門の採用活動を行っていくとした上で、「共通項として重視しているのは、主体性の高い人財を採用したいということ」だとし、「カジュアル面談も非常に頻回に行っている」と述べた。

◎スペシャリティ領域の自販製品増やす 1社流通かは明言せず

アムヴトラのATTR-CMの適応を含め、スペシャリティ領域製品も自社販売していくのかも気になるところ。この点について岡田社長は、「開発パイプラインごとに最適化を図るが、自社で商業化する割合は増やしていきたい」と述べ、自販製品を増やしていく方針を示した。アムヴトラのATTR-CMは自販で展開する。

また、現在の取扱い3製品はスズケングループの1社流通になっている。これは対象となる症例数が限られており、在庫の偏在を最小限にして安定供給を実現するため。今後手掛けるスペシャリティ領域製品の流通戦略に関しては、「(スズケングループとの)当社設立以来のパートナーシップは大切にしながら、製品ラインナップの拡充等の状況を鑑みながら流通の最適化に向けて取り組んでいきたい」と話すにとどめた。

◎高血圧、アルツハイマー病など対象に国内開発

なお、岡田社長によると、公表している日本も参加する開発パイプラインは、アムヴトラのATTR-CMの適応追加(P3終了)のほか、▽心血管リスクの高い高血圧を対象疾患とするジレベシラン(グローバルP2)、▽アルツハイマー病を対象疾患とするMivelsiran(グローバルP1)、▽重症筋無力症及び発作性夜間ヘモグロビン尿症を対象疾患とするCemdisiran(各グローバルP3)、▽アムヴトラの後継品となる「ALT-TTRsc04」(グローバルP1)――となる。このうちジレベシランはアルナイラムとロシュが共同開発し、日本の商業化権は中外製薬が持っている。

RNAi治療薬は、細胞内で遺伝子が自然に制御されるRNA干渉(RNAi)という仕組みに基づく革新的な医薬品。疾患の原因となる特定の遺伝子を沈黙させることで、タンパク質の合成を阻害する。低分子化合物やモノクローナル抗体などの多くの医薬品よりも上流で作用する。岡田社長は、疾患を水道の水漏れに例えて、「水漏れによって濡れた床を掃除するのではなく、水漏れしている蛇口を修理するイメージ」と解説。「我々としてはRNAi治療薬の可能性をさらに引き出して、治療の選択肢が非常に限られている患者さんの生活の質が向上できるように取り組みたい」と強調した。

インタビューの詳細はミクス9月号に掲載します。
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