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規制改革WG 検査データなどRWDの創薬目的での利活用 ベンダーの高額請求は独禁法上問題も

公開日時 2022/02/25 04:53
政府の規制改革推進会議は2月24日、医療・介護・感染症対策ワーキング・グループを開き、医療機関における検査データや死亡データの創薬目的での利活用について議論を行った。リアルワールドデータ(RWD)の利活用が国内で進まない一因として、電子カルテの標準化が進まないことがあげられている。標準規格での出力に際してベンダーから高額な費用を請求される、いわゆる“ベンダーロックイン”が指摘されるなかで、公正取引委員会は、民間企業であっても、「独占禁止法上問題となる恐れがある」ことを明確にした。新型コロナワクチンの開発で欧米諸国に後れを取り、日本の研究開発力低下が懸念されるなかで、RWDの利活用推進に向け、環境整備にアクセルを踏みたい考えだ。

◎創薬めぐるRWDの環境整備 検査データの標準化が機能する仕組み検討を

創薬をめぐるRWDの環境整備としては、レセプトデータを匿名化したNDBの利活用を皮切りに、医療・介護データベースの連結や、DPCデータベースの連結など、環境整備も進められている。一方で、国内では電子カルテの標準化が進んでいない。このため、RWDを利活用した臨床試験数も、日本は米国の1/10~1/20程度にとどまっているとの調査結果もあるという。会議冒頭で、牧島かれんデジタル相兼行政改革・規制改革担当相の挨拶を代読した小林文明副大臣は、「残された課題の一つとして、医療機関が保有する各種データの活用、医療情報の連結を含めた適用がある」と指摘。「検査データの標準化が現実に機能する仕組みを検討する必要がある」との考えを示した。

◎標準規格で外部出力する際に「ベンダーから高額な費用請求される」ことも

規制改革推進会議の事務局は、「創薬のためには、すでに一定程度標準化されている疾病名や薬剤情報のほか、患者の検査データを比較可能な形で製薬企業が利用することが有用」と指摘。電子カルテの標準化が進まない理由として、大病院などがカスタマイズしており、標準規格で外部出力を行う際に、ベンダーから高額な費用を請求されているとの指摘があがっているとした。

◎公取委「他ベンダーへの開示拒否や他の情報システムとの接続拒否」は取引妨害の可能性も

これに対し、公正取引委員会は「官公庁における情報システム調達に関する実態調査報告書」の概要を説明した。「合理的な理由がないにもかかわらず、他のベンダーに対して使用の開示を拒否すること、他の情報システムとの接続を拒否すること、または既存システムから新システムへのデータ移行を拒否すること」などは、独占禁止法上、「取引妨害」として、「問題となる恐れがある」とした。「事実上拒否するのと、同視し得る程度に高額なデータ移行のための費用を請求する場合」も含まれるとした。また、この考え方は、官公庁だけでなく、民間企業にも有用であるとしている。

◎死亡データとNDBの連結「22年度から議論をスタート」 厚労省

もうひとつ議論となったのが、NDB・介護データベースと死亡データとの連結解析の推進だ。

日本経済団体連合会(経団連)の藤田和也氏(アステラス製薬)は、「がんや心疾患等、延命・死亡率の減少を目的に治療介入する疾患では、治療のアウトカムの把握には、NDB・介護DBのデータだけでは不十分」と指摘。臨床試験では十分に評価できなかった、高齢者や合併症を有する患者の転帰を把握することで、効果的な医薬品の選択や副作用の軽減につながることができるとの考えを示した。

また、治療実態と死亡情報を分析することで、治療を受けていても死亡率の高い疾患を推定することができ、アンメットメディカルニーズの高い疾患の新薬開発のための基礎情報にすることができるとした。これにより、予防・先制医療の実現や、個別化医療の実現、医療費適正化への貢献も期待されると強調。「死亡情報も含めた他の保険医療分野の公的DBとの連結解析について、スケジュールを明確にして早期に実現いただきたい」と要望した。

厚生労働省も、NDBについて、他の公的データベースとの連結も含めて、EBPMや研究利用の基盤として利便性・価値向上を図る考えを表明。死亡情報との連結についても、「関係省庁と協議のうえ、2022年度に審議会等で検討を行っていく」と表明した。

ただ、死亡情報は人口動態の把握が主目的となっている。総務省は、「公的な機関が行う統計調査に対する国民の信頼を確保するため、原則として目的外での利用または提供を禁止する」と統計法で定められていると説明しており、今後の議論では、目的外使用をいかに実現するかも焦点となりそうだ。このほか、厚労省は、連結する際の共通の識別子や、死亡表が顕名情報であることからNDBの匿名性を維持するための対応などを論点としてあげている。

牧島かれんデジタル相兼行政改革・規制改革担当相の挨拶を代読した小林文明副大臣は、「死亡情報自体は、人口動態の把握のために調査されているが、統計情報の利用目的との整理を行うことで、アルツハイマー病やすい臓がん、小児がん、肝硬変などの疾患に画期的新薬が開発される未来を期待している」と述べた。
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