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中医協 高額医薬品への費用対効果評価の積極的活用が論点に 価格調整に配慮求める声も

公開日時 2023/09/14 04:50
厚労省は9月13日の中医協費用対効果評価専門部会に、高額医薬品について費用対効果評価をより積極的に活用する観点から価格調整範囲の条件のあり方について論点にあげた。厚労省は、市場規模が1000億円超となり、市場拡大再算定が適用された品目が一定数存在する一方で、すでに評価を終えた品目の価格調整率は平均マイナス3.2%にとどまっているなどのデータを示し、調整の割合が少ない傾向にあると指摘。対象範囲拡大に賛同する声が診療・支払各側からあがった。ただ、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「もし広げる場合には、影響が大きくなりすぎないよう、価格調整範囲自体の配慮や、引き上げ幅や引き引き下げ幅の上限設定などの対応は必要」と慎重な対応を求めた。

◎評価した28品目の価格調整率 平均値はマイナス3.2%、マイナス3.2%、中央値でマイナス2.8%

費用対効果評価は全体の費用を比較して効果の評価を行っているものの、価格調整に際しては、有用性加算などの範囲で実施されている。費用対効果評価専門組織が7月12日に提出した意見書では、現時点では評価時点の分析対象と価格調整の対象範囲が異なっている状況にあることが指摘されている。これを受けて開かれた費用対効果評価専門部会では、「価格調整の対象範囲は、加算部分に限らずより広い費用対効果が同等になるように調整すべきではないか」などの声が診療・支払各側からあがっていた。

厚労省は、評価を終了した28品目における価格調整率の平均値がマイナス3.2%、中央値でマイナス2.8%とのデータを提示した。一方で、市場規模が1000億円超となり、市場拡大再算定の対象となった品目が一定するあるとして、高額医薬品に対する費用対効果評価の積極的活用に向けた条件を論点にあげた。

◎診療側・長島委員「議論するには資料が不足」 詳細データ求める

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「本制度をより積極的に活用するという事務局の提案については理解するが、議論するには資料が不足している。調整範囲を議論するにあたり、費用対効果の対象となった品目が実際にどの部分、例えばどの加算、営業利益などで調整を受けたのかという点を確認する必要がないか」と述べ、議論に供する詳細なデータを求めた。

診療側の森委員は、「対象範囲を広げることについては、高額医薬品に該当するかどうかで調整範囲が変わってしまうため、影響が非常に大きくなる。ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスにつながらないよう慎重な検討が必要」と強調。そのうえで、「もし広げる場合には、影響が大きくなりすぎないよう、価格調整範囲自体の配慮や、引き上げ幅や引き引き下げ幅の上限設定などの対応は必要と考える」と述べた。

診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、費用対効果評価について、「超高額医薬品が出たときに市場がどこまで拡大するか。それに対して安全弁という意味があったと思う」と述べた。そのうえで、現行では価格調整の幅が小さいことに触れ、「高額な薬剤等が出てきた場合にやはりここが安全弁になるように少し積極的な範囲を広げると、今後検討する今後検討すべきではないか」と述べた。

◎支払側・松本委員「踏み込んだ見直し、行ってもよい時期に来ているのでは」

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「国民皆保険制度の持続可能性とイノベーションの評価を両立する観点、さらには費用負担の立場から見て納得性や合理性のある価格を設定する観点から、費用対効果評価は極めて重要な仕組みというふうに認識している。一定程度の事例や経験が蓄積されたことも踏まえて、24年度の制度改革において専門組織の意見も踏まえまして、踏み込んだ見直しを行ってもよい時期に来てるんではないか」との基本スタンスを示した。

そのうえで、価格調整範囲については「加算部分に限らずに、より広い範囲を調整の対象にすべき」と指摘。「費用対効果評価の結果を、保険償還の判断に用いないということであれば、費用対効果が同等になるように価格調整をすべきだということを改めて強調したい」と述べた。

◎価格引上げの条件緩和に理解の声も

費用対効果評価には、比較対照品目に対し効果が増加し、費用が削減する場合(ドミナント)などで、価格引上げることも盛り込まれている。製薬業界の意見陳述では、要件の緩和が要望されている。診療側の森委員は、「業界の意見陳述でもあった通り、日本人を含むアジア人を対象とした集団において統計学的に示されていることなど、現行の条件の一部撤廃による緩和は必要な対応と考える」と述べた。「緩和によって、企業の新薬開発等にどのような影響があるのか、財源にどのような影響があるのかを見つつ判断していくもので、厚生労働省においては、関係団体の意見を踏まえて、具体的な対応の検討をお願いしたい」と述べた。

島弘志委員(日本病院会副会長)は、「ドミナントと評価された品目に関して、あえて価格を引き上げるというよりもむしろ、学会等通じて非常に評価が高いということを報告するというような形の方が非常に対応としてはいいのではないか」と述べた。

◎介護負担の軽減で「研究踏まえた検討」求める声 

製薬業界が要望する介護負担の軽減等を評価する仕組みの検討についても議論の俎上に上った。介護費用の分析について現行ガイドラインでは、「公的介護費へ与える影響が評価対象技術にとって重要である場合には、公的介護の費用を含めた分析を行うことができる」とされているが、これまで介護費用を含めた分析は行われていない状況にある。なお、これまで介護費用を含めた分析がなされた品目がない理由を問われた福田敬参考人(保健医療科学院センター長)は、「介護費用を含めた分析が基本分析として意思決定にかかわるものではないということがあると思うが、それ以上にこれまで選ばれた疾患の中で特に介護費用への影響を考慮するような考え方を企業の方で取る品目がなかったということかと理解している」と説明した。

診療側の長島委員は「介護費用の取り扱いについて介護費を含めた分析についての研究の状況を見て判断する必要があると考える」と述べるなど、研究の状況を注視すべきとの意見があがった。診療側の池端委員は、「いずれ医薬品等がADLにどう効果を上げたか、あるいは緩和ケアとしてどう効果が認められたかということも評価の対象にすべきということは、ぜひ前向きに、積極的に研究していただければ」と述べた。

◎支払側・松本委員「介護費用軽減を医療保険の財源で評価することが妥当なのか」

一方で、支払側の松本委員は「研究自体は進めるべきであると考えるが、技術的に可能だとしても、介護費用の軽減を医療保険の財源を使って評価することが果たして妥当なのかという根幹の考え方にかかわるところで深い議論が必要だ。現時点では少し現実的ではないというふうに指摘させていただく」と釘を刺した。


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