卸連 消費増税改定の薬価告示で医薬品安定供給に配慮求める 新会長にメディパルHD渡辺氏
公開日時 2019/05/24 03:51
日本医薬品卸売業連合会(卸連)はきょう5月24日、10月に予定される消費増税改定をめぐり、医薬品の安定供給に支障をきたす時期の告示は控えることを厚労省医政局長に要望する。前日の23日に開かれた卸連理事会で了承された。消費増税が延期された場合には、薬価改定を行わないことも盛り込む。この日に開かれた通常総会で任期満了に伴う役員改選を行い、新会長に渡辺秀一氏(メディパルホールディングス社長)を選任した。19年度の増税を皮切りに、3年連続の薬価改定が迫る。渡辺新会長は、「(薬価改定が)今までにないスケジュールで進んでいく。医薬品を安全かつ安定的に供給するのが卸の最大の使命。医療現場が混乱しないよう、関係者と協力して、主体的に取り組む」と決意を示した。
◎3年連続薬価改定への対応を事業計画に明記
この日、報告された事業計画には、3年連続の薬価改定への取り組みを明記した。消費増税改定の焦点となっている告示時期について卸連は9月との姿勢を崩していない。事業計画では、「医薬品流通が混乱しないよう適切な対応を進めなければならない」と改めて強調した。増税改定後に行われる20年度改定についても言及。これまで薬価調査は慣例として9月に実施されていたが、増税改定でイレギュラーな10月に改定がなされるため、「(増税改定後の新薬価の)市場実勢価が反映されない」として、薬価調査の時期についても検討を求めた。
21年度以降は、薬価毎年改定が行われることになる。焦点は、その対象範囲だ。政府の経済財政諮問会議では、「市場実勢価格の推移、薬価差の状況、医薬品卸・医療機関・薬局等の経営への影響等を把握した上で、20年中にこれらを総合的に勘案して、具体的な範囲を設定する」としている。ただ、財務省主計局は4月23日の財政制度等審議会で、「21年度における薬価改定の対象範囲については、金額ベースで国民負担の軽減に十分につながるようなものとすべき」と主張している。
こうしたなかで、19年度の価格交渉の重要性を強調し、流通改善の取り組みを徹底することを盛り込んだ。具体的には18年10月に厚労省医政局経済課が発出した事務連絡「適切な仕切価・割戻し等の設定について」の理解を製薬業界側に求め、リベート内容を点検し、適切な仕切り価とするための取り組みを進める。このほか、早期妥結と単品単価契約の締結、過大な値引き交渉の是正なども進める。
◎渡辺新会長 流通改善で「一般国民の目からみてわかりやすい取引に」
渡辺会長は、就任挨拶で「国民からは期待の目と厳しい目の両方から見られている。医薬品卸が信頼され、誇りある職種になるには、考え方を業界基準ではなく、国民から見て誰もが理解できるものに変えていかなければならない」と訴えた。流通改善については、「一般国民から見て分かりやすい取引に変えていくことに尽きる」との考えを表明。現状は「道半ば」との見解を示し、国民にとってわかりやすい商習慣へと転換する決意を滲ませた。
▽流通改善ガイドライン(GL)のさらなる遵守▽医療保険制度、薬価制度の下での国民から信頼の得られる卸の果たすべき役割を全うすること、▽安定供給機能の向上とコンプライアンスを踏まえた盤石の流通体制▽国際化協調―の4点に注力することも表明した。