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財政審建議 24年度改定へ「慎重な議論」求める リフィル処方箋の適正化未達は「改定で差し引きも」

公開日時 2023/05/30 04:52
財務省の財政制度等審議会(十倉雅和会長)は5月29日、建議を取りまとめ、鈴木俊一財務相に手渡した。建議では、少子化対策を「国家の命運を左右する取組」と重要性を強調した。財源が焦点となるなかで、「医療・介護など社会保障分野の歳出改革を断行する」必要性を強調。2024年度に予定されるトリプル改定については、「医療機関・介護施設の財務状況を見ながら、引き上げの必要性について慎重に議論を行うべき」と明記した。22年度改定で財務省の肝いりで導入されたリフィル処方箋については、見込んだ医療費適正化効果が未達成であれば、「年末の診療報酬改定において、その分を差し引くことも検討すべき」として、強力に推進するスタンスを示した。

建議では、社会保障分野の歳出改革の必要性について、少子化対策の観点だけでなく、高齢化が進むなかで社会保障制度の持続可能性の観点からも必要性を指摘した。団塊世代が後期高齢者に入る2025年をメルクマールに「全世代型社会保障」実現に向けて改革が進められてきたが、依然として実現されていない部分が残されていると指摘し、改革議論の「加速」するよう求めた。

◎物価高・賃上げ対応には純資産活用を コロナ補助金などで「5%相当」の伸びと指摘

24年度には診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定が予定される。建議では、「医療・介護の給付費用は経済成長率以上に伸びており、今後さらなる高齢化が進む中、現役世代の負担能力を考えれば、持続可能な状況とは言い難い。経済成長率も見据えながら、今後、さらに給付費用自体の抑制に取り組む必要がある」と指摘した。

そのうえで、「医療・介護の費用が高齢化に伴って増加し、5000~6000億円程度の公費、7000億円前後の保険料が増加している中で、さらに仮に診療報酬・介護報酬を1%引き上げると、2500億円程度の公費、3000億円程度の保険料が増加することとなる」と説明。「少子化対策で新たな財政需要が生じる中、年末の改定に向けては、巨額のコロナ補助金もあり積み上がった資産の状況も含めて、医療機関・介護施設の財務状況を見ながら、引き上げの必要性について慎重に議論を行うべき」と主張した。

日本医師会など医療関係団体は、物価高騰や賃上げ対応の財政措置を要望。24年度改定では、「根本的な対策」を求めている。建議では、病院の経営状況について、コロナ補助金などの影響で、「20~21年度にかけて純資産が事業費用の5%相当の規模で増加している。こうしたことが続けば、多額の純資産が積み上がっており、賃金・物価高への対応においては、こうした資産を活用していくべき」と主張した。

医療機関の見える化の必要性にも言及。「経営情報データベース」の導入で経営情報の提出が原則義務化されるなかで、職種別の給与・人数が任意提出項目とされていることについて「問題である」とも指摘した。

◎リフィル処方箋 OTC類似薬など薬剤師の判断での切替「検討しなければならない」

診療報酬をめぐる具体的な項目としては、リフィル処方箋について言及。リフィル処方箋は22年度診療報酬改定で財務省の肝いりで導入された施策だ。21年末の大臣合意では、リフィル導入・活用促進による医療費効率化効果を医療費で470億円程度(改定率で▲0.1%)を見込んでいたが、日本保険薬局協会(NPhA)の調査に基づく効果試算では年間▲50億円程度(▲0.01%程度)にとどまっている。

建議では、「まずは、リフィル処方箋の普及促進に向けて周知・広報を図るべき。あわせて、積極的な取組を行う保険者を各種インセンティブ措置により評価していく必要がある」と指摘した。そのうえで、「薬剤師がリフィル処方箋への切替を処方医に提案することを評価する仕組みや、例えばOTC類似薬については、薬剤師の判断でリフィルに切り替えることを認めることなどを検討しなければならない」と強い表現で盛り込んだ。さらに、「リフィル処方箋による適正化効果が未達成であるのであれば、年末の診療報酬改定において、その分を差し引くことも検討すべき」と提案した。

また、急性期入院料に言及。これまで日本の医療提供体制は急性期、特に診療報酬点数の高い急性期一般入院料1(看護配置7対1が要件)に偏重していることも指摘されてきた。建議では、病床機能の役割分担を適切に進める観点から、「7対1といった看護配置に過度に依存した診療報酬体系から、患者の重症度、救急受入れ、手術といった“実績”をより反映した体系に転換していくべき」と提案した。また、「10対1といった看護配置を要件とする急性期入院料は廃止を検討すべき」とも主張した。

◎地域医療構想の法制化検討を 公立病院の経営改善に医薬品共同購入も一考

医療提供体制についても、社会保障制度の持続可能性の観点から「効率的・効果的なものにする必要がある」と明記した。具体的には、「①病床の役割分担(=地域医療構想)、②診療所等のかかりつけ医機能の確保・強化、③地域包括ケア(地域における医療・介護の連携)をあわせて進めていく必要がある」とした。

地域医療構想をめぐっては、医療法で都道府県知事が不足している病床機能について、病院に指示・要請できるとの規定があるが、「ほとんど発動実績はない」と指摘。進捗が遅れていることなどから、目標実現に向けて、「例えば各医療機関において地域医療構想と整合的な対応を行うよう求めるなど、もう一歩踏み込んだ法制的対応が必要」と指摘した。

公立病院の経営改善をめぐっては、「例えば、薬剤・医療材料等の共同購入、委託業務の効率化、人件費の抑制など費用面からの具体的取組を進めるべき」とした。診療所については、新規開設について、「一歩踏み込んだ規制」の必要性も指摘した。

ポストコロナに移行するなかで、コロナ対策については、病床確保料等、医療提供体制等の強化のための主な項目だけで、これまで21兆円程度にのぼる国費による国費による支援が行われてきたと説明。「従来の補正予算の規模と比較しても突出している。このようなあまりに巨額の補正予算は、コロナ禍からの脱却を受けて、確実に正常化すべき」とした。

このほか、高齢者の負担についても言及。22年10月に一定の所得以上の後期高齢者に2割負担が導入されたが、「これをさらに進め、原則2割負担とすることも今後の課題であり、前向きに検討される必要がある」と問題提起した。保有資産・金融所得の捕捉も課題とされるが、マイナンバーを活用し、これら資産を勘案することも検討すべきとしている。


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