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小野薬品・相良会長 米デシフェラ買収で欧米の開発販売力強化 「パテントクリフ対応」と「成長加速」実現

公開日時 2024/05/07 04:51
小野薬品の相良暁代表取締役会長CEOは4月30日、米バイオ医薬品企業デシフェラ・ファーマシューティカルズの買収に関する説明会で、本買収の戦略的な意義は「パテントクリフによる収益減少への対応」と、欧米での開発・販売力強化による「グローバルスペシャリティファーマへの成長の加速」だとの考えを示した。2028年以降の段階的な“オプジーボクリフ”対策と見る向きもあるなか、相良会長は「オプジーボ(クリフ)だけに照準を合わせた買収ではない」と指摘。「もう少し早い時期から売上計上できるパイプラインを外から取る必要があった。今回はその第一歩」と説明した。24年度以降ほぼ毎年発生する収益減少のイベントに、今回獲得する欧米などで販売中の抗がん剤や後期開発品を含めて対応し、持続的な成長を実現する。

◎総額24億米ドルで買収へ 24年度第2四半期中に買収完了予定

小野薬品は4月29日(日本時間)にデシフェラを総額約24億米ドルで買収する契約を締結した。デシフェラの全株式を1株当たり25.60米ドルで現金で取得する。これは4月26日の終値に対して74.7%、同日より過去30日間の売買高加重平均価格に対して68.8%のプレミアムを加えた価格となる。当局承認などの諸条件の充足を前提に、24年度第2四半期中の買収完了を目指す。デシフェラは買収完了後も小野薬品の完全子会社として存続し、当面は独立して事業を運営する。なお、小野薬品にとって過去最高額の企業買収となる。

◎滝野社長 抗がん剤キンロックとVimseltinibで計10億米ドルのポテンシャル

デシフェラ(本社:米国マサチューセッツ州ウォルサム)は、がんを対象とした革新的な医薬品の研究・開発・販売に注力するバイオ医薬品企業。米国と欧州6カ国で自社販売体制を構築している。

パイプラインには自社創製の経口キナーゼ阻害薬からなる5つの製品・開発品を持つ。このうちKIT阻害薬・QINLOCK(キンロック、一般名:Ripretinib)は、唯一の消化管間質腫瘍(GIST)の4次治療の薬剤として欧米など40か国以上で販売しており、23年売上は1億6300万ドル。特定の遺伝子変異(c-KIT exon11+17/18変異)を持つ2次治療で第3相臨床試験段階にあり、米FDAから画期的治療薬に指定されている。

キンロックに加えて開発後期にあるのがCSF-1R阻害薬・Vimseltinibとなる。Vimseltinibは腱滑膜巨細胞種(TGCT)を対象とした第3相臨床試験(MOTION study)で主要評価項目及びその他副次的評価項目を達成。米国で24年第2四半期、欧州で第3四半期の申請を予定している。小野薬品は今回の買収によって重点領域のがん領域で製品及び申請間近の後期開発品も獲得することになり、短中期的なグループの収益増加も期待する。小野薬品の滝野十一代表取締役社長COOは、「キンロックとVimseltinibの2剤で、全世界で10億米ドルのピーク売上のポテンシャルがある」と高い期待感を示した。

◎「グローバルスペシャリティファーマへの成長を加速させるドライバーのひとつ」

早期臨床試験段階には、Vimseltinibの慢性移植片対宿主病(cGVHD)の効能追加のほか、▽KRAS G12C変異陽性がん及びGISTを対象疾患とする「DCC-3116」、▽がんを対象疾患とする「DCC-3084」、▽GISTを対象疾患とする「DCC-3009」――の3化合物がある。これら計5つの製品・開発品はいずれも、キナーゼのスイッチ領域および活性ループに結合し、不活化状態のままになるようにカギをかけるコンセプトの「スイッチコントロールキナーゼ阻害薬」だという。

滝野社長は、デシフェラが持つ5つの製品・開発品や、欧米での開発・販売実績及び自社販売体制、独自のキナーゼ領域のプラットフォームを引き合いに、「当社が目指すグローバルスペシャリティファーマへの成長を加速させるドライバーのひとつになり得るものとして期待している」と強調した。

◎オプジーボ ロイヤルティ収入が24年から段階的に減少 特許切れは北米28年、欧州30年、日本31年

小野薬品にとって抗PD-1抗体・オプジーボは国内売上約1500億円、関連のロイヤルティ収入は計1300億円超の最主力品。売上2位はSGLT2阻害薬・フォシーガで23年度売上予想は750億円となっている。しかし、24年度以降、両剤を中心に、売上収益にマイナスインパクトを与えるイベントが相次ぐ。

オプジーボに関しては、24年からPD-1関連ロイヤルティ収入が段階的に減少し、30年にゼロとなる見通しだ。米メルクの抗PD-1抗体・キイトルーダの販売許諾に係るロイヤルティ収入の料率が、23年12月までの全世界売上の1.625%から、24年1月以降0.625%に引き下げられた。スイス・ロシュからの抗PD-L1抗体・テセントリクに係るロイヤルティ収入も、料率は非開示だが、1月から率が下げられた。そして、メルク、ロシュからのロイヤルティ収入は26年末で終了する。

オプジーボの特許切れは28年の北米を皮切りに、30年に欧州主要国、31年に日本を予定する。これに伴いパートナー企業の米ブリストル マイヤーズ スクイブからのロイヤルティ収入も28年から減少し、30年にゼロとなる。

◎25年度にフォシーガの2型糖尿病の特許切れ 26年度までにグラクティブ特許切れ

オプジーボ以外では、25年度にフォシーガの2型糖尿病の特許切れ、25~26年度に年間売上200億円強の2型糖尿病治療薬・グラクティブの特許切れ、28年度にフォシーガの1型糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病(CKD)の特許切れを迎える見通しだ。

相良会長はデシフェラ買収の説明会で、「今年ぐらいからマイナス要因が段階的に出てくるという現実ではある」と述べた。小野薬品はこれまでに、オプジーボクリフを乗り越えて更なる成長を実現するため、欧米市場での複数製品の自販に活路を見出す方針を掲げ、体制の構築を急いでいる。欧米自販の第一号製品は26年の抗がん剤・ベレキシブルとなる予定。ただ、24年度から減収イベントが相次ぐこともあり、デシフェラの買収により獲得する製品や後期開発品での短中期的な収益も期待する。
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