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厚労省・薬事検討会が議論開始  オーファン指定の基準明確化、早期化で「3割増」と試算

公開日時 2023/07/11 06:15
厚生労働省の「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」は7月10日、ドラッグ・ロスの懸念解消や小児医薬品の開発促進に向けて、薬事規制のあり方について検討を開始した。希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定をめぐり、基準の明確化や指定の早期化などを大筋で了承した。指定要件の明確化などで、厚労省は指定数が「30%程度」増加するとの試算も明らかにした。一方で、オーファン指定による優遇措置の一つである、優先審査については、PMDAの審査体制拡充までの間は、要件緩和により対象となった品目について対象としないことも提案されたが、これに対しては、PMDAの審査体制の早期拡充を求める声が相次いだ。検討会では、年末から年度内に取りまとめを行う。運用を開始できるものは取りまとめを待たずに実施する方針で、通知やQ&Aなどを通じて改善を図る考え。

◎城医薬局長「複合的な要素を一つひとつすべての分野で整合的に解決することが必要」

検討会は厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」で指摘された薬事の課題を検討する目的で設置された。城克文医薬・生活衛生局長は、「供給不安やドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスなど課題の要因は必ずしも単一のものではないと考えている。我が国の市場の成長性、創薬環境、薬事制度、その他様々な要因が複合的に影響していると考えている。薬事制度上の対応だけで課題が解決するということではないが、複合的な要素のそれを一つひとつ全ての分野で整合的に解決していくということが必要だろうということで、そうした観点から、薬事制度についても検討をお願いしたい」と述べた。

◎オーファン指定 指定要件明確化や指定の早期化、優遇措置の見直しを提案

この日は論点の一つに、「希少疾病用医薬品の指定」があがった。希少疾病用医薬品指定制度は、国内の対象患者数が5万人未満であることに加え、「医療上の必要性」、「開発の可能性」が要件となっている。指定された医薬品については優先的な治験相談や優先審査の実施、申請手数料の減額、試験研究費への助成金交付、税制措置上の優遇措置、研究開発に関する指導・助言などの優遇措置が設けられている。

厚労省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課は、指定要件の明確化や指定の早期化、それに伴う優遇措置の見直しを提案した。

希少疾病用医薬品では患者数が要件となることから、特定の疾患の患者数に対し、医学薬学上の明確な理由なしに、“重篤な”や“ただし書き”などの活用で患者数を5万人未満と計算する“輪切り要件”が認められていない。現行制度下では、厳格に運用されているが、「例えば、年齢層(小児を含む)、治療ライン、リスク分類、投薬の必要性等を含め、医学薬学上の検討に基づき、高いアンメットニーズがありつつも開発が進んでいない範囲に限定した対象疾患」については輪切りに該当しないことを明確化する方針を示した。

要件の一つである「医療上の必要性」は、「代替する適切な医薬品又は治療方法がないこと、又は既存の医薬品等と比較して著しく高い有効性又は安全性が期待されること」とされている。今回の提案では、代替薬がないことに加え、「既承認薬による治療法がいずれも予後不良の場合」など、複数の治療選択肢が必要とされている場合も要件に該当することとした。投与環境や医療環境により、既存薬の投与が難しい場合もこの要件に該当する。有用性の判断についても、「新規作用機序であることや、非臨床データ等に基づき有用性が期待できることをもって、要件に該当」とし、「必ずしも日本人のデータは必要ない」ことも提案された。また、“著しく高い”有効性・安全性については、ガイドライン上での優先順位が明確に定められている場合や、安全性の観点では添付文書で明らかに異なる記載がなされている場合などを含める考えも示した。

◎指定前倒しを提案 要件外れた品目の取り消しも明確化へ

もう一つの要件である、「開発の可能性」については、国内で開発できる体制、計画を有しているかを確認する方針を示した。具体的には、プロトコルは不要とし、臨床試験の計画の概観が把握できる程度のものが示されれば十分とする考え。開発体制としては、第1相臨床試験の実施に必要な非臨床試験、GLPレベルでの動物実験が概ね実施される程度の段階であれば要件を満たすこととして、指定を早期化する方針を示した。

