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JEMA・松森代表 喫緊の「パニック的な購入と在庫偏在」解消 企業在庫量や増産計画を可視化・提供へ

公開日時 2021/12/01 04:52
日本エスタブリッシュ医薬品研究協議会(JEMA)の松森浩士代表(武田テバファーマ社長兼CEO)は11月30日、東京都内で会見し、ジェネリック医薬品の供給状況改善に関する提言を公表した。松森代表は、現在の供給不安の先行きが見通せず、「パニック的な購入と在庫偏在」が起きていると指摘。喫緊の対応策として、企業側の情報開示の必要性を訴えた。その上で、武田テバとして全製品の月次別社内在庫を医師や薬剤師の求めに応じて開示していると説明。「安全在庫3か月」をベースに全製品の在庫状況や増産計画を可視化し、在庫偏在の解消に努めていると強調した。一方で、少量多品種製造からより数量(ボリューム)の多い製造への変更を各社に促す考えを示し、「国全体で製品の整理整頓をすることが急務である」と強調した。

「すべての会社がより厳格に出荷判定し、より厳格に長期安定性モニタリングを判定すればするほど正しいもの(製品)が正しく世の中に出て、正しくないものが世の中に出なくなる確率は高まる。これは患者にとって良いことだ」-。松森代表は供給不安問題の現状をこう表現した。しかし、続けて、「(医薬品の供給)ボリュームが十分に市場に満たされないことで、医療機関や患者さんに迷惑がかかることは、まだ一定期間続く。しかし、これは必要なことで、真の意味での安定供給はできない」と述べ、一連の供給不安が引き起こした問題の根深さを指摘した。

◎長年にわたりGE業界が構造的に抱えてきた問題を「整理整頓」

松森代表はまた、安定供給に対する日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)の取り組みに触れ、「まさしく最初のステップをやっていると理解している。我々はこれを援護射撃したい」と強調した。その上で、「よりスムーズに、より効率的に問題を起こさないようにするためには、長年にわたりGE業界が構造的に抱えた問題の見直しを図る必要がある」と明言。「個社がバラバラに対応していると、もっと混乱が大きくなる。ここはいったん俯瞰して見れるところが整理整頓するという意味だ。必要なものとそうでないものに仕分けする、これを業界全体でやるべきだと考えている」と述べ、協議会として提言を策定した意義を強調した。

◎「安全在庫3か月」を基準 全製品ごと月次別の企業在庫を医療関係者に開示

喫緊の課題は、供給不安に対する医療関係者や医薬品卸への対応だ。「オイルショック時のトイレットペーパーのようなパニック的な購入心理により、医療機関や卸において在庫偏在が起きている可能性がある」-。松森代表は、「どの製品がどのくらい足りないかを把握している人が誰もいない。これが一番の問題だ」と指摘。厚労省が22年度政府予算案に医薬品供給の情報提供サイトの検討事業としてに必要経費4700万円を計上したことに理解を示し、「いまのパニック的な購入と在庫偏在の状況を解消するための情報を開示して、いったん事態を鎮静化させることが大事ではないか」と強調した。その具体策としては、武田テバが行っている「企業在庫の可視化」が一考とした。同社は安全在庫3か月を基準に、全製品ごとに月次別の在庫状況を一覧表にまとめている。その内容は、同社MRが医療機関や薬局を訪問した際に、「求めに応じて開示してきた」(松森代表)という。「こうした情報を開示することで、不要な在庫偏在リスクが避けられ、市場におけるGE品の供給不安のマインドを鎮静化することも可能になる」と期待感を表明した。松森代表はまた、武田テバの企業在庫について「ホームページ上での公表も含めて今後検討していきたいと」と意欲を示した。

◎「真の安定供給の土台を固める」提言 継続供給品と販売中止可能製品に仕分け


一方で「真の安定供給の土台を固める」ための提言にも触れた。松森代表は、「少量多品種」の問題に言及。その要因として、2006年に厚労省が発出した、いわゆる「規格揃え通知」が存在していると松森代表は指摘する。この通知以降、各社の製造を集約する「共同開発」が多用され、同一製造場所なのに販売会社が違う品目が生じた。さらに、自社で製造する企業の中には非汎用規格が不採算になることも多く、製造工程だけでなく、企業の利益を圧迫するケースもみられるという。松森代表は、こうした状況を打開するためには、各社の生産数量とキャパシティー、原薬調達リスク、製剤と試験方法の堅牢性などを把握し、「継続供給する製品」と「販売中止が可能な製品」に仕分けし、「国全体で製品の整理整頓をすることが急務である」と指摘し、国によるガイダンス作成などを求めていく必要性を強調した。

◎少量多品目製造から数量の多い製造への変更 製造効率化、サプライチェーン強靭化

製品数を最適化することによる企業側のメリットとしては、安定供給する製品にリソースを配分し、生産体制を含めた供給体制の再構築のスピードアップが期待されるほか、製品の「過疎化」を回避できると指摘する。さらに、少量多品目製造から数量の多い製造への変更を図ることで、原薬のバイイングパワーの増強やボリュームディスカウントなどの製造の効率化やサプライチェーンの強靭化にも寄与するとの見方を示した。

JEMAの参加企業は、あゆみ製薬、ヴィアトリス製薬、白鳥製薬、武田テバファーマ、メディパルホールディングス、他1社となっている(11月30日現在)。このほか複数の企業・団体が参加を検討している。なお、アドバイザーには、元厚労省保険局長で現在は慶応義塾大学大学院政策メディア研究科・特任教授の唐澤剛氏、日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会事務局長の細川修平氏が務めている。

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