厚労省 後発品の共同開発「製品データを把握できなければ承認せず」 信頼性確認で共同開発契約書の提出も検討
公開日時 2021/06/04 04:52
厚生労働省は、後発品の「共同開発」を行った場合、自社開発と同様に製品データを把握できなければ、承認を与えない方向で最終調整に入った。具体的には、承認申請時の添付資料として、製品データへ実際にアクセスでき、信頼性を確認できる規定が盛り込まれている共同開発契約書の提出などを求め、厳格に確認・評価する考え。近く通知を発出し、承認審査を厳格化する。あわせて、共同開発についてインタビューフォームに記載し、医療機関に情報提供することを義務化する方向で検討を進める。先発品の有する含有量などの規格を揃える、いわゆる規格揃えの在り方を含めて、共同開発の在り方そのものの見直しにも着手する。
行政処分を受けた小林化工は申請書類に虚偽の記載を行ったことなどが明るみとなり、該当する12製品が薬価削除となった。あわせて、小林化工のデータを用いて申請したMeiji Seikaファルマ、エルメッド、第一三共エスファに対し、製造販売業者としての責務を問い、薬機法に基づく業務改善命令が出されている。
◎後発品の35%が共同開発品 2005年から一定条件満たせば同一資料で申請が可能に
複数の製造販売業者が共同で開発を行っても基本的には、それぞれが承認を取得する必要があり、規格および試験方法、安定性試験、生物学的同等製試験の資料が必要になる。ただ、後発品については規制緩和により2005年から、一定の条件を満たす場合に共同開発した各社が同一の資料で承認申請することができるようになった。後発品の申請時に必要な添付資料は、先発品に比べて圧倒的に少ないが、共同開発ではさらに一部省略ができる。結果的に市場参入のハードルが下がることから、共同開発により、同一製剤で多くの製造販売業者が承認を得る一因となっていると指摘されている。実際、共同開発品は2018年度には後発品全体の35%(3519品目)を占めている。
◎共同開発で承認申請者に「自社開発と同様の」責任問う 厳格に確認・評価
厚労省は後発品の共同開発について、「責任ある供給体制が見えなくなっている。結果的に欠品等が多く生じ、信頼性の低下につながっている」と指摘する。政府の新たな成長戦略実行計画案にも、「共同開発の場合であっても、承認審査時にデータの信頼性確保に関する確認を行う」と明記されるなど、政府も強い問題意識を示している。
具体的には、共同開発であっても自社開発と同様に承認申請資料を作成・把握する責任があることを明確化し、それが担保されているか、承認申請段階で確認する考え。承認申請時の添付資料として、製品データへ実際にアクセスでき、信頼性を確認できる規定が盛り込まれている共同開発契約書、さらには実際にどのように製品データを確認したかを説明する資料の提出を求める。承認審査で、この資料を厳格に確認・評価する考えだ。
◎安定確保への対応強化 収載5年以内の薬価削除品目あれば次回収載認めず
一連のジェネリックメーカーの不正を踏まえ、開発から承認審査、保険収載手続き、市場流通のいずれの段階においても規制を厳格化する方針。承認申請段階では新たに、承認時に都道府県が行うGMP調査の際に、製造品目数、製造量等に見合った管理体制が確保されているか確認する対応を盛り込む。
自主回収が相次ぎ、揺らいだ安定供給についても対応を強化する考えだ。現行では正当な理由がある場合を除き、少なくとも5年間は継続して製造販売することを求めており、保険収載時に厚労省が確認をしている。また、昨年7月に通知を発出し、直近2回の収載時にいずれも、供給開始の遅れや欠品などが生じた製造販売業者に対しては、次の薬価基準収載を自発的に見送る文書の提出を求めるなどの対応がとられてきた。
これに加え、収載後5年より短い期間で、薬価削除品目がある場合など短期間で供給停止した品目がある場合には次回の収載を認めないほか、供給実績が確認できない品目について薬価削除を要請するなど、対応を強化する考え。安定供給について製造販売業者に対する安定供給の法的義務付けを検討するほか、サプライチェーン上のリスクの検討・検証を行う考えも示している。
◎「GQP遵守、サプライチェーンを把握、安定供給できる企業のみが製造販売事業者として存続すべき」
「GQPを遵守でき、サプライチェーンを明確に把握し、安定供給できる企業のみが製造販売事業者として存続すべき」―。厚労省は今夏の策定を見据える医薬品産業ビジョン2021のなかで、ジェネリック業界の今後の方向性についてこう認識を示している。製造販売業者としての体制が確立できない企業は、吸収合併または受託企業(CMO)化し、製造業者になることを視野に入れるべきとの考えだ。国民からの後発品の信頼が揺らぐなかで、規制強化は健全な産業を育成する振興策とも言える。一方で、製造販売業者としての責務を果たせない企業は撤退を余儀なくされることを意味する。ジェネリック業界の再編への流れも待ったなし、だ。