医療用薬17製品 効能追加などの承認取得 フォシーガにCKDを追加
公開日時 2021/08/26 04:51
医療用医薬品17製品が8月25日、効能追加などの承認を取得した。SGLT2阻害薬フォシーガ錠に慢性腎臓病(CKD)の効能が追加され、CKDの適応を有する初の製品となった。経口JAK阻害薬リンヴォック錠に12歳以上の小児を含むアトピー性皮膚炎の効能が追加されたほか、がん免疫療法薬キイトルーダ点滴静注はトリプルネガティブ乳がんにも使用できるようになった。
また、小野薬品のがん免疫療法薬オプジーボ点滴静注と、武田薬品の抗がん剤カボメティクス錠について、腎細胞がんの1次治療に対する併用療法が承認された。
承認された製品は以下の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)。薬効分類順。
▽ニトプロ持続静注液6mg、同30mg(ニトロプルシドナトリウム水和物、丸石製薬):「急性心不全(慢性心不全の急性増悪期を含む)、高血圧性緊急症」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間なし。薬効分類214。
急性心不全、高血圧性緊急症の小児用量が追加された。日本小児循環器学会と日本小児麻酔学会より医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に対し、同剤によるうっ血性心不全の治療及び高血圧性緊急症の治療の効能・効果、ならびに小児の用法・用量に関する開発要望が提出されていた。
▽ウプトラビ錠0.2mg、同錠0.4mg(セレキシパグ、日本新薬):「外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症」を効能・効果とする新効能医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類219。
今回追加された慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は国の指定難病で、肺血管の内部に器質化した血栓が詰まることにより、肺動脈へかかる圧力が上昇し、肺と心臓の血流が低下する疾患。進行すると心機能の低下により、足がむくみ、少し体を動かしただけでも息苦しいなどの症状が現れる。
治療法は、血栓を取り除く外科手術、カテーテルを用いて血管を広げる治療、肺動脈を広げる作用を持つ内服薬での薬物治療がある。国内患者数は約3800人。日本では日本新薬とヤンセンファーマが共同開発、共同販促している。
▽リクシアナ錠15mg、同OD錠15mg(エドキサバントシル酸塩水和物、第一三共):「非弁膜性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間なし。薬効分類333。
出血リスクの高い高齢の非弁膜症性心房細動(AF)患者に対し、1日1回15mgに減量して使えるようになった。
▽フォシーガ錠5mg、同錠10mg(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、アストラゼネカ):「慢性腎臓病。ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者は除く」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は4年。薬効分類396/219。
慢性腎臓病(CKD)の適応を有する初の製品となった。これまではCKDに対してACE阻害薬やARBが使用されてきた。フォシーガのCKDに対する用法・用量は、「通常、成人にはダパグリフロジンとして10mgを1日1回経口投与する」というもの。ただ、添付文書にて、臨床試験に組み入れられた患者の背景(原疾患、併用薬、腎機能等)を十分に理解した上で適応患者を選択するよう注意喚起されており、実際にはACE阻害薬やARBなどと併用して用いることになる。
CKDは腎機能が低下することで起こる進行性の疾患。国内患者数は1330万人と推定されるが、その多くは診断されていない状態にある。透析のリスク要因であるだけでなく、心不全をはじめとした心血管疾患の発症リスクを増加させるため、早期診断・治療が重要とされている。
▽リンヴォック錠7.5mg、同錠15mg(ウパダシチニブ水和物、アッヴィ):「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は残余期間(28年1月22日まで)。薬効分類399。
12歳以上の小児を含むアトピー性皮膚炎の効能が追加された。経口JAK阻害薬として、アトピー性皮膚炎の適応を持つのはオルミエント錠(バリシチニブ)に続く2剤目となる。ただ、リンヴォックは12歳以上かつ30kg以上の小児のアトピー性皮膚炎にも使えることが特徴のひとつとなる。
なお、成人のアトピー性皮膚炎では、患者の状態に応じて30mgまで増量できる。このため7月30日の薬食審医薬品第二部会では30mg錠の承認も了承されているが、現時点では30mg錠は承認されていない。
▽ブスルフェクス点滴静注用60mg(ブスルファン、大塚製薬):「同種造血幹細胞移植の前治療、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍及び神経芽細胞腫における自家造血幹細胞移植の前治療」を効能・効果とする新用量医薬品。薬効分類421。
小児の用法・用量が追加された。これまでは小児に対し、「C法」として6時間毎に1日4回、4日間投与していた。今回新たに「D法」を追加し、1日1回、4日間投与する方法を選べるようになった。
▽ダラキューロ配合皮下注(ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「全身性ALアミロイドーシス」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。
