厚労省・水谷産情課長 シーズの実用化「アーリー段階を厚労省として支援」 創薬力構想会議の議論を報告
公開日時 2024/02/29 04:52
厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長は2月28日に開かれた「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」で、創薬力強化に向け、「私どもが今持っているツール、あるいは新たなツールを考えながらアーリーな段階を支援していく」と厚労省のポジショニングを説明した。ドラッグ・ロスが指摘され、創薬力強化の必要性が指摘される中で、内閣官房に「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」が設置され、議論が進められていることを踏まえたもの。
厚労省産情課はこの日の有識者検討会に、創薬力強化に向けた動きとして、内閣官房の「創薬力構想会議」がすでに2回の議論を行ったことを報告した。昨年6月に閣議決定された骨太方針に、「新規モダリティへの投資や国際展開を推進するため、政府全体の司令塔機能の下で、総合的な戦略を作成する」と明記されており、この方針に基づいて議論が進められている。水谷課長は、「研究から開発、製品製造へのグローバルな創薬エコシステムの育成に向けた支援や、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス問題への対応などについて議論を行っている」と説明した。骨太方針への反映を目指し、春から夏頃を目途に中間とりまとめを行う方針。
◎香取構成員「薬価抜きで創薬力強化の議論はできない」 厚労省のスタンスを問う
一方で、創薬力強化をめぐっては厚労省だけでなく、文科省、経産省、内閣官房など複数の省庁を跨ぐ課題となっている。香取照幸構成員(兵庫県立大大学院社会科学研究科特任教授)は、「(創薬力構想会議の中間とりまとめの)結局受け皿はどこになるのか。全体として考えれば、アーリーステージは文科省だし、その後のステージは経産省がかかわっている。そこでの議論と全体としての総合対策を考えている医政局、厚労省との関係はどうなるのか」と質した。さらに、「研究開発でどう支援を行うのか、ベンチャー支援をどうするのかもあるが、この話の最後は薬価算定、値決めの話になってくる。議論の仕方がどうなるのか難しいと思うが、立ち位置をはっきりさせておかなければいけないのではないか」と指摘し、厚労省の立ち位置について見解を求めた。
◎臨床研究に向けた環境整備、新規モダリティに対応できる製造設備、人材確保も論点
これに対し、水谷課長は、「シーズを創薬に結び付けていくために現在でも、文科省ではアカデミアの研究をいかに実用化に結び付けていくかという観点からの支援を行っている。経産省では、ベンチャーキャピタルをいかに後押ししていくかという観点からの支援を行っている」と説明。創薬力構想会議では「各省の取組を念頭に置きながら、アカデミアのシーズをどのように創薬に結び付けていくかという観点からご議論していただいている」と説明した。続けて、「例えば、治験、あるいは臨床研究に向けた環境整備や、バイオなどの新規モダリティに対応できる製造設備、あるいは製造できる人材の確保も論点だと思っている」と述べ、創薬力構想会議でもこうした議論が進められているとした。
そのうえで、「薬価の問題に直接言及するような形で深い議論が行われるという状況にはないものと認識しているが、私どもとして、シーズをいかに実用化に結びつけていくか、そして、臨床研究、治験等の環境整備、そして製造設備、人材をどのように確保していくか、幅広い視点からご議論いただきながら、おまとめをいただければ、内閣官房を中心として、厚労省の他に文科省、経産省が連携して対応する」と話した。
これに対し、香取構成員は、「(創薬力構想会議では)早期臨床や、アカデミアから(実用化へと)つなぐところの支援がすごく弱い、あるいはパイプラインにつなげていくところの支援が非常に難しいというのが大体皆さん同じような意見を出されていたと思う」と指摘。「個別にそういう話になってきたときに、結局厚労省に落ちてくるので、そこをどう受け止めて議論するのか」と再び質した。
水谷産情課長は、「アーリーな段階に対する支援として、臨床研究に向けた環境の整備や製造設備、人材の整備にどのような支援ができるか。そして、アーリー段階のシーズを実用化に結びつけていく観点において、早い段階から実用化に視点を置いた支援や取り組みが必要だということが、これまでの創薬力構想会議の中でも議論として出てきている」と説明。「ベンチャーキャピタルを含めた支援や、製薬企業が支援していくという形もあるかと思う。そうした様々な主体がアーリーな段階に対し、どのように手を差し伸べていけることができるか。私どもとして今持っているツールあるいは新しいツールを考えながら、これを支援していく」と述べた。