一方で、指定の早期化により、当初は要件を満たしたものの、開発の進行に伴って要件から外れたものについては、取り消しを行う方針も示した。具体的には、「臨床的位置付けが同様で、代替薬となり得る医薬品が承認された場合」、「臨床試験で達成基準を満たさなかった場合」、「安全性を根拠に指定された場合であって、開発の進展に伴い指定の根拠とした安全性上の優位性を確保できなくなった場合」をあげた。

指定要件の見直しに伴って品目の増加も見込まれる中で、優先審査品目も増加する。このため、PMDAの体制強化の必要性も指摘。体制強化が実現するまでの間、優先審査は現行の対象品目に留め、新たに対象となる品目については他の優遇措置のみが適用されることを提案した。

◎オーファン指定の取り消しめぐり業界側が反発「非常に厳しい内容」

要件の緩和をめぐっては、オーファンなどから開発をはじめ、患者数の多い疾患に開発を進めることが製薬企業の「常套手段」となる中で、どこまで認めるべきかが議論となった。例えば肺がんなどで最終的にはファーストラインでの開発を見込み患者数が多いものの、開発当初はラストラインで開発が進められるケースもあり、今後、こうした細部についても詰めていく方針が示された。

柏谷祐司構成員(日本製薬工業協会(製薬協)薬事委員会委員長)は、要件の取り消しに強く反応。「指定の早期化をしていただくので、取り消しは仕方ないステップになるとは思っているが、“臨床的位置付けが同様で、代替薬となり得る医薬品が承認された場合”、即座に指定を取り消すというのは企業側にとっては非常に厳しい内容だ。ここのところは少し考え直しが必要ではないか」と述べた。

事務局側は、企業の予見可能性に理解を示したうえで、ファーストインクラスの薬剤が承認された時点ですでに承認申請が行われているものはオーファン指定を継続することなどの考え方も示した。一方で、「救済の範囲を広げすぎると、今回その指定を早期化したこととのバランスが取れなくなってしまうので、そこはある程度、厳格な運用も必要ではないかと思っている」と理解を求めた。欧州でも、承認申請段階で約1割の品目でオーファン指定が取り消されているという。

これに対し、柏谷構成員は、「承認された先行品目と比較して、まだ申請されてない品目であってもその有効性がかなり高いと思われるものに関しては、オーファンの指定を継続していただくような議論をまず持っていただきたい。そういうステップが必要なのかなと思っている。いきなり指定解除というのは避けていただきたい」と再度訴えた。厚労省側は、今後製薬業界側の意見も踏まえて検討を進める形で引き取った。

◎PMDA体制拡充求める声も

また、PMDAの体制拡充が求められる中で、「体制強化をいつまでに行うのか明示し、そこからは、優先審査も行うというところを明示していただかないと、何も変わってないように見えてしまう」(芦田耕一構成員・INCJ 執行役員ベンチャー・グロース投資グループ共同グループ長)などの意見があがった。

業界代表の柏谷構成員は、「これだけは業界として言っておかないといけない。中止基準というのが新たに設けられるため、業界側としては優先審査の対象品目がそれほど増えるかについて懐疑的に思っている。優先審査品目が急激に増えることがなければ、おそらく優先審査9か月は維持できるのではないかと思っている。新たな制度になった場合どれだけ優先審査品目が増え、どれだけPMDAの工数が影響を受けるのか、具体的なデータを示したいただきたい」などと訴えた。

事務局側は、優先審査品目が増加することで優先相談などの業務も増えることを指摘。「一つの目安」と断ったうえで、オーファン指定の取り消しなどの影響もうけるものの、「過去にオーファンの指定について相談を受けたが指定されなかったものの理由を分析し、今回の指定要件見直しに当てはめた試算を行ったところ、30%程度指定は増えるのではないか」との試算を示した。一方で、審査については要件の見直しにより変化がないことから、審査にかかわる工数自体は下がらないことも説明し、PMDAの審査体制強化の必要性を強調した。

◎清田浩座長 再三、要件緩和訴える業界側に「くどい」と苦言も

この日の議論では、発言のない構成員もいる中で、製薬業界がひとつの議題について複数回、要件緩和を訴えて同じ内容の発言する場面が頻発。薬食審・医薬品第2部会の部会長も務める清田浩座長(井口腎泌尿器科・内科 新小岩副院長)から、「企業側が必死に緩和しろとくどい。1回1回で済ましていただきたい」と苦言を呈する場面もあった。


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