▽ベルケイド注射用3mg(ボルテゾミブ、ヤンセンファーマ):「全身性ALアミロイドーシス」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。
▽デカドロン錠0.5mg、同錠4mg(デキサメタゾン、日医工):「全身性ALアミロイドーシス」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間なし。薬効分類245。
▽注射用エンドキサン100mg、同500mg、同錠50mg(シクロホスファミド水和物、塩野義製薬):「全身性ALアミロイドーシス」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間なし。薬効分類421。
全身性ALアミロイドーシスに対し、ヒト型抗CD38モノクローナル抗体/ヒアルロン酸分解酵素配合剤・ダラキューロ、プロテアソーム阻害薬・ベルケイド、ステロイド製剤・デカドロン錠、アルキル化剤・注射用エンドキサンの計4剤を併用して使えるようになった。
アミロイドーシスはアミロイドと呼ばれるナイロンに似た線維状の異常蛋白質が全身の様々な臓器に沈着し、機能障害をおこす病気の総称のこと。複数の臓器にアミロイド蛋白が沈着する全身性アミロイドーシスのうち全身性ALアミロイドーシスは、異常形質細胞より産生されるアミロイド蛋白の沈着により多臓器障害を引き起こし、その臓器障害により生存率の低下や疾患の転帰に影響を及ぼす予後不良の疾患。
▽キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん」を効能・効果とする新効能医薬品。また、「PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2022年10月18日まで)。薬効分類429。
これまでもMSI-Highを有する固形がんに使用できたが、これは2次治療以降の固形がんを対象としたもの。今回はMSI-Highを有する結腸・直腸がんの1次治療に使えるようにするための効能追加となる。
乳がんに関しては、いわゆる「トリプルネガティブ乳がん」の効能追加となる。キイトルーダとしては初の乳がん適応。トリプルネガティブ乳がんに対して、▽キイトルーダ+ゲムシタビン+カルボプラチン点滴静注液「NK」▽キイトルーダ+アブラキサン点滴静注用▽キイトルーダ+パクリタキセル――のいずれかで使用する。
▽カルボプラチン点滴静注液50mg「NK」、同150mg「NK」、同450mg「NK」(カルボプラチン、マイラン製薬):「乳がん」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間なし。薬効分類429。
▽アブラキサン点滴静注用100mg(パクリタキセル、大鵬薬品):「乳がん」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間なし。薬効分類424。
両剤とも、キイトルーダのトリプルネガティブ乳がんの適応と併用するための一変承認。アブラキサンはE法の記載を変更。これまでの「アテゾリズマブ(遺伝子組み換え)との併用において」との記載を、「他の抗悪性腫瘍剤との併用において」に変更し、キイトルーダの乳がん適応と併用できるようにした。
▽オプジーボ点滴静注20mg、同100mg、同120mg、同240mg(ニボルマブ(遺伝子組換え)、小野薬品):「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2021年10月16日まで)。薬効分類429。
▽カボメティクス錠20mg(カボザンチニブリンゴ酸塩、武田薬品):「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2028年3月24日)。薬効分類429。
抗PD-1抗体オプジーボとキナーゼ阻害薬カボメティクスを、根治切除不能または転移性腎細胞がんの1次治療に併用して使用できるようになった。
両剤とも単剤で、根治切除不能または転移性腎細胞がんの適応は持っていた(オプジーボは2次治療、カボメティクスは1次治療)。また、オプジーボはヤーボイ点滴静注液との併用で、腎細胞がんの1次治療の適応を持っていた。小野薬品はこれまでに、オプジーボとヤーボイ併用による腎細胞がん1次治療は、IMDC(International Metastatic RCC Database Consortium)リスク分類の中高リスク患者の治療選択肢となっているが、カボメティクスとの併用は低リスクを含むと説明している。
▽イヌリード注(イヌリン、富士薬品):「糸球体ろ過量の測定による腎機能検査」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間なし。薬効分類722。
18歳以下に対して、これまでのA法は頻回の採血、採尿、本剤投与前の飲水負荷が必要で負担が大きかったが、侵襲や負担を軽減したB法も選択できるようになった。
▽フェントステープ0.5mg、同テープ1mg、同テープ2mg、同テープ4mg、同テープ6mg、同テープ8mg(フェンタニルクエン酸塩、久光製薬):「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛(ただし、他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する場合に限る)」を効能・効果とし、小児用量を追加する新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。薬効分類821。
強オピオイド鎮痛剤で初の小児用量を有する薬剤となった。久光製薬と協和キリンが共同販売している。