アルフレッサHD・福神副社長 “少ないMR”の補完ニーズに対応 グループ6社にソリューション機能設置
公開日時 2024/05/16 04:50
アルフレッサホールディングス(HD)の福神雄介代表取締役副社長は5月15日の2023年度(24年3月期)決算説明会で、「製薬企業のニーズが多様化している。少ないMRを補完する(卸の)機能といった、新しいニーズが出てきている」との認識を示した。4月に医療用医薬品卸売事業を展開するグループ6社(アルフレッサ、四国アルフレッサ、ティーエスアルフレッサ、明祥、琉薬、東北アルフレッサ)にこうした多様なニーズに応えるソリューション機能を設置したことを紹介。「今後も製薬企業から選ばれ続けるということの重要性に鑑み、こうした取り組みを4月以降、さらに強化している」と述べた。
開発パイプラインや製品ラインナップの変化、またはコロナ禍を経験して、MRの適正人員数への調整を行う製薬企業が少なくない。福神副社長は、「これまでは安定供給を行う卸の基本的な機能を評価いただくことが多かった」とした上で、「昨今は少ないMRで流通を行いたい、販売を行いたいとの製薬企業の新しい事業体制に合わせて、私ども流通に期待する機能も多様化している。少ないMRを補完する機能といった、新しいニーズが出てきている」と話した。
荒川隆治代表取締役社長も、多様な顧客ニーズに対しソリューションを提供していくことが「選ばれる要素であることは間違いないが、そのベースにあるのは価格をしっかり守ることだ」と強調した。そして、「一つひとつの製品価値に見合った価格を提供していく価格形成プロジェクトを当社やアルフレッサが中心となって、グループ全体で統一的に今後も進めていく」と述べた。
アルフレッサグループでは医師コミュニティの構築や多職種連携、医療に関連するステークホルダーをつなぐことなどを目的とした様々なデジタルツールを用意している。この中には医師とMR・MSをつなぐ医薬情報収集ツール「Mydodes」もある。24年度を最終年度とする中期経営計画では「デジタルツールを活用した『つなぐ活動』でサスティナブルな社会へ」を掲げており、メーカーの新たなニーズに様々なデジタルツールも駆使して対応していく考えだ。
◎23年度の医療用医薬品等卸売事業は増収増益 営業利益率1.30%、0.17ポイント増
23年度の医療用医薬品等卸売事業の業績は、売上高は前年度比6.0%増の2兆5399億3200万円、売上総利益は7.4%増の1513億7600万円、販管費は3.8%増の1182億8400万円、営業利益は22.7%増の330億9100万円――だった。売上総利益率は5.96%で0.08ポイント改善。販管費比率は4.66%で0.10ポイント低下。結果、営業利益率は1.30%で0.17ポイント増加した。
カテゴリー別の売上構成比は、新薬創出等加算品が38.9%(前年度35.2%)、特許品・その他が37.9%(38.1%)――で、特許期間中の製品群の合計で76.8%を占め、前年度から3.5ポイント伸びた。一方、長期収載品は11.3%(14.2%)、後発品は11.9%(12.5%)――でシェアはさらに低下した。
同社は、中間年改定によるマイナス影響はあったものの、市場が5.4%伸長したことに加え、「一部製薬企業の流通体制の変更や売上総利益率の改善に努めた」ことで増収、大幅増益を達成したとしている。
◎メーカー別売上構成比 1位は第一三共 2位GSKと3位MSDの伸び大きく
同社は流通体制を変更した一部製薬企業の社名など詳細は明らかにしていない。ただ、この日に発表した決算資料の中の主要メーカー別の売上構成比を見てみると、1位は引き続き第一三共で売上構成比は前年度比0.4ポイント増の6.0%だった。2位はグラクソ・スミスクラインで1.9ポイント増の4.9%、3位はMSDで0.9ポイント増の4.0%、4位は中外製薬で0.6ポイント減の3.6%、5位は武田薬品で0.4ポイント減の3.5%――だった。
売上構成比トップ10社の中で前年度から0.5ポイント以上伸びた企業はGSKとMSDの2社のみで、構成比の伸び方も突出していた。
◎24年度予想 物流センターの減価償却費や人件費等で販管費増、営業減益に
24年度(25年3月期)の医療用医薬品等卸売事業の業績予想は、売上高は4.1%増の2兆6430億円、売上総利益は5.0%増の1589億円、販管費は6.7%増の1262億円、営業利益は1.2%減の327億円――とした。売上総利益率は6.01%で0.05ポイント改善、販管費率は4.77%で0.11ポイント増となり、営業利益率は1.24%で0.06ポイント悪化すると予想した。
24年度の外部環境要因として、4月から通常の窓口負担となった新型コロナ治療薬の需要減が指摘されている。ただ、同社の場合、23年度に新型コロナ治療薬の売上が相対的に大きくなかったことから、24年度の同治療薬の需要減の影響は「限定的」とみており、結果として医療用医薬品等卸売事業は増収と予想した。利益面は、物流センターへの投資による減価償却費や人件費等の販管費増加の影響で、営業減益と予想